2023年1月17日火曜日

スコット・リッター:米国一極集中から脱却する世界の軌跡

https://www.globaltimes.cn/page/202301/1283905.shtml

Global Times 掲載。2023年1月16日 11:29 PM

ロシア・ウクライナ紛争は、紛争解決と欧州への安全保障の両面から、2023年も火種であり続ける。

ロシア・ウクライナ紛争、あるいは集団的西側に対するロシアの対立と表現されることがあるが、それには3つの側面がある。 

第一は軍事的なものである。NATOはウクライナ軍を代理人として利用している。ウクライナ軍を訓練し、数百億円相当の重装備を整え、通信、情報、計画の支援を行っている。ウクライナ軍は、実法的な面を除けば、あらゆる面でNATO軍である。 

NATOは、自分の意志を押しとおす軍事力を持たない組織として、張子の虎のような存在だ。アフガニスタンからのNATO撤退はともかく、NATOが自らの裏庭で、2008年から準備していた紛争で敗れたのだから。 

NATOは、2022年6月の時点では、中国と対峙するために太平洋に進出するつもりだった。欧州で軍事的に起こっていることを中国が見れば、中国にとってNATOは軍事的に脅威ではなく、中国はNATOを何も恐れることはないという認識が広まるはずだ。 

次に、経済的な側面。G7は表向きは世界で最も影響力のある7つの経済圏の組織である。いわばアメリカの付属機関である。米国がいなければG7は存在しない。G7はアメリカに仕えるために存在し、法に基づく国際秩序ではなく、アメリカ主導のルールベースの国際秩序、アメリカによってのみ結果が決定されるルールに基づく国際秩序、という概念を促進するために存在するのだ。

ヨーロッパのG7は、ロシアは経済制裁によって敗北させることができるというアメリカの考えを信じた。これは失敗だった。ロシアだけでなく、世界は目覚めている。アメリカ主導の一方的な経済制裁の脅威や実施によって、アメリカが結果を左右することはもはやできないという事実に、世界が目覚めた。経済制裁は、アメリカが何十年もの間、自分たちの思うように世界を形成し、影響を与えるために使ってきたツールである。

ロシアが膝を曲げることを拒否し立ち上がったことで、米国と欧州はもはや制裁だけでは脅迫できないことを世界に示した。制裁ゆえに、G7は、破滅的な組織になってしまった。ドイツ経済について考えて欲しい。2021年はどうだったか?強く、活気に満ちていた。2023年の今はどうだろう?弱体化し、粉々になった。フランス経済は?弱体化し、粉々になった。イギリス経済?弱体化、粉々。イタリア経済?・・・。

アメリカの制裁ゆえに、ヨーロッパは経済的に弱体化し、粉々になった。世界の反応は?BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が、「G7はもはや経済的に世界の支配者ではなく、BRICSが支配者だ」と言っている。これが真実だ。ウクライナ紛争と、紛争による経済の落ち込みによって、これが加速された。 世界は、米国の覇権から、多極化した世界へ、BRICSが主役となる経済的な急変化を遂げつつある。

中国は米国と違い、他国と対等に協力することを望んでいる。米国は結果だけを指示する。この変容はウクライナ紛争が原因だ。そこから3つ目の側面である地政学が生まれる。 

アメリカ一極から世界の多極化へと、地政学的な急変化が起こっている。その背景には、ウクライナ紛争がある。問題は、アメリカがあまりにも強力で、大きく、支配的であったため、シフトするとしても、それはまるで海に浮かぶ巨大な船のようなものだ。 

いったん勢いがついてしまうと、方向を変えるのは非常に難しい。ウクライナ紛争で起きたことは、この船がエンジンを失ってしまったということだ。推進力がない。重くなった。人々は船から飛び降りている。誰もアメリカの極には加わらない。人々はアメリカの極から逃れようとしている。ウクライナ紛争は大きなタグボートのようなもので、船を別の方向に押しやろうとしている。 

地政学的な観点から見ると、世界の軌道はアメリカの単一性から多極化に向かっている。これが大きなポイントだ。アメリカがなくなるということではない。アメリカは決してなくならない。アメリカが弱くなるということではない。アメリカは決して弱くならない。そうではなく、アメリカがもはや世界を引きつける唯一の存在ではなくなるということだ。アメリカは多くの国のひとつであり、唯一でなくなる。これはおそらく、今年最大の話題だ。

この記事は、元米海兵隊情報将校のスコット・リッター氏へのインタビューに基づいて、グローバル・タイムズが編集したものです。opinion@globaltimes.com.cn。

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