2023年6月29日木曜日

英国防相、ミサイル「ストームシャドウ」の有効性を豪語 実際は?

https://sputniknews.jp/20230628/16390439.html

2023年6月28日, 19:04 (更新: 2023年6月28日, 22:46)

英国のベン・ウォーレス国防相は26日、ウクライナに供与した長距離ミサイル「ストームシャドウ」が「戦場に重要な影響を与えている」と表明した。だが、軍事専門ポータル「Military Russia」創設者の軍事専門家、ドミトリー・コルネフ氏がスプートニクに語ったところによると、ウォーレス国防相はいささか状況を誇張しているようだ。

ストームシャドウとは

英政府は5月、ウクライナの反転攻勢を前にストームシャドウの供与を発表した。

ストームシャドウは英国とフランスが共同開発したステルス巡航ミサイルシステムで、射程は250キロメートル以上。重量は450キログラムの通常弾頭を含む計1300キログラムとなっている。この「奇跡の兵器」の1発あたりの値段は319万ドル(約4億6000万円)となっている。現在、製造された総数は3000発を超える。

ウクライナ軍でストームシャドウを運用しているのは、これまでに撮影された映像などから戦闘機「Su-24M」だとみられている。

ウクライナでのストームシャドウの目的と役割

ウォーレス国防相は5月、長距離ミサイル供与について、ウクライナの「自衛能力を高める」と表明。一方で、ここでの問題はストームシャドウがウクライナ軍によるロシア領奥地への攻撃に使われるかどうかだった。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は今月、ウクライナ指導部は西側諸国から供与されたストームシャドウや多連装ロケット砲「HIMARS」などを使い、クリミア半島を含むロシア領を攻撃する計画を立てていると表明した。

実際に声明の2日後、ウクライナ軍はヘルソン州とクリミア半島の境界にある橋をミサイル攻撃し、橋の舗装が損傷している。この際に見つかったミサイルの残骸にあった刻印から、攻撃はストームシャドウによるものだったと考えられている。

コルネフ氏はストームシャドウの有効性に関するウォーレス国防相の発言は、クリミア半島で攻撃を受けた橋のことを念頭にしていると指摘。橋には複数のミサイルが発射され、そのうち1つが着弾したという見方を示している。

「確かにミサイルの能力を示す見事なイリュージョンだ。だが、これが物流網に与えたダメージはいかほどだろうか。第一に攻撃を受けた橋はクリミア半島と本土をつなぐ動脈の1つに過ぎない。第二に、損傷は受けたものの橋自体は残っている。この例だけではない。ストームシャドウはその他たくさんの場所で使われているが、大きな役割は果たせていない」

また、コルネフ氏は、ストームシャドウがロシア軍によってよく迎撃されていることにも言及した。さらに露国防省によると、ウクライナ軍の橋の攻撃の後、ロシア軍はフメリニツキー州にあるストームシャドウの保管庫を破壊している。

英国が供与したミサイルが紛争の「突破口」とならなかったことを示す一番の証拠は、ストームシャドウが導入されてから行われたウクライナ軍の反転攻勢そのものにあると、コルネフ氏は続ける。

「ウクライナ軍が反転攻勢開始を宣言したとき、事前に一連のミサイル爆撃の試みが行われた。ストームシャドウも使われたが、結果は出ていない。つまり、ストームシャドウは期待していたほど有効性がないか、使用に関する体制に問題がある。もしくはウクライナ軍の反転攻勢に関する全ての問題が現在に至るまで空転していることから、重要な成果を出せていないということになる。」

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「高価で、複雑で、扱いにくい」 米製兵器はウクライナの戦場で役に立たない

2023年6月28日, 22:00 (更新: 2023年6月28日, 22:49)

ウクライナの戦場の特性は、米製軍事装備を使用するのに適していない。米誌「ナショナル・インタレスト」が同誌論説委員を務めるパトリック・ドレナン氏のこうした見解を紹介している。ドレナン氏は、米製兵器はそのテクノロジーの先進性にも関わらず、ウクライナの戦場では「最善の選択肢」とならないか、価格が過度に法外であるか、あるいはその両方の問題がつきまとうと指摘している。

ウクライナ軍にとって「純然たる地獄」の米兵器

ドレナン氏は例として、歩兵を輸送するための装甲車「ストライカー」を挙げている。これは肝心な時にウクライナ兵にとって「死のトラップ」となりうる。ドレナン氏はストライカーの欠点を、これまでの使用実績をもとに次のように説明している。

「装甲はとても非効率で重く、走行中にタイヤからはね飛んでくる泥がエンジンに入り、幾多のメンテナンス上の問題を引き起こす。車内のコンピュータコマンドディスプレイは常に動くとは限らない。さらに、戦闘服を着た兵士でも、車体が横転した時に死亡することがあった。なぜなら、ベルトがあっていないからだ。さらに車体底部の装甲は薄い」

また、ストライカーの扱いは複雑で、メンテナンスにも多額の費用が掛かると指摘した。

さらに、ドレナン氏は「戦場での実績」がある戦車「エイブラムス」にも言及している。エイブラムスはこの秋に供与される予定である。だが、前線では一度壊れたら修理することはできない。ドレナン氏は、このこと自体が「純然たる地獄」だと強調する。

例えばエイブラムスの最新の改良型は、ジェット燃料で動くよう最適化されていて、前線だぐに燃料を補給することはできない。また、敵の視認などに必要不可欠な光学系が損傷した場合、修理のためには部品をまるごと取り外し、後方の拠点に送らなくてはならない。

さらに、エイブラムスの製造には1両あたり1000万ドル(約14億4000万円)のコストがかかる。一方、独製の「レオパルト2」は600万ドル(約8億6000万円)で、2倍近くの差がある。さらにレオパルトはエイブラムスより汚れが飛び散りにくく、重量も軽い。

お高い快楽としての航空部隊

米国は始め、戦場での実績もあるジェット戦闘機「F-16」のウクライナへの供与に消極的だった。F-16はさまざまなタイプの空対地ミサイルのほか、徘徊弾薬(特攻型ドローン)を運搬、使用できる。だが、ドレナン氏はウクライナは「いい選択」をしたとはいえないと指摘する。

スウェーデン政府はこれまでに、自国で開発した戦闘機「サーブ 39 グリペン」の供与をウクライナに提案している。この戦闘機は短い滑走路でも着陸ができるため、ウクライナのインフラ状況に適しているほか、価格も比較的安価だ。飛行1時間あたりのコストはグリペンが7800ドル(67万円)なのに対し、F-16は1万2000ドル(173万円)である。

また、現代の多連装ロケット砲の前には、有人航空機だけで制空権をとるのは困難だとも述べている。

指摘はこれまでも

西側諸国による兵器供与が始まって以降、多くの専門家はウクライナ軍が運用する上でたくさんの問題が起こるとの懸念を表明していた。さらに、「西側の敵」に対するロシア軍の装備の有効性を指摘する専門家もいる。

元英空軍航空副司令官で軍事アナリストのショーン・ベル氏は「ロシア空軍であれば、大した数でもない旧弊なF-16戦闘機など破壊できるだろう」と述べている。

また、ストライカーはイラクやアフガニスタンの硬い地面の上での走行を念頭に設計されているため、ウクライナの比較的柔らかい国土地帯での展開には向いていない。さらに、サイドポジションから105ミリ砲を撃つと、反動で車両が横転してしまうという重大な欠点もある。

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