2023年7月19日水曜日

台湾有事に際し、日本は参戦不可避?

https://sputniknews.jp/20230718/16563326.html

2023年7月18日, 15:53

米国は中国が台湾侵攻を行った場合のいくつかのシナリオを検討している。ここで、米国が中国にうまく対処するためには豪州と日本という同盟国の支援が必要不可欠である。日本政府は米国が必要とする支援を行う用意はあるものの、紛争への直接的な参加についての議論は避けている。

米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書には、日本が参戦した場合の19のシナリオが明記されている。台湾有事に際し、米国は間違いなく在日米軍基地を使用することとなるが、これは日本全体の安全に脅威を及ぼすこととなる。そこで、シミュレーションのほとんどでは、もし中国が日本国内にある米軍基地を攻撃した場合には、日本が軍事行動に参加することが想定されている。

米政府は「一つの中国」の原則を支持しているが、これまでにバイデン大統領は、もし中国が台湾を攻撃を行った場合、米国はこれに介入すると繰り返し警告してきた。日本が台湾を守ろうとすることは当然のことであるが、昨年、岸田首相は防衛のみを行うとする日本の戦略を今後変更していくとし、年間防衛費の増額についても明らかにした。

ウォール・ストリート・ジャーナルのデータによれば、米国と日本の間では、台湾有事における米軍に対する日本の支援に関する協議が続いているという。ただし、今の時点では、補給ルートやミサイルの設置場所、難民の避難が議題となっているようだ。一方、米国はこの問題について、日本から「明確な答え」を求めている。

軍事アナリストのヴィクトル・リトフキン氏は、挑発行為がなければ、中国の台湾侵攻の可能性は低いと見ており、それにはいくつもの理由があると指摘する。

「中国には台湾を侵攻する必要がない。中国は血を流すことなく、香港とマカオを取り戻した。台湾についても同じ手法を望んでいる。しかも台湾は、中国本土にとって、黄金の卵をもたらす鶏だ。台湾には数えきれないほどのビジネスプロジェクトがあり、貿易関係があり、高品質の半導体の製造が行われている。中国がそのようなインフラを破壊する意味がどこにあるのか。」

「台湾有事に対する挑発を行っているのは、中国との競争を喉に刺さった骨のように感じている米国だ。そして米国はそこに豪州、韓国、日本、さらにはインドを引き込んでいる。日本は米国に大きく依存している。国内に米国の軍事基地があり、紛争が起これば、間違いなく、それが使用される。日本は中国の核兵器に脅威を感じており、言葉では米国を支持しつつ、中国との対立を避けようとしている。日本が紛争に巻き込まれるリスクはあるが、軍事紛争に参加するすべての国にとって、その犠牲は計り知れないほど大きい。」

ヴィクトル・リトフキン 軍事アナリスト

一方、これについて、露高等経済学院・東洋学スクールのアンドレイ・フェシュン准教授は、台湾有事が起こる可能性はそこまで大きくはないが、完全に否定できるものではないと述べている。

「米国は軍事紛争を防ぐべく努力している。ウクライナ支援で多大な費用が嵩んでいるからだ。米国は、2つの戦線で戦うほどの力を持っていない。中国は、米国が今、戦争を望んでいない立場を利用し、台湾が早晩、中国の一部になるとの世論を形成しようとしている。とはいえ、絶対に紛争は起こらないと断言することはできない。」

「もしそうなった場合、米国は何より、日本にある軍事基地を必要とする。とりわけ、在日米軍基地は治外法権区域であり、日本の法の管轄下にない。沖縄だけでも、3〜5万人の米軍海兵隊員がおり、それが戦闘区域に配置される。日本は輸送における支援を行い、船や軍用輸送機を提供する。これらは中国のミサイルの標的となる。日本人がこれを望んでいるのかどうかということについては誰も訊いてくれない。紛争が起こってしまえば、議論の余地などない。日本は中国との軍事衝突は避けたい。両国の間には中国の艦船が日本領海に侵犯したりせず、中国からの脅威が増強されなかったとしても、今後何年も続くであろう領土問題が存在する。」

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「シャングリラ会合」は多くの問題における意見の相違を明らかにした

2023年6月7日, 15:15 (更新: 2023年6月7日, 15:19)

6月2日から4日にかけてシンガポールで開かれた第20回アジア安全保障会議「シャングリラ会合」には、40カ国以上の国防大臣、政府高官、ビジネス界の代表者、学者など、500人が参加した。この会議の目的はアジア太平洋地域の安全と安定のための信頼と協力の強化である。またこの会議は参加国の国防大臣の間での意見交換の場である。開催者の発表によれば、今年の会議では、121の二者会談が行われた。

3年ぶりとなる日韓の防衛相会談が行われたほか、日中防衛相会談も実施された。日本の浜田靖一防衛大臣と中国の李尚福・国務委員兼国防相による会談は、李氏が今年3月に国防相に任命されて以降、初めての会談となった。

会談で両大臣は互いを非難した。浜田大臣は日本周辺で実施されている中露の軍事演習に懸念を示し、台湾海峡における平和と安定の維持を支持すると発言。李大臣は中国はロシアとの合同軍事演習への参加を継続するとし、アジア太平洋地域の国々に対し、台湾をめぐるすべての問題は中国の内政だと言明した。双方は、新型コロナウイルスによるパンデミックにより中断されていた防衛当局間の対話の再開について意見を交わしたほか、5月に運用が開始された日中防衛当局間を直接結ぶホットライン(専用回線)を適切に運用することで合意した。また今後も両国で対話や交流を推進していくことで一致した。

会議の参加者らによれば、アジア太平洋地域またその他地域の安全にとっての潜在的な脅威は、何より、中国が突然、力による現状変更を試みた場合の台湾をめぐる軍事紛争、そして長期化する米中の対立である。

会議では米国のロイド・オースティン国防長官が、中国指導部に対し、インド太平洋地域の安全と安定の保証を目的とした二国間協議を再開するよう呼びかけた。ロイド長官によれば、他でもない米中間の協議こそが地域の平和と安全の維持に向けた道にある防御柵だからだ。そしてこれによって、危機的状況あるいは紛争に発展するような対立や意見の食い違いを回避することができる。

一方の中国は、他でもない米国の行動がインド太平洋地域の安全に対する脅威となっているとの考えを示している。これより前、中国は米国軍との交流や協力を停止しており、「シャングリラダイアログ」で李国防大臣がロイド・オースティン国防長官との会談を拒絶したことは大きな話題となった。

一方、米国、日本、豪州、フィリピンは今回の会議で、インド太平洋地域における防衛分野における協力の強化について合意した。

豪州は、長期にわたって、紛争とは一線を画し、米国とのパートナー関係に大きく依存してきたが、現在は日本、韓国、インド、フィリピンなどとより緊密な関係を維持しようとしている。豪州にとって、これは防衛分野へのより大きな投資と軍事抑止力を維持を意味する。

豪州、米国、インド、日本は日米豪印戦略的同盟クアッドを立ち上げたが、最近、この同盟にはフランスや英国も関心を示している。中国はクアッドを中国の政府に反対するための手段であると考えている。

会議の参加者らは、インド太平洋地域を不安定化している2つ目の理由として、国連の決議案に違反しながら、継続されている北朝鮮の核問題を挙げた。北朝鮮が核開発を中断し、ミサイルの発射を止める兆候がまったく見られないことから、米国、日本、韓国は今年、北朝鮮が発射するミサイル情報をリアルタイムで共有システムを創設することで合意した。

脅威となっている3つ目のファクターとして挙げられたのがロシア・ウクライナ紛争である。会議では、インドネシアのプラボヴォ・スビアント国防相が、紛争の停戦案を披露した。プラボヴォ・スビアント国防相は、前回の「シャングリラダイアログ」ではインド太平洋地域の問題に焦点が当てられたが、今はエネルギー資源や食物の価格が高騰するなど、ウクライナ情勢が世界中の人々に影響を及ぼしていると指摘した。

インドネシアが示した停戦案は、双方が現在の位置で即時停戦し、戦線からそれぞれ15キロ圏内を非武装地帯とするもので、国連軍を非武装地帯に派遣し、またすべての紛争地帯で住民投票を行うという。この停戦案について、プラボヴォ・スビアント国防相は、南北朝鮮の非武装地帯の原則を基にしたと明かした。

大臣は、「もっとも朝鮮半島における紛争は現在も完全かつ最終的には解決されていない。しかし、少なくともすでにほぼ50年にわたり、一定の平和が保たれており、大量破壊や罪のない一般市民を犠牲にするよりははるかによい。」と述べた。

中国の停戦案も、インドネシアの停戦案も、ウクライナや欧米を納得させるものではない。米国とその同盟国は、ロシアの敗北を期待し、ウクライナへの兵器供与を強化する意向である。

シンガポールでのアジア安全保障会議を総括し、高等経済学院世界経済・国際政治学部のアンドレイ・スズダリツェフ准教授は次のように述べている。

「この会議は、平和と安全の維持という見地から有益だ。真実は、軍事紛争ではなく、互いに意見を交わし、相対する考えがぶつかり合うことで生まれる。この会議でも台湾問題は、ロシア・ウクライナ紛争を背景に、このような展開をさせないという形でとらえられている。日本が北朝鮮のミサイルを恐れていることは承知している。北朝鮮が直接、日本に対する脅威となっているわけではないものの、彼らは安全ではないと感じている。会議シャングリラダイアログはいかなる共通の決定を下さず、そして下すことができなくても、参加者たちは例外なく、平和への願望を示し、自らの解決策を提案している。緊張を緩和するためには、すべての国との対話が必要だ。隣国に脅威を与えたり、ヒステリックを起こすのではなく、協議を行い、信頼関係を醸成することが大切だ。」

「わたし自身、極東出身で、アジア太平洋地域ではすべてが隣り合っていることを知っている。台湾をめぐって軍事紛争が勃発したり、北朝鮮のミサイルが偶発的に日本に落下すれば、火花が大きな火災を引き起こし、世界全体にとっての悲劇となる可能性がある。」

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極超音速兵器をめぐる開発競争に日本を引き込む米国

2023年6月2日, 16:15 (更新: 2023年6月5日, 20:59)

日本の浜田靖一防衛大臣は、東京で米国のロイド・オースティン国防長官と会談を実施した。日本と米国が共同で極超音速兵器迎撃システムを共同開発する可能性について検討することが明らかになった。米国はどのような目的で、こうした兵器の開発に日本を引き込んでいるのか。そしてなぜ、極超音速兵器の迎撃という課題が今、米国にとって重要なものになっているのか、「スプートニク」が取材した。

どのミサイルも命中せず

軍事問題の専門家、ウラジーミル・エフセーエフ氏は、米国は自国の兵器がウクライナで「屈辱的な大敗」を喫しているため、この課題の遂行を急いでいると指摘する。

「ロシアはキエフ近郊で、米国のミサイル迎撃システム、パトリオットを破壊した。パトリオットには複数の発射装置があるが、ロシアの極超音速空対地ミサイル、キンジャールの攻撃に対し、効果的に対抗することができなかった。パトリオットは、一つでもロシアのキンジャールに当てようと、一気に32発のフガス破片榴弾を斉射したが、失敗に終わった。結果的に2つの発射装置が破壊され、2つは損傷を受け、レーダー装置は機能しなくなった。戦況を立て直し、状況を改善しようと、オデッサ近郊からキエフに新たなパトリオットが緊急派遣された。のちに行われた攻撃でも、発射装置が損傷を受けた。」

「米国はロシアのキンジャールのような極超音速兵器に対抗できる効果的な手段を必死で模索している。ロシアはすでに極超音速兵器を複数持っている。キンジャールは空対地ミサイル(最大速度マッハ10)、そしてもう一つのアヴァンガルドは長射程の戦略兵器(最大速度マッハ20)だ。米国はロシアの兵器と同様のものを開発しているが、うまくいかない。そこで、極超音速兵器の迎撃手段を模索するために日本の協力が必要だ。」

日本が協力を行ったとしても、米国が短期間で成功を収めることは困難である。ロシアも同じ課題を積極的に推し進めているからである。

迎撃ミサイル:速さに追いつけても、機動性がなければうまくいかない

問題の一つは、負荷が限定されている点である。エフセーエフ氏によれば、つまり、ミサイルの機動時に負荷がかかることだという。

「もしミサイルが高速で大きく機動すれば(たとえば曲がるなど)、負荷がかかる。そうすると少しずつ破損し、落下する可能性がある。日本は現在、機動時の負荷をより安定したものにできるミサイルの開発を進めている。弾道ミサイルが定められた弾道軌道に沿って飛翔すれば、かなりの機動性がある。極超音速兵器を迎撃するには、同様の性能を持つ迎撃ミサイルが必要となり、それをうまく機動させることが求められる。極超音速の目標物を高速度で迎撃するミサイルとその機動性を操るというのは技術的に非常に難しい。米国と日本がこれを早期に開発できる可能性は少ない。こうした性能を持つミサイルの開発には何年にもわたる研究と、実験が必要だ。」

ちなみに、米国は極超音速兵器そのものも開発できずに、これに効果的に対抗しようとしている。

一歩先をいく中国

一方、中国はすでに極超音速兵器の開発でかなりの成果を上げているとエフセーエフ氏は指摘する。

「日本は極超音速兵器迎撃システムの開発に大きな関心を持っている。それは中国の極超音速兵器を迎撃することへの関心であり、日本の考えは米国と一致している。極超音速ミサイルは超高速で飛翔するが、速度があることで、射程はかなり減少する。」

「もし極超音速ミサイル攻撃が行われた場合、日本がまずその対象となることを認識している。日本国内の米軍基地もその範囲に含まれる。だから、米国と日本は現在、ウクライナ問題と同じくらい、中国の極超音速兵器との戦いについて懸念している。」

米国の最新兵器が絶対的だというイメージ

エフセーエフ氏はさらに、パトリオットがウクライナで破壊されたことで、米国の兵器に対するイメージが悪くなったと述べている。

「米国の最新兵器に対する深刻な不信が生じている。最初に撃墜されたのが対戦車ミサイル、ジャベリンだ。米国が豪語していたほどの効果はないことが判明した。ロシアはわずか半年で、米国の高機動ロケット砲システム、ハイマースに対処することができるようになった。このハイマースは最高の兵器だとされ、ウクライナも大きな期待をかけていた。しかし、ハイマースには電子戦の方法で対処できることが判明した。ハイマースのミサイルは5キロずれると効果が少なくなるということも事実として明らかになった。

5月に入ってからはパトリオットの評判も下がっている。パトリオットは2019年、サウジアラビアの石油インフラへの迎撃に失敗した。しかし当時、米国はその事実を隠蔽することができた。ウクライナでロシアのキンジャールを相手に負けを喫したことを隠すことはもはやできない。米国はパトリオットは損傷はわずかなもので、すぐに復活したかのように見せかけようとしている。いずれにせよ、米国の兵器に対する信用は明らかに失墜した。最新兵器に対する信用すらなくなりつつある。当然、米国が兵器を売却している国々は購入する意味があるのかどうか考え直す。」

これは中東だけではなく、欧州の同盟国にも言える。ポーランドやリトアニアは、ハイマースの能力の高さに期待し、数百基の調達を予定している。これらの国々は、今やパトリオットもハイマースも、完全な兵器だという確信は持てなくなる。

エフセーエフ氏は、米国の兵器への信頼失墜により、今後、販売市場が縮小されると予測する。

日本からウクライナへの武器支援について、米国のオースティン国防長官は東京で浜田防衛大臣と共に開いた共同記者会見で、こ決定は全面的に日本政府に委ねられていると述べている。日本政府がこれを決断すれば、廃棄予定の多連装ロケット砲がウクライナに供与される。

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日米 極超音速兵器迎撃システムの共同開発を確認

2023年6月1日, 16:28 (更新: 2023年6月1日, 16:42)

日米両国は、日米同盟における抑止力と対応能力の強化に引き続き取り組む。日本の浜田靖一防衛相が1日、東京で行われたロイド・オースティン米国防長官との会談後の記者会見で、このように述べた。

その記者会見で、浜田防衛相は以下のように発言した。

「防衛装備技術協力に関しては、無人機に関する協力、極超音速技術に対抗するための将来のインターセプターの共同開発の可能性に関する議論を前進させ、協力を深めていくことを確認した。」

また、オースティン国防長官も以下のように述べた。

「(日米は)共同訓練や演習によってさらに総合運用性を高めていく。新しい2国間メカニズムを通じて情報共有も強化する。極超音速兵器の対応、先進防空システムなどの先進技術に一緒に取り組んでいる。そして防衛サプライチェーンに関する協力も増加している。両国の防衛産業に関する重要なつながりを構築している。」

日本経済新聞は2022年末、日米が極超音速滑空兵器(HGV)を迎撃する新たなミサイル技術の共同研究を検討していると報じた。同紙によると、そのミサイル技術は既存の防衛網で対処できない高度を飛ぶHGVに対する迎撃手段を持つという。

米国は、HGVを滑空段階で迎撃するGPI(滑空段階迎撃ミサイル)計画を掲げ、米国防総省ミサイル防衛局は米国企業に資金を提供しこの計画を進めている。また米メディアは3月、同局はGPIに関する作業で日本と協力する可能性を検討していると報じた。

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日本の企業は戦争に反対しているのか

2023年3月28日, 20:05 (更新: 2023年3月28日, 20:18)

日本は2023年からの5年間の防衛費を総額43兆円とし、軍国化を推し進めている。日本政府は防衛費の増額について、中国の台湾有事および東シナ海における武力行使を抑止するためであり、平和目的として正当化している。

しかしながら、岸田政権は課題の実現において、予期できないはずはない部分で、予期せぬ困難に直面している。

第二次世界大戦の終戦後、東芝、三菱電機、ダイキン工業などの大企業が伝統的に自衛隊の発展に投資をしてきたが、現在、こうした企業が国の防衛発展に貢献したいという意思を示さない。

防衛産業の中核を担っている三菱重工でさえ、昨年の280億ドル規模の収益のわずか10%を占めるに止まった。

なぜ日本の企業は反戦に傾いているのか、またそうした企業がなぜ、岸田首相の防衛戦略を事実上ボイコットしているのか。「スプートニク」が専門家に取材した。

日本の企業に対し、防衛プロジェクトへの参加について、国の防衛能力を高めるだけでなく、日本経済を活性化するとの説得が行われている。企業界の反応を見ると、政府の理屈は説得力がない。

防衛への投資 出費は莫大だが、利益があるかは疑問

ロシア科学アカデミー、世界経済国際問題研究所日本経済政治部門の部長で、ロシア国際問題評議会の専門家であるヴィタリー・シヴィトコ氏は、まず、日本の平和憲法は戦後の数十年の間に、ほぼすべての日本人のDNAに組み込まれたと指摘する。日本の企業にとっては平和産業の方が、戦争への投資よりもはるかに大きな利益をもたらす。

「日本は軍需品の輸出が禁じられているため、防衛・軍事品の注文はかなり少ない。日本の企業は大きな収益をもたらさないものに資金を投入するつもりはない。岸田が企業を説得できる可能性は低い。日本の企業に対し、製品を売るための大規模な市場を作ることを約束する必要がある。長期的な注文を確実に保証しなければならない。日本企業の中には、部分的に、軍民両用品の製造に参加しているところもある。たとえば、巡視船だ。これは割合としてはかなり小さいものであっても、防衛目的の発注としては、企業としては納得できるようだ。

日本の大企業が参加して、防衛品の生産量を増加させるという状況は大きくは変わっていない。企業に対して圧力をかけ、防衛設備への投資がいくらか継続される可能性はある。ある程度の増産は行われる。しかし、日本の首相が短期間で達成しようとしているような規模にならないことは明白だ。」

いずれにせよ、岸田は日本企業に対し、国の必要に応じた、リスクのない素早い生産増加を行わせようとする試みを止めることはない。

平和ではなく、戦争が長引くことを想定しているのか?

そうなった場合、日本企業は防衛・軍事品の発注を優先的なものにし、それを企業活動の主な原動力にしなければならない。

シヴィトコ氏は、欧州諸国の経験から、日本の企業にとってリスクは証明されている。軍事紛争を含め、あらゆる対立は永久に続くことはないと指摘する。

「1990年代、冷戦が終結した後、ヨーロッパの企業に対する軍需品の発注は急激に減少した。軍事品の工場や設備は余剰状態となり、それを維持するのは有益ではなくなった。あまりにも費用がかさむということで、削減したわけだが、ヨーロッパの企業は今また軍需品の製造を急速に増加するよう求められている。軍事防衛品の生産において、長期的な計画でリスクを回避することは不可能だ。」

おそらく、日本の大企業はこうした要素を考慮した上で、収益率が低く、金融リスクのある防衛品生産のための工場建設について懸念を示し続けている。日本が防衛力増加を終えた後、それらの工場は無益なものになるからだ。

日本の企業は、明確な態度を示さない理由として、武器を販売することで、企業の社会的なイメージに害を与える可能性があると説明している。複数のメディアが、有名な日本企業の株主たちと同様、企業は収益の高い民生品に集中すると期待されると報じているが、もしも日本の軍事化がこれまでと同じテンポで進んでいくとすれば、それは事実上、日本が平和ではなく、戦争に備えていることになる。

軍需市場において収益のある「日当たりの良い場所」はすでに奪われている

軍事紛争への日本の間接的あるいは直接的関与は、予測不可能な結果をもたらす。

ロシア科学アカデミー中国・現代アジア諸国研究所、日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、日本の平和な経済は少しずつ軍事的な方向に進んでいき、日本は、その市場において、強いプレーヤーとの販売競争に直面することになると指摘する。

「日本政府は2027年までに、防衛費をNATO諸国と同じ、GDPの最大2%にまで増加させる計画だ。つまり、防衛費は、米国、中国に次いで、世界でも最大規模のものとなる。日本経済は世界3位の規模を誇る。防衛・軍事品の大規模生産が、日本経済の原動力になると考えられている。そのために大企業は、損害を出さないため、海外での大きな販売市場が必要になる。一方、武器の輸出市場は他の国によって独占、あるいは分割されている。主に市場を占めているのは、米国や英国だ。さらに、フランス、イスラエル、ロシア、中国は、グローバル・サウスの国々に積極的に武器を提供している。激しい競争に日本企業が参入し、それなりの地位を築くのは簡単なことではない。」

日本には、時間が必要である。

防衛・軍事品の販売市場が突然、現れたとして、もう一つ、絶対に解決できない問題がある。日本は武器の輸出を禁じている。状況を打開するためには、憲法を変える必要がある。これは一定の困難が伴う。なぜなら、国民は何十年もの間、平和主義の原則の下で教育されてきた。

エネルギー問題は、平和の時代にあっても日本の「弱点」

日本経済には今、防衛装備の再配備よりも深刻な問題がある。たとえば、エネルギー資源の依存である。

日本政府はこれについて、一度も隠してきたことはない。エネルギー資源の大部分を中東から輸入し、ロシアへのエネルギー依存度を10%以上に上げることはできない。ウクライナ紛争によって、日本政府はロシアとのほぼすべての交渉を停止した。日本の企業には、ロシアとの共同プロジェクトを拒否するような贅沢は許されない。

ヨーロッパの状況は非常にわかりやすい。安価なロシアのエネルギー資源を拒否したことで、ヨーロッパの多くの国々が存続できなくなり、競争力を失った。ヨーロッパ諸国は、損害を被りつつ、高価な米国のガスを購入している。

ロシア科学アカデミー中国・現代アジア諸国研究所、日本研究センターの主任研究員、コンスタンチン・コルネーエフ氏は、日本のエネルギー産業はまったくの民生分野であるという。

「日本のエネルギー産業においては、特別な機能がまったく想定されていない。たとえば、軍事紛争が起こった場合に軍需品の工場などに使うという機能だ。日本のエネルギー産業はそのような脅威に対抗できない。独自のエネルギー資源が不足しているためだけではなく、原子力発電所の地理的な位置も原因の一つだ。日本の原発はほぼすべて沿岸部に建設されている。福島の事故は位置の危険性を世界中に見せつけた。軍事紛争が起こった場合、原発は崩壊する可能性がある。それにより、日本全土規模の大きな事故が発生する危険性もある。

日本の大企業が防衛・軍事品の生産を拡大した場合、エネルギー産業における問題はそれがどのようなものであっても、きわめて深刻になる。北海道では、戦時でなくてもエネルギー的にかなり脆弱である。」

防衛・軍事品ではなく、エネルギーがこの国の経済を生きながらえさせている活力である。

日本は、その経済力と技術力を持ってしても、エネルギーという意味において例外になり得ない。

日本政府指導部が、防衛・軍事品の輸出について、「愛国的義務」で正当化するのが困難であるのは、こうした事実によって説明できる。

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中国の艦隊を粉砕できる日本の潜水艦

2023年4月17日, 21:00

日本の防衛省は、潜水艦からの発射が可能な長射程の対艦ミサイルを開発することを明らかにした。2023年4月7日、防衛省は三菱重工業との間で、2023年から2027年の間に(2028年3月31日まで)開発を行うことで合意した。新たな兵器の開発は試験で終了することを鑑みれば、2027年には新たな対艦ミサイルの試験が行われる。

際限なく改良され続ける12式地対艦誘導弾

三菱重工業がそれほどの短期間で、まったく新たな形のミサイルを開発できるとは考えにくい。おそらく、その開発は、すでによく知られている12式地対艦誘導弾の改良型になるものと見られる。

日本の12式地対艦誘導弾は、車両に搭載するタイプの射程200キロの地上発射型対艦ミサイルである。17式艦対艦誘導弾は、12式地対艦誘導弾をベースに、艦上用に開発された。

2020年には、12式地対艦誘導弾の射程を900キロ程度にまで延伸することが決定されたが、最終的には射程1500キロを目指す。レーダーからの被探知性を低減させるステルス能力や、複雑な動きで敵からの迎撃を防ぐ高機動性も追求する。

新型ミサイルは、陸(地上)、海(艦艇など)、空(戦闘機など)のいずれからも発射できる。防衛省と三菱重工業は、このミサイルの量産について合意し、2026年から2027年には納入するとしている。

潜水艦用の対艦ミサイルには2つの発射方法がある。

1.潜水艦上に設置された発射装置から発射する。この方法はロシアの対艦ミサイルP-700(グラニート)およびP-800(オーニクス)の発射に使用されている。

2.魚雷発射管から発射する。これは米国の対艦ミサイルUGM-84(ハープーン)に使用されている。

日本の12式地対艦誘導弾は米製のUGM-84に非常に似ていることから、おそらく日本の設計チームは後者の方法を選ぶと見られる。

この改良型の対艦ミサイルは、魚雷によく似た発射カプセルに収納され、このカプセルが魚雷発射管に詰められて、洋上に発射される。海面に達するとこのカプセルが開き、固体燃料ブースターに点火し、空中へと上昇する。そして一定の高度で、推進エンジンに切り替わり、目標に向かって飛翔する。

日本にはすでにミサイルがあることから、日本の設計チームは、発射筒の開発を行い、潜水艦上に発射・制御装置を設置し、その機能を試すことになるわけだが、その課題自体は5年あれば遂行できる。

中国の艦隊にとって深刻な脅威に

日本の自衛隊司令部は、東シナ海および琉球諸島周辺で中国の海軍に対抗するのに、地対艦誘導弾では効果がないことを認識した。地上型の発射装置は、島に配備することができるが、その位置を中国の偵察隊に知られることになる。

中国人民解放軍の偵察部隊はおそらく、衛星を使って、島におけるあらゆる変化を把握し、持てる限りの手段を使って、日本の対艦誘導弾の配備に関する情報を収集している。地上型の発射装置は、敵に向けて発射される以前に、ミサイルあるいは空爆、破壊工作部隊の攻撃により破壊されるだろう。そこで、対艦ミサイルを潜水艦に搭載するというのはより良い考えだ。

第一に、潜水艦は発見しにくく、破壊しにくい。これを行うには、対潜艦と対潜哨戒機が必要となる。

第二に、潜水艦は防御線に配備することができ、また敵の艦隊を発見した場合、攻撃を行うために集団を作ることができる。こうした状況は、敵の艦隊に対する戦略を柔軟なものにすることができる。

第三に、潜水艦は敵の艦艇を2段階にわけて攻撃することができる。第一段階は遠方からの対艦ミサイルによる攻撃で、このミサイル攻撃が成功した場合、第二段階として、敵の艦艇に近づき、魚雷で更なる攻撃を加えることができる。もし潜水艦が400キロの射程でミサイル攻撃を行い、深刻な被害を与えることができれば、潜水艦は12時間で魚雷攻撃のために敵艦艇に接近することができる。

日本の海上自衛隊には現在3つのタイプの潜水艦が合計25隻ある。

11隻の「おやしお」型潜水艦は最大20発の魚雷またはミサイル、12隻の「そうりゅう」型潜水艦は最大30発の魚雷またはミサイル、そして2隻の新型潜水艦「たいげい」型潜水艦もおそらく最大30発の魚雷またはミサイルを搭載することができる。合計で640発である。

もしこれらが、合わせて125発の対艦ミサイルと515発の魚雷を搭載して一斉に海上に出れば、これは中国の艦隊にとっては深刻な脅威となる。

中国海軍は東シナ海で、日本の潜水艦を発見し、沈没させるまで、自由に身動きすることはできない。それも至難の業である。

12式地対艦誘導弾は重量225キロの弾頭を持ち、およそ120キロの弾薬が詰められている。ミサイルはコルベット艦とフリゲート艦に多大な損害を与え、戦闘力である空母にも深刻な被害を与えることができる。中国の空母「遼寧」は対艦ミサイルで攻撃するにはあまりにも大きすぎる。とはいえ、数十発のミサイルがうまく命中すれば、飛行甲板上の爆撃機やヘリコプターを破壊することができ、これによって格納庫で火災と爆発を引き起こされれば、空母を制御不能にすることができる。

1945年5月11日、沖縄戦で戦っていた神風特別特攻隊の安則盛三と小川清は米国の空母USSバンカーヒル(CV-17)に突撃した。投下された250キロの爆弾は12式地対艦誘導弾の破壊力に匹敵する。空母は炎に包まれ、甚大な損害を受け、終戦はドックで迎えた。ミサイルによる攻撃は、大型の空母にとっても危険である。

良好な条件が揃えば、対艦ミサイルを搭載した日本の潜水艦は、中国の艦隊を抑止できるだけでなく、激しい損害を与え、空母群のような大規模な部隊を殲滅することもできる。そして、そのような可能性が、2030年までに日本の海上自衛隊に備わろうとしている。

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https://sputniknews.jp/20230407/nato-15587016.html

NATOに深くはまり込みつつある日本

2023年4月7日, 17:35 (更新: 2023年4月10日, 21:45)

日本の林芳正外相は、日本は今、NATO(北大西洋条約機構)との協力を深化すべきときだとの確信を示している。しかも日本はただ単に協力を深化させるだけでなく、この西側の軍事同盟と共に自由で開かれた国際秩序を維持、強化するためのイニシアチブをとる決意に満ちている。しかしこうした発言は、平和主義的な日本国憲法と合致したものなのか、「スプートニク」が専門家に取材した。また、日本は積極的に国の軍事化を進めており、アジアにおける中国との軍事対立に関するNATOの戦略への関与を深め、完全な加盟国になろうとしている。

アンドレイ・フェシュン氏は、日本は、国際舞台において、米国の承認なしに、新たな提案を行ったり、イニシアチブを示すことができるような独立した国ではないと指摘している。

「岸田が日本を率いているうちは無理だ。彼は完全なる親米派の人物だ。そこで日本は現在、米国とNATOに必要なことを口にしている。数十年前、米国には、いわゆるアジア版NATOを創設するという構想があった。西側の軍事同盟と米国主導による集団が欧州大陸で集結し、もっぱらロシアに対抗する。同時に、米政府には、もっぱら中国に対抗するためのアジア版NATOを別に創設するという計画があった。

ロシアと中国の間には大きな対立はない。露中の首脳は、会談を行い、軍事同盟も政治同盟も結んではいないものの、世界で起こっていることに対する両国の考えや目的が多くの点で一致していると公言している。現実に照らし合わせれば、かつて考案していた軍事ブロックを2つに分けることはNATOにとって焦眉の問題ではない。日本の外相の発言は、ロシアと中国の周囲に『アナコンダの輪』を作るという米国の目的を反映している。彼らの戦略では、この露中の首をしめる輪は、中国とロシアに対し、いつでもすぐ攻撃し、軍事行動を取ることができるアジア諸国のつながりで作られる。」

以前、NATOは、軍の戦車部隊や攻撃爆撃機を欧州諸国の国境に配備できるよう、ロシア周辺にNATOの軍事基地や司令部を集中させていた。NATOは現在、中国を抑止し、必要であれば、軍事力で中国を無力化するため、その計画をアジアで実現する用意がある。

軍事アナリストで、雑誌「国家防衛」の編集長であるイーゴリ・コロトチェンコ氏は、そのために、NATOには日本が必要だと指摘する。

「NATOのグローバルなミッションと、オーカスのような地域の新たな軍事組織とを結びつける。日本の協力だけでなく、韓国、インドなどを引き入れ、アジア版NATOとなる。これは中国の安全保障問題に関わる。地政学的に、これを提唱しているのは米国で、日本はただそれを実行する。NATOのストルテンベルグ事務総長はこのミッションを実行するため、日本と韓国などアジアを訪れた。非公開で議論されたが、日本政府が国際舞台で発言するという形で実現されている。

岸田は、これより前、兵器の開発に関する一連の文書を提案している。特に、射程1500キロまでの巡航ミサイルのような不安定化させる兵器の開発に関するものだ。こうした変更の中で、日本は自衛隊ではなく、人員数も増え、攻撃力も一層大きくなった完全なる軍を持つ。」

将来的に、日本が核大国の仲間入りを果たす可能性も除外できない。イーゴリ・コロトチェンコ氏は、日本の技術力は、きわめて短期間で核兵器を開発することが可能であり、また運搬手段はすでに日本国内に展開していると指摘する。

「中国はもちろん、このことを否定的に捉えている。中国は、今、米国、日本、NATOが提唱しているあらゆるイニシアチブが、反中国的であることを理解している。それらは中国を抑止するものであり、影響力を豪州に至るまで拡大しようとしている。そのカウンターウエイトとして、オーカスが創設され、原子力潜水艦が作られる。その目的は、中国が台湾を管理下に置くための作戦を行うのを阻止するため、新たな軍事ブロックを作ることだ。中国の国家主席は、中国軍に対し、2027年にその用意を行うよう指示している。米国とその同盟国の現在の行動は、こうした計画を邪魔しようとする米国の措置だ。」

コロトチェンコ氏は、そして米国は同時に、中国を新たな軍拡競争に引き込み、将来的な経済発展を停滞させようとしているとも述べている。

アンドレイ・フェシュン氏は、特に注目すべきなのは、欧州の安全とインド太平洋地域の安全を個別に議論することはもはやできないという日本の外相の発言であると指摘している。

「日本はNATOの戦略にますます積極的に参加する用意があり、グローバルなNATOの創設に近づきつつある。日本は、国際的な争いを解決するための戦争を永久に放棄すると述べ、軍事同盟に参加することはないとしていたにもかかわらず。現時点で、憲法を改正することなく、日本政府はそのいくつかの条項について、国の軍事化に向けた方針を可能にするものだとコメントしている。自衛隊に、それがまるで軍事行動ではないかのように、先制攻撃の権利を付与した。日本が米国から調達するトマホークは、防衛兵器ではなく、攻撃兵器だ。」

日本とNATOは現在、協力のためのプログラムを検討している。このプログラムで、日本は多くの新たな分野で、NATOとの協力を大幅に強化する。

日本は技術的には素晴らしい軍備を持ってはいるものの、1945年以降、一度も実戦を経験していない。フェシュン氏は、そこで湧き上がってくるのは、自衛隊員らが明日にも、自分たちの国ではなく、米国の目的のために命をかける用意があるのかという疑問だと述べている。

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「ネットを張り巡らす」 台湾と偵察ドローン情報共有の日米の目論見

2023年6月9日, 13:41

8日付けの英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、米国と日本、台湾が軍事偵察ドローン(無人機)が収集した情報をリアルタイムで共有するシステムの創設を進めていると報じた。

これは、台湾海峡の危機的状況に備えて「連携を強化したい」という米国の意向を示す。スプートニクは専門家に取材し、米国の戦略とそれに対する中国の反応を検証した。

米国の戦略

ロシア国立研究大学経済高等学院付属総合欧州国際調査センターの国際軍事政策軍事経済問題部門を率いるプロホル・テビン氏はスプートニクからの取材に対し、米国の現在の戦略は、アジア太平洋地域における軍事パートナーシップと同盟協力のネットワークを最大限に拡大することを目的としていると語っている。テビン氏は、その目的には日米同盟からAUKUSまで、数多くの二国間および多国間同盟が列挙でき、米国と同盟国の交流はさらに拡大するとして、次のように語っている。

「こうした動きは欧州でもアジア太平洋地域でも進んでいる。偵察は海上に限らず、宇宙、地上、無線など、さまざまな分野に及んでいる。ポイントは、これら個々の要素をすべて統一のシステムとして、しかも多国籍レベルで結びつけることだ」

プロホル・テビン 専門家

今の台湾海峡の両岸の関係に詳しい中国人コラムニストのビ・ディアンロン氏も同様の見解だ。ビ氏は、日米台湾は将来、データ交換の協力を深化し続けるだけでなく、司令や訓練システムという分野でも協調を強化しうると見ている。

「このほか、データ共有システムに韓国を入れる可能性もある。なぜなら韓国は中国大陸にさらに近く、米国の情報収集が非常に重要な役割を果たしうるからだ。韓国は、今の自国の立場を踏まえ、そのメリットを考えても、まだ「舞台には出て」いないのが実情だ」

ビ・ディアンロン 専門家

中国の対応

テビン氏は、海上偵察用ドローンのデータ共有ネットワークの構築に対する中国の対応には次の2つの方法が考えられると語る。

「中国は自国のポテンシャルを向上させるだろう。中国は特定の分野でロシアと協力を拡大する。この地域の情勢はますます緊迫化するだろう。非常に深刻な地域問題は米中対立のほかにもあることを忘れてはならない。」

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エネルギー確保に必死の形相の日本 豪州との反中国の友情は助けとなるか?

2022年10月21日, 18:01 (更新: 2022年10月21日, 20:40)

岸田首相はすでにオーストラリアへ向けて出発しており、日本と豪州の安全保障の新合意はすぐにでも調印される運びだ。日本と豪州は、2007年に安全保障協力に関する共同宣言に署名しているが、この文書はテロとの戦いや北朝鮮の核ミサイル開発に対抗するものであった。

北朝鮮問題に関する日豪の協力は成果を出ないままであった。両国の努力で、核弾頭を搭載した弾道ミサイルの開発を特に防ぐことはできなかった。

両国は新たな安全保障条約に調印するに至った。新たな宣言は中国の海洋進出に対抗する。豪州は、安全分野における中国とソロモン諸島の協力に、特に大きな懸念を示している。声明からは、新たな安全保障に関する宣言が何のために必要なのかについて一義的な結論を導き出すことは困難である。

豪州に依存する日本

このような条約を締結するには、重要な理由がある。日本が、豪州や同地域のその他の国々からの液化天然ガスとエネルギー資源の輸入にかなり依存している。2021年、日本は7150万トンの液化天然ガス、つまり世界の輸入量全体の15%に当たる量を豪州から輸入した。2020年は7440万トンであった。輸入量はやや減少傾向にあるが、それはガスの価格が高騰したことにより輸入量を減らす必要が生じたからである。

2020年のデータでは、東南アジア諸国からの日本の輸入は、

豪州から2910万トン

マレーシアから1050万トン

ブルネイから390万トン

パプアニューギニアからは340万トン

インドネシアからは220万トン

となっている。

豪州だけで、日本の液化天然ガスの輸入量の39.1%を占めている。これらの国々からの輸入量の合計は4910万トン、全輸入量の65.9%となる。これに加えて、1210万トン、つまり液化天然ガスの輸入量の16.2%はペルシャ湾岸諸国から供給されている。液化天然ガスは特殊なタンカーで運ばれている。日本向けの液化天然ガスの主な輸送ルートは南シナ海とフィリピン海を通過し、フィリピン北東部を抜ける形で設置されている。

石炭に関する状況はさらに興味深い。

日本は2021年、1億8260万トンの石炭を輸入したが、そのうち豪州からの輸入は1億1940万トン、つまり全体の65.4%、そしてインドネシアからの輸入は2260万トン、つまり全体の12.3%をそれぞれ占めている。米国、カナダからも供給されているが、その量ははるかに少ない。日本に輸入される石炭の大部分は、液化天然ガスと同じルートで輸送されている。液化天然ガスと石炭は、日本経済にきわめて大きな役割を果たす。2021年、電力の26.5%が石炭から、また31.7%が液化天然ガスから生産されている。この両方を合わせると58.2%である。ちなみに、原子力は5.9%、太陽光エネルギーは9.3%である。豪州は、日本の燃料の確保において、かなり大きな役割を担っており、豪州に依存していると言っても過言ではない。

きわめて重要な供給に対する脅威

想像してもらいたい。ソロモン諸島海域に、最大射程2500キロの巡航ミサイルCJ-10を設置できる64基の発射台を持つ052Dのような中国の新鋭ミサイル駆逐艦が現れたとする。この場所から駆逐艦は豪州の北東沿岸部をコントロールし、LNGタンカーに巡航ミサイルを撃ち込むことができる。300キロの弾頭というのは、命中すれば、タンカーを壊滅するのに十分な威力である。駆逐艦はまた石炭を積載した船を追跡し、沈没させることができる。このために魚雷発射管と130ミリ艦砲がある。液化天然ガスと石炭を積載した船を沈めるためには、潜水艦やコルベット、ミサイル艇、魚雷艇などを派遣することもできる。これらの艦船は基地から遠く離れた場所で活動することになる。

軍事行動が行われている地域に燃料、食糧、弾薬を積載した船が派遣されれば、これは十分に可能性のあることである。巡航ミサイルを搭載した戦略的爆撃機Н-6Кを使用する可能性もある。船に対しては、艦砲射撃による攻撃が行われるのではなく、海上の特殊部隊によって拿捕される可能性もある。

特殊部隊は拿捕した貨物船を沈没させることもできれば、別の港に移動させることもできる。これらはすべて、中国人民解放軍の海軍が客観的に有しているものであり、軍事紛争が勃発すれば、使用することができる。

日本にとってきわめて重要なエネルギー資源の供給に対する深刻な脅威が生じる。日本の電力生産の46.5%が南シナ海とフィリピン海を通過する海上輸送に依存している。それは主に豪州からの供給である。中国人民解放軍・海軍は、日本に対する液化天然ガスと石炭の供給の可能性を奪うことができると断言するのは時期尚早だろう。とはいえ、船との戦いは複雑で困難だ。

中国を視野に入れた安全保障分野における日豪の新たな新宣言は、液化天然ガスと石炭の海上輸送を保護することが主な目的である。各国は諜報活動、そして艦隊や空軍の共同行動における緊密な協力を行うことが求められている。

新宣言の調印には、このようにきわめて深刻な背景がある。


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