トルコ、スウェーデンのNATO加盟を容認 その背景と見返りは

https://sputniknews.jp/20230711/nato-16507309.html

2023年7月11日, 15:36 (更新: 2023年7月11日, 22:18)

スウェーデンの加盟をめぐり、正式承認を渋ってきたトルコが批准手続きを容認した。スウェーデンのテロリスト支援を口実に批准を先延ばしにしてきたトルコが態度を一変させた背景には何があるのか、承認の見返りに何を得ようとしているのか。

10日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、11日から始まるNATO首脳サミットを前にリトアニアのビリニュスでスウェーデンのウルフ・クリスターソン首相と会談した。両首脳の会談後、ストルテンベルグ事務総長は、エルドアン大統領が批准手続きを進めるようトルコ議会に覚書を送ることで合意したと発表した。

「テロとの闘いや武器禁輸の解除を含む以前に合意した事案の履行をいかに実現するかについて、共通の理解を得ることができた。」

スウェーデンとフィンランドは昨年5月、NATO加盟を申請。エルドアン大統領は、2国がトルコの反政府テロ組織を支援しているなどとして加盟に待ったをかけた。新たなNATO加盟には既存の全加盟国の承認が必要である。

昨年6月には北欧2国が反政府テロ組織を支援しないことを引き換えに、トルコが加盟を承認することで大筋合意した。トルコはフィンランドの加盟を先に批准。一方でスウェーデンについては、トルコがテロリストとみなしている活動家らの身柄引き渡しなどの懸案事項をめぐり、協議が続けられていた。

EU加盟という見返り

今回の合意でトルコが得た見返りは大きい。

スウェーデンは、欧州連合（EU）加盟国として、トルコのEU加盟を促進する。ストルテンベルグ事務総長は「スウェーデンのNATO加盟とトルコのEU加盟に相関性はない」としているが、事実上の交換条件である。

シリア内戦に絡むトルコへの武器禁輸措置の緩和や、EU圏へのビザの自由化に関する西側社会の支持も獲得した。トルコのオンラインポータル Haberler.com は次のように伝えている。

「トルコ政府高官は、この会談でトルコがEU加盟促進、制裁解除、ビザの自由化に関する全面的な支持を得た。」

決定権はトルコに

トルコ国内でも一部で困惑の声が上がる。トルコ紙アイディンリクは「政府は西側の懇願に屈した」と評している。

同紙によると、エルドアン大統領は会談のわずか3日前、「テロリストが街を徘徊している国をどうやって信じることができようか。テロと戦わない者たちが、どうやってNATOの敵と戦えるというのか。」とスウェーデンの加盟承認に否定的な発言をしている。今回の態度急変に一部野党からは、「屈辱的決定だ。西側の脅しに屈した。」との声もあがっている。

スウェーデンの加盟をいつまでに批准するか、具体的な期限については言及されていない。1週間後か、1ヶ月後か、はたまた1年後か、決定権は依然トルコ側にある。スウェーデン側にさらに揺さぶりをかけてより大きな見返りを引き出すのか、批准手続きを実行してNATO諸国との協調路線を歩むのか。エルドアン大統領次第だ。