2021年6月1日火曜日

中東和平とエネルギー

 ゼロヘッジでおもしろい記事をみつけたので抄訳しておいた。わかりやすくするために多少つけ足したりしている。

https://www.zerohedge.com/geopolitical/critical-shift-war-oil

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うぬぼれ屋ばかりが集まるダボス会議りだが、ビジネス界の方針をまとめてくれるという利点がある。そのダボスの圧力でバイデンはノードストリーム2でもJCPOAでも譲歩することになるだろう。EUは安価なエネルギーを求めている。JCPOAはそのためのものだから、イランは石油市場に復帰し、EUはイランの石油/ガスプロジェクトに投資を再開することになる。

トランプがイランとベネズエラの石油を市場から排除したので、ロシアが原油の価格決定権を握るようになった。イランが石油市場に復帰すればロシアをオフセットできるとEUは考える。近い将来、イランからトルコ経由でEUにガスパイプラインが延びるとともに、一帯一路構想どおり、北南輸送回廊へのアクセスが改善される。ロシアも中国も反対するわけがない。

ガザ攻撃が完全に裏目に出て、ベンジャミン・ネタニヤフがもはやイスラエルを率いることはない。世代交代とともにアメリカのイスラエル政策が急速に変化する。ノードストリーム2は中東和平を推進する。大イスラエル圏構想は支持層を失うことになる。

イランの選挙で穏健派が勝たないとしても、いずれにせよダボスはエネルギーのためなら手段を選ばないだろうから、ネタニヤフが復活することはありえない。

トランプのイラン攻撃でイランの世論が一致団結した。ソレイマニ将軍暗殺は間違いであるだけでなく、歴史のターニングポイントであり、ロシア/中国/イラン間の同盟をつくりあげた。サウジはさっそくバグダッドでイランとの和平交渉を始めた。シーア三日月地帯が形成されたらサウジは今のままではありえないからだ。ネタニヤフが去り、シリアはアラブ連盟に復帰。The Saker が要領よく 2 つのリストにまとめてくれている。

イスラエルの目標:

1. アラブ国家を政治構造・軍隊・治安機関とともに崩壊させる。

2. ゴラン高原とシリアの治安を悪化させ、イスラエルがセキュリティゾーンを作る。

3. ヒズボラとタクフィリを対立させレバノンで内戦を引き起こす。

4. タクフィリとヒズボラが消耗戦で両者死亡し、イスラエルがレバノンにセキュリティゾーンを作る。

5. イラン-イラク-シリア-レバノンのシーア派枢軸をつくらせない。

6. シリアを民族的・宗教的境界に沿って分割する。

7. クルディスタンを作ってトルコ、シリア、イラク、イランに対応させる。

8. イスラエルが中東のエネルギーブローカーになる。

9. イランを孤立させ、最終的に広域連合軍でイランを攻撃する。

10. シーア派権力をすべて排除する。


結果:

1. シリア国家は生き残り、軍隊と治安部隊は強くなる。

2. イランとヒズボラの影響力が広がっている。イスラエルはパニック。

3. レバノンは堅実に推移。ヒズボラも同様。

4. シリアは統一されたままで、クルディスタンはまだない。


こうして見ると、イスラエルとアメリカは完全なアホにしかみえない。

アメリカ軍は中東で兵站問題を抱えているので自由に動けない。唯一の不安定要因はトルコのエルドアン。ネオ・オスマン主義の野望を放棄してアメリカに兵站を供給するかもしれない。

ダボスはイランを石油市場に復帰させてロシアの影響力を相殺したいと考えている。ロシアの経済力がエネルギー依存であり、エネルギーを相対化すれば東方の脅威がなくなるとEUは信じている。しかし石油価格が下落しても大丈夫なようにロシアは、食料と原材料生産を自給自足で行うようになっている。ロシア経済はエネルギー依存から脱却するだろう。

アメリカの石油政策も分岐点にきている。トランプは原油価格を高値誘導したいのでイスラエルにより中東を不安定化させた。いっぽうEUはロシアの天然ガスをノードストリーム2経由で、そしてイランから原油を買いたい。そして中東は和平交渉に向けて進んでいる。

結論として、現時点で原油価格はピークに達した可能性が高い。イランの原油生産が今後2年間で最大化し、米国の原油生産が減少。米国の原油価格が上昇する一方で、世界の供給量が増加。ブレント/WTIのスプレッドは崩壊。

私がイスラエルのベネットなら、就任後まっさきに電話をかけるのはプーチン以外の誰でもない。

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