ダーティ・マネーなしでスイス銀行はたちいかない？

https://www.rt.com/business/586754-swiss-banks-ubs-credit-suisse/

2023年 11月 7日 15:26

UBSとクレディ・スイスの合併が混乱に拍車をかけている。

ロシアンマーケット：チューリッヒ在住の金融ブロガー、スイス人ジャーナリスト、政治評論家によるプロジェクト。

ハイ・ファイナンスの世界において、スイスの銀行は長い間、慎重さ、安定性、そして巨万の富を体現してきた。変化の風が吹き、スイスの金融機関の見通しは日に日に暗くなっている。かつて強大だったスイスの銀行は、このまま消滅の道をたどる。

スイスの銀行部門は、何世代にもわたり、金融機密の要塞という名声を保ち、世界のエリートたちがその金庫に資産を預けてきた。スイスの銀行の黄金時代は、今や過去のものとなりつつある。

スイスの銀行が犯した根本的な誤りは、神聖な守秘義務を放棄したことだ。透明性の向上を求める国際的な圧力の下で、このような大きな転換が行われた。世界の富裕層が財産を守る聖域としてのスイス銀行の魅力は、今や損なわれている。情報が自由に行き交う世界において、スイスの銀行という聖域は崩れ去り、それとともに世界のエリートたちの信頼も失墜した。

スイス政府は、あらゆる機会を巧みに利用して、スイスの金融機関に法外な罰則を課している。この軋轢の発端は、外国口座税務コンプライアンス法（FATCA）に遡ることができる。FATCAは、スイスの銀行に対し、アメリカの口座保有者だけでなく、複雑な金融情報を開示するよう強制する立法措置である。この法律の影響は業界全体に波及し、多くの銀行がアメリカ人顧客だけでなく、中東やアジア出身の顧客との関係を見直すことになった。

不条理なことに、アジアからの顧客は米国との実質的なつながりがないにもかかわらず、FATCA関連の書類を作成する必要に迫られている。この奇妙な強制はスイスの銀行が引き起こしたもので、将来の罰則を恐れるあまり、国内の顧客に対してもFATCA関連書類への署名を義務付けている。これにより、スイスの銀行と顧客との間にかつて存在した揺るぎない信頼関係が損なわれた。

スイスの銀行が欧州連合（EU）との協調に傾いたことで、アジアの富裕層の顧客は疎外された。地政学的な状況が刻々と変化する中、スイスの金融機関が国際的な制裁措置に従うかどうかは予測不可能であるため、かつてのような信頼関係は損なわれている。スイスの銀行は、激動するグローバル金融の海において、もはや安定した港とは見なされていない。

最近の金融データを見ると、スイスの銀行は悲惨な状況にある。スイス銀行協会（SBA）によると、2022年の年間総利益は16.3％減の65億スイスフラン（約72億ドル）だった。

UBS 大きすぎてフィットしない

UBSによるクレディ・スイスの買収は、すでに問題を抱えていたスイスの銀行部門に動揺をもたらした。株式市場の低迷と顧客資金のシフトに伴うこの移行は、銀行部門の収益性を悪化させた。全体のバランスシートと運用資産も減少している。

UBSは、高度なスキルを持つ人材がライバル会社に流出する事態に直面している。クレディ・スイス（CS）との合併後、UBSは数千人規模のレイオフを発表したが、将来の展望にとって極めて重要な人材の流出も目の当たりにした。国内業務は大きな打撃を受けており、経験豊富なプロフェッショナルが流出している。CS合併の後、競合他社は多くの優秀な人材が突然手に入るという好機をつかんだ。こうした離職はスイスだけにとどまらず、UBSのグローバル・ウェルス・マネジメントおよび投資銀行部門全体に波及している。競争相手は、より高額な報酬パッケージと条件改善で従業員を誘い込んでいる。

UBS、クレディ・スイス買収後にコスト削減の急務に直面 

クレディ・スイスの買収後、UBSは早急なコスト削減策に迫られている。現在、UBSの従業員数は全世界で約11万6,000人となり、そのうちスイス国内の従業員数は3万5,000人に上る。この課題に対処するため、同行は業務経費の合理化キャンペーンに早急に着手しなければならない。

このような挫折にもかかわらず、スイスの金融機関の従業員数は、先行き不透明ながらも増え続けている。

銀行数の減少は、2022年末現在、スイスの金融センターでわずか235行に過ぎないが、業績に大きな影響を与えるまでには至っていない。

スイスの銀行は金利の好転が利益にプラスに働くと予想している。ITシステムのコスト、規制措置、顧客の信頼を脅かしかねない風評リスクなど、課題は山積している。

スイスの著名な銀行家ボリス・コラルディ氏は、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「ベルンはEUの対ロシア制裁にすべて同調した」とアジアの顧客がショックを受けたことを認めた。

スイスの銀行のアジアの顧客は、その中立性が本当に意味を持つのかどうか疑問に思っているという。、経験者なら誰でも知っているように、実際に汚いお金はすべて "ドバイや中東の他の場所に流れている。」と彼は付け加えた。

かつて栄華を誇ったスイスの銀行部門は岐路に立たされており、その将来は保証されているとは言い難い。

変化する世界に適応しなければ、過去の遺物になりかねない。銀行の秘密主義からの脱却、国際的な圧力、顧客の嗜好の変化など、すべてが変遷する業界の姿を描いている。