マイケル・ハドソン:地政学的経済アワー (1) イントロ(要約)
https://michael-hudson.com/2023/01/systemic-sponsors-of-self-interest/
2023年1月17日(火)
By Michael 火曜日, 1月 17, 2023
ラディカ:2週間ごとに1時間、21世紀の世界で急速に変化している地政学的経済について話し合います。
マイケル:すでに1978年に私は『Global Fracture』という本を書き、世界が2つに分裂していると書きました。当時、国々は自国の発展を遂げるために自由を手に入れようとしていました。中国、ロシア、イラン、ベネズエラだけでなく、今や南半球でもそうです。これからお話しするのは、地理的な分裂というだけでなく、経済システムや経済哲学の分裂です。この分断を形成しているのは、どのような特徴や政策なのかを話します。
ラディカ:マイケルはこのシステムの根底にある亀裂を見抜きました。多極化は非常に急速に進んでいる段階にあり、私たちは世界秩序の大きな変化を目の当たりにしています。
今日はオープニングとして、私たちの思考の枠組み、つまり多極化の進展、西洋の支配を維持することの難しさを紹介します。欧米による支配を維持しようとする試みは無駄であるばかりか、ウクライナ紛争やロシアに対する金融制裁などブーメランのように返ってくるように、逆効果にさえなっています。
マイケル:世界を分裂させている原動力は、米国がその支配下に一極集中の世界を作ろうとしていること、国家安全保障と金融面の利益を図っていることです。米国は国際金融システムの独占を主張し、各国が自国の発展を支援する政策をとろうとすれば、米国は簡単にプラグを抜き、金融取引を封鎖することができます。米国は石油取引を支配しようとしています。アメリカの世界秩序計画に従わない国の電力や照明、交通手段を止めることができるからです。
食料も。米国は他国が自国の食糧生産を発展させるのを妨害し、輸出作物(非食糧作物、熱帯作物)を生産するように誘導し、穀物を米国に依存し続けるように仕向けたので、自らの道を歩もうとすれば米国は彼らを飢えさせることができます。相互の利益を提供したり、発展を助けたりするのではなく、「我々の要求に従わないのなら、お前たちを転覆させる。クーデターを起こす。干渉するよ。」
世界で最も腐敗した地域である西ヨーロッパでは簡単なことでした。アメリカの財務省職員は、ドル紙幣を詰めた小さな白い封筒を渡すだけで、ヨーロッパの政治をコントロールすることができたと私に言いました。米国は本質的に脅威(と制裁)を利用しようとしており、他国を傷つけることができると考えています。
その背後には、軍事的な脅威があります。しかし、実際には米国による軍事的な脅威はありません。米国とNATOは通常の軍備を使い果たしただけでなく、米国はもう陸戦を行うことができません。ベトナムの再来はない。アメリカが他国を侵略することも、ヨーロッパが他国を侵略することもない。反戦運動からこのかた、徴兵を望む国民を得ることはできないからです。アメリカには水爆がある。標的型暗殺と原子爆弾はちがいます。
水爆があるからこそ、他の国々は脱皮することができた。1970年代には、インドネシアやカリブ海諸国、ラテンアメリカは単独で行動するための決定的な数を持っていなかった。しかし現在では、ロシア、中国、イラン、インドのおかげで、単独で行動することができるようになりました。世界で唯一、単独で行動できない地域があります。彼らは脱工業化しました。労働者に対する階級闘争で、海外に低価格の労働力を求め、自国の産業労働力を削減しました。製造、技術、農業、すべての中心をユーラシアと南半球に移しました。アメリカの外交官をいらだたせるのは、「どうやって支配するのか」という問題です。産業界のリーダーシップもなく、負債もデフレで、他の国よりはるかに多い負債を抱えて、どうやって世界を支配するのだろう。軍事力もなく、弱体化した状態で、いったいどうやってリードしていくのだろう?
ラディカ:米国は本質的に土足の巨人です。現実には、アメリカが1世紀以上にわたって行おうとしてきたものは、世界を支配しようとする試みです。この試みは実は一度も成功しなかった。アメリカが戦争によって、経済的強制力によって、国々の発展を抑圧することによって行ってきた害の大きさを否定しようとするものではありません。重要なのは、米国が実際に支配力を発揮したことは一度もなかったということです。私たちが多極化と呼んでいるものは、実はアメリカが支配することに失敗したことを示しています。
20世紀初頭、世界経済に対するイギリスの支配力が弱まっていることは明らかで、アメリカは世界の支配者になろうと考えていた。しかし自分たちがイギリスの支配の規模に匹敵することはあり得ないということをはっきりと知っていた。イギリスが持っていたような規模の帝国を獲得することはできなかった。イギリスは「太陽が沈まない」帝国を持っていました。
そこで米国は、目標を下げて「ドルを世界の貨幣にする」とした。第一次世界大戦後に彼らが引き起こした金融の大混乱は、興味深い話です。第二次世界大戦後、「ドルが世界の通貨になった」と言われますが、実際のところ、ドルを世界の通貨にしようとした最初の試みは、「トリフィンのジレンマ」に陥りました。つまり、米国は資本を輸出することができず、その能力もなかった。米国には帝国も黒字もなかったので、赤字を垂れ流すことによってドルの流動性を作り出した。ロバート・トリフィンが指摘したように、赤字が大きくなればなるほど、ドルの価値は下がり、ドルの魅力も低下します。
人々はドルを捨ててゴールドを選ぶようになったので、米国はドルとゴールドの結びつきを断ち切らざるを得なくなりました。それ以来、ドルは一連の金融化、つまり金融活動の拡大に依存し、貿易などにおいてドルの魅力がないことは、ドルに対する金融需要を大幅に拡大することによって打ち消されています。ドル優位とされる1971年以降は、次々と起こる金融化の上に成り立っている。金融危機が繰り返される時代でもあった。
世界を支配しようとするアメリカの試みは、すべて失敗した。
マイケル:バイデン大統領や国務省、メディアが世界で起きていることについて話したり、政策を説明したりするとき、ラディカが今話したようなことは一切しない。また、一極集中型と多極化型の世界の間の戦いについても語りません。プーチン大統領やラブロフ外相はそれについて話しますが、アメリカは違います。バイデン大統領や国務省の発言を聞けば、この世界の分断は「民主主義と独裁主義の間」であると言います。
彼らにとって、「民主主義」は金融寡頭政治を意味する。バイデンの言う「独裁」とは、産業、技術研究開発、生活水準の向上、そして何よりも基本的ニーズを満たすために政府が支援する官民混合経済、つまり公衆衛生、公的教育、退職所得、交通など、労働者の生活費を最小限に抑えるために補助され、経済余剰分は教育の向上、労働力の生産性の向上など、中国や他の国がやっていること、欧米では金融資本主義がやっていないことを基本的に行うことである。
アメリカ人にとって、公共支出、独占禁止法の規制、消費者の権利の保護は「社会主義」です。アメリカでは世論調査を行い、ほとんどの人が「資本主義」よりも「社会主義」という言葉を好むことがわかった。アメリカでは多くの人が社会主義者であると主張していますが、金融資本主義は社会主義ではありません。ローザ・ルクセンブルグが「野蛮と文明の戦い」と呼んだこの区別は、実際には、語彙を変えた民主主義と独裁の戦いです。
「民主主義世界」をリードし、人権と民主主義のために立ち上がるという米国の主張が、空虚に聞こえるようになりました。ドル支配の基盤となる金融化を実現するための政策は、米国の生産経済を弱体化させた。米国や他の国々では、天文学的なレベルの不平等を生み出しているため、社会を分裂させる傾向があります。その結果、政治的崩壊を本質的に作り出してしまった。つまり、欧米諸国の民主主義が深刻な崩壊に陥っている。
私たちは世界情勢を帝国主義と反帝国主義の間の競争として理解すします。トロツキーは、これを「不均等・複合発展」と呼んでいました。すでに発展している国、つまり帝国主義諸国は、ある国は発展し、ある国はそうでないという、世界の発展の不均等な構成を維持したい。取り残された国は、生産能力を向上させるための政策などを通じて自国の発展を促進し、これに対抗しようとします。
第三世界の国々が、生産活動に焦点を当て、貿易や金融の流れをコントロールするなどして、唯一できる方法で発展しようとすると、アメリカはそれを無理やり開こうとする。彼らは「自由市場」、「自由貿易」、「開放性」についてよく話すが、この「開放性」の本当の意味は何だろうか。西側資本や西側企業に支配され、西側が必要とするもの、商品、労働力、低コストの商品などを安く供給するために、各国が自らを開放しなければならないということです。これは反帝国主義と帝国主義の戦いであり、今日の多極化は、反帝国主義の勢力が勝っていることを示しています。
マイケル:アメリカは他の国の発展を止めようとしている。国家安全保障報告書には、「米国から独立した他国の発展は、米国にとって脅威である」と書かれており、中国が米国にとって最大の敵であり「システム上のライバル」である理由は、それが発展しつつあるからです。米国は、米国の金融利権者が支配して、の発展を米国独占にすることで賃料収入と利益を受け取る以外のいかなる発展にも反対します。今後の展開では、他国が実際にどのように政策として実現するのか、ということが重要です。
1970年代、ベトナム戦争によって米国が金を手放すことになり、サウジアラビアが石油資源の所有権を得た直後で、米国の外交官たちは頭を悩ませていました。私はハドソン研究所のハーマン・カーンに雇われ、国務省、ホワイトハウス、国防総省に出向き、超帝国主義の仕組みを説明することになりました。私の本を最も多く購入したのはCIAで、2,000部でしたが、これは作戦マニュアルでした。
サウジアラビアや産油国に対してこういった。
「石油の値段を4倍にしてもいいが、利益はすべてアメリカ国内、つまりアメリカの株式市場に置いておかなければならない。米国は他の支配権を買うことができるが、米国の重要な産業の支配権を他の国の投資家が買うことはできません。サウジアラビアは少数株と、国債を買うことができる。日本はゴルフ場とロックフェラーセンターの下の土地を買うことができたが、アメリカの産業を買うことはできなかった。他国を米国や米国の衛星に依存させ、対価としてほとんど何も得られないようにする計画全体が、成功したように見えた。しかし、実際には、アメリカは新しい種類の帝国主義を発展させたこ。それは、旧来の植民地帝国主義ではありません。
ハイチで起こったことを見てみましょう。1804年にハイチがフランスから独立したとき、フランスは「独立はさせますが、あなたを征服した軍事侵攻者に弁償してください」と言いました。「占領したときにタダで奪ったものの現在の価値を払え」と言ったのです。ハイチはこの200年間、フランスと国際金融界の借金漬けだった。
米国は、「他の国にも同じことができる。借金をさせることができる。アメリカの銀行でドル建てでクレジットを作り、利子やキャピタルゲインはすべてアメリカに送金されるという通貨システムを基本にする。軍事的な植民地主義は必要ない。ベトナムの二の舞にはならない。」アメリカが持てるのは、ドル依存主義です。中国、ロシア、イラン、「南」諸国の間で行われている協議の焦点は、脱ドル体制です。
ラディカ:私も思い出したことがあります。第二次世界大戦末期のアメリカの高官の言葉に出会ったのですが、彼はこう言っています:「今日、我々は世界の生産の半分を占めており、我々の目的はその相対的優位性を維持することだ」、つまり、アメリカは今後も世界の生産の半分を占めるべきということです。つまり、米国が世界の生産の半分を占め続けなければならない。それは不可能なことでした。エリック・ホブスボームのような歴史学者でさえ、アメリカが19世紀末から成長を始めたかのように語っていることがあります。米国がこのような支配的地位を獲得したのは、成長過程によるものではなく、戦争によるものだった。戦争中、米国は本質的に成長し、いわゆる「民主主義の兵器庫」として、その経済は活況を呈し、1939年から1945年の間に、米国のGDPは約6年間で2倍になった。その後22年間は、いわゆる資本主義の黄金時代で、成長率は比較的高かったのですが、再び2倍になることはなかった。戦争はアメリカ経済を押し上げる一方で、戦争が起きている他の国々では生産力を破壊しています。その複合的な結果であり、アメリカの優位な立場は何も自然なことではなかったのです。
今日、人々が再び米国の「民主主義の兵器庫」としての役割を称賛しているのは皮肉なことです。米国は第一次世界大戦でも第二次世界大戦でも、このようにして利益を得ていたからです。同盟国は戦争負債の返済を最近になってようやく終えたところです。米国は本質的に、実際には同盟国でなかったのに、同盟国を装うだけで他国に負債を負わせてきた。
なぜ軍産複合体が米国経済の大きな部分を占めているのか。
マイケル:第二次世界大戦中、アメリカは連合国に武器を供給するという立場を利用して、世界銀行と国際通貨基金(IMF)という二つの機関を設立させました。
イギリスには、今の「ドル圏」とよく似た「スターリング圏」があった。戦時中、インドをはじめとする旧植民地は、原材料を輸出し、その代償として膨大な政府貯蓄を築いていた。そして、「スターリング圏」のメンバーとして、この貯蓄をすべてイギリスの製造品に使うことを義務づけられていた。しかし、アメリカは「自由な市場が欲しい!」と言い出した。自由な市場とは、お金をどこで使ってもいいということだ。イギリスは過大評価されたポンドにこだわり、アメリカには工業力があったため、結局、大英帝国の貯蓄をすべてアメリカが手にすることになりました。フランクリン・ルーズベルトのもとで、大英帝国は解体され、輸出によって稼ぐことができなくなり、国際収支上、借金を強いられることになりました。脱工業化の道を歩むことになりました。
アメリカは国内債務がほとんどまったくない状態で戦争から抜け出した。恐慌によって、国内の個人向け融資や企業向け融資は一掃されていた。第二次世界大戦後、アメリカ、ヨーロッパ、そして世界中で、景気回復のたびに景気循環が起こりました。どの景気循環も、債務残高の対GDP比がどんどん大きくなっていくところから始まっています。個人所得に対する個人債務の割合が大きくなり、企業所得に対する企業債務の割合が大きくなっています。アメリカは国内の債務処理に多額の資金を費やし、(住宅ローンや個人債務、クレジットカードの債務を支払わなければならない場合)労働力は他国と競争できず、アメリカの産業は借金まみれになっています。
仮に、中国、ロシア、南半球の国々を想定してみましょう。アメリカの債務超過を単純に再現するのではなく、どのように経済を発展させることができるでしょうか。住宅価格がどんどん上がって中流階級の富を増やすと思っていたら、突然、貧しくなってしまった。住宅ローンにお金を使いすぎて、商品やサービスを買うお金が足りなくなってしまった、というアメリカの不動産(モデル)にならずに、中国はどうやって不動産を発展させることができるのでしょう?中国、ロシア、そしてグローバル・サウスは、第二次世界大戦以降アメリカが行ってきたことを単純に再現するのではなく、どのように代替経済システムを作ろうとしているのか、また、世界銀行やIMFとは全く異なる、異なる原則を持つ代替機関をどのように作ろうとしているのか、このことを教えてください。
ラディカ:そこで、もう一つのテーマが生まれます。金融の構造はどうあるべきなのか?例えば、中国はどのように金融部門と経済を組織化し、債務の間接費を発生させずに生産を促進することができるのか。我々は少なくとも1世紀前にさかのぼるモデルを持っています。つまり、アメリカを含む主要工業国、ドイツ、日本、今日の中国は、それぞれの工業化において、最も急速に発展した時期に金融部門を持っていました。その時代には、金融部門は生産を支援する構造になっていました。金融は生産の召使いだった。金融は、生産能力への長期的な投資を促進した。金融は消費者金融などに重点を置いていなかった。
金融はこれらの国の発展を実際に後押しし、金融は生産に従属しました。対照的に、イギリスは異なった金融モデルを持っていました。第一次産業革命の本場であるにもかかわらず、生産を促進する方向には向いていなかった。むしろ商業目的、最終的には投機目的など、短期的な信用を生み出すことに向けられていました。この短期金融モデルはもともと英国にあったもので、米国では1970年代から1980年代にかけて金融規制緩和が進み、アラン・グリーンスパンの下で1995年のグラス・スティーガル法を廃止した。
米国が過去何十年にもわたって採用してきたこの金融モデルは、正反対です。生産を助けるような金融構造が必要なのに、こうした金融構造は実際に生産を締め付けています。これらの金融構造は、経済的不平等を作り出しています。金融の利益と生産の利益の対立は非常に大きく、例えば、ここ2、3年のパンデミックの間、経済が悪化している間、株式市場は何もせず、金融資産を多く持つ人々の富を増加させてきました。
マイケル:ラディカが指摘したことは、1914年にはよく理解されていた。第一次世界大戦が勃発した後、イギリスのマスコミは、イギリスの銀行のせいで第一次世界大戦に負けるかもしれないことを記事にした。彼らは、「ドイツはアメリカに対して大きな優位性を持っている。ドイツでは、銀行業は長期的だ。ドイツ政府、銀行、大企業、特に製鉄業と軍用重工業の間には三者間の関係がある。」
イギリスは今のアメリカの証券会社のようなもので、顧客をある銘柄に預けて、ポンピング・アンド・ダンピングするんです。それがイギリス流の儲け方だった。イギリスが工業会社をつくったとき、アメリカのゼネラル・エレクトリックなど金融化された企業と同じように、金融担当者が経営していました。彼らは利益を新しい産業資本形成に再投資するのではなく、配当として支払った。産業工学の代わりに、金融工学を導入した。その結果、イギリスの金融は略奪的になりました。
マルクスは、産業資本主義の革命的な役割とは、地主階級を排除し、地代や天然資源の賃料を私的な不在所有者のものではなく、公有地の一部にすることであり、(英国式の)略奪的金融を排除し、生産的金融に置き換えることだと言う。そうすれば自然に社会主義につながると信じ、むしろ銀行が社会主義的な計画や政府の経済計画のモデルになると考えた。それは、ドイツでライヒスバンクの下で実際に起こっていたことだった。私はこのことを『ホストを殺す』という本の中で説明しました。
アメリカの勝利によって、英米の金融化政策が行われ、ご存知のように1929年の株式市場の暴落と1931年の同盟国間債務とドイツ賠償の債務帳消しを引き起こしました。ラディカが言っているのは、今日の「南半球」や中国、ロシアがやっていることは、1世紀前にあった金融資本主義と産業社会主義の論争と同じことを、ようやく認識し、再現している、ということです。
ラディカ:アメリカでは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、非常に異なる銀行構造がありました。そして、1920年代に英国式の略奪的な短期銀行へと進化を始めました。1920年代には米国で消費者金融が大ブームとなり、「ローリング・トウェンティーズ」と呼ばれましたが、その大部分は米国での借金による消費でした。その後、1929年の大暴落、世界恐慌が起こり、恐慌時代の銀行法(特にグラス・スティーガル法)が制定され、アメリカの銀行は世界で最も規制された銀行部門になりました。
大恐慌時代に新しい制度が銀行法によって制定されました。連邦預金保険を享受していれば、私たちのような一般預金者は、数千ドルを銀行に預けておけば、銀行が倒産しても消滅することはない、と基本的に信頼できるわけです。しかし、この預金保険を享受している銀行は、いくらまで貸せるか、どの程度の金利で貸せるか、どのような目的で貸せるか、金融市場での投機は禁止されているなど、厳しい規制を受けていました。
一方、金融市場で投機を行う銀行、いわゆる投資銀行には、連邦預金保険が与えられていなかった。このような米国の銀行が経済に積極的な役割を果たすという構造は、1970年代まで続いた。ドルと金のリンクが切れた後、ドル建ての金融活動を拡大すれば、トリフィンのジレンマに相当程度対抗できることが明らかになってきた。そこで金融化が本格化し、政府借入金、第三国への融資、そして株式市場バブル、ドットコムバブル、東アジア金融バブル、さらには2008年に崩壊したバブルの元凶である住宅バブルと信用バブルと、金融活動の大幅な拡大が見られました。この数十年間、度重なる金融危機にもかかわらず、アメリカの銀行構造を規制することは何も行われていません。今日、私たちはさらに大きないわゆるエブリシング・バブルを抱えています。アメリカは大きな転換期を迎えているわけで、このことも忘れてはなりません。
マイケル:この同じ問題を避けるために、他の国々はどうするつもりなのでしょうか?中国がこれほど成功したのは、そして中国の社会主義が非常にユニークなのは、(貨幣の創造、銀行、信用を公共事業として扱ったことです。
米国は、1980年代以降に蓄積した負債バブルを本当に治すことはできません。なぜなら、負債を帳消しにすると、膨大な債務不履行が発生するからです。
2008年、FDICのシーラ・ベア長官は、シティバンクは米国で最も腐敗した銀行であり、無能な銀行であると述べました。シティバンクは株主の財産をすべて消し去り、負の資本状態になっていました。オバマ大統領は、オバマのスポンサーであるゴールドマン・サックスに勤めていたルービン財務長官を任命し、オバマはシティバンクの政治ロビーでした。シティバンクを破綻させて、実際に生産的な理由でお金を貸すための政府系銀行にする代わりに、オバマは米国の超金融化を支援し、2008年以来、金融部門への9兆ドルの補助金を取引してきました。それは、産業部門の支配権を買い、企業を金融化し、脱産業化するための9兆ドルとして使われ、本質的に金融部門は米国の産業破壊を助けてきました。
中国はこのような立場にありません。政府を乗っ取ろうとする強力な金融利権を持っているわけではありません。中国は現在、非常に大きな企業債務を抱え、特に不動産債務を抱えています。しかし、企業が債務超過に陥ったとき、中国は「お前たちを解体して、外国の買い手や買える人に売らなければならなくなる」とは言いません。中国は基本的に負債を帳消しにします。中国が負債を帳消しにするのは簡単なことで、それは中国自身が負っている負債を帳消しにするからです。それに対抗してロビー活動をする民間銀行がありません。今、中国の不動産でも同じような状況が起きています。中国では、住宅がアメリカのように信用取引で高騰しているため、住宅を購入するために長期間の借金をしなければならない、という不満がたくさんあります。中国が競争力を維持できるように、また、銀行に支払う代わりに労働者の収入で生産した商品やサービスを購入できるように、労働力を低い住宅諸経費で維持するために、どのように住宅価格を下げればよいのでしょうか?
ラディカ:中国の金融構造と、過アメリカの金融構造の対比は、一方で脱ドルについて、他方で世界の主要通貨としての人民元(中国の通貨には2種類の名称がある)の台頭について語る上で非常に適切なものだと思います。
脱ドルに関しては、ドル金融システムに参加すると金融危機が増加する傾向があるなど、多くのデメリットがあることを世界の人々が認識しつつあるために起こっているのが事実である。もう一つ指摘しなければならないのは、金融化という構造を前提としたドル体制が、アメリカ経済の生産性を低下させています。アメリカでは社会的不平等が拡大しています。政治にも影響を及ぼしている。アメリカの政治は「お金で買える最高の民主主義」ですから、基本的に超富裕層の利益、つまり金融化に関心のある利益は、アメリカ国民に悪い影響を与えているにもかかわらず、このシステムを維持し、世界の他の国々にとってドルシステムの魅力が実際に低下しているにもかかわらず、このシステムを維持しています。このような利害関係によって、ドル体制は維持されています。
これに対して中国では、人民元はドルと同じように国際化されなければならないと言われていますが、これは間違いです。確かに国際貿易では人民元の使用が増えますが、新しい構造が生まれつつあり、人民元による支配だけが目的ではない。中国は他国と(他国の)通貨で貿易を行う協定をどんどん結んでいます。イランやインドなどの通貨も、限定的で規制された形ではありますが、国際貿易に利用できるようになるのです。これは貿易に関することです。
アメリカの金融システムが定期的に吹き上げる金融バブルに莫大な投資をしていない限り、基本的にドルシステムは必要ありません。ですから、人民元は極めて異なる方法で国際化されるでしょう。過去何十年にもわたるドルの国際化のように、金融化に依存した形にはならない。
マイケル:問題は、外貨準備高を管理するための国際銀行をどのように設立するかということです。確かに、最初のステップは、二国間および多国間の通貨スワップであろう。中国はサウジアラビアのリヤルを、サウジアラビアは中国の人民元を保有し、その結果、人々が話しているように石油元が生まれるでしょう。
上海協力機構(SCO)のメンバーや、中国、ロシア、イランの同盟国は、相互通貨スワップを展開し、ある時点で一緒になって、国際銀行を設立します。この銀行は、インフラ、港湾開発、輸送への巨額の投資を融資できるようにするもので、これまでのところ、中国は旧シルクロードや一帯一路構想に沿って開発を率先して行っています。なぜなら、ドルやユーロが提供できるものはほとんどなく、原材料も技術もあまりありません。コンピュータチップを製造するための特殊な機械は作れますが、基本的には制度全体の開発が必要です。
ラディカ:そろそろ1時間になりそうなので、この話を終わりにしましょう。米国が定期的に吹き上げる膨大な金融化バブルで、世界の人々にドル建て資産を買ってもらい、ドルの需要を高めてきました。そして、このこともまた、連邦準備制度理事会のバランスシートの拡大のような、ますます大きな矛盾にぶつかっています。
今世紀初めの約1兆ドルから約2兆ドル円、2008年の金融危機後は4兆ドル円となり、現在は9兆ドルを超えている。この資金の大部分は、基本的に外国人がアメリカの資産市場に押し寄せてドル建て資産を購入するために存在しています。そのため、これらの資産市場は連邦準備制度によって支援されなければなりません。最終的には、連邦準備制度が一部のアメリカ人の富を増やし続けるが、他の国の人々の関心は薄れていくという、一種の自己完結型のシステムになる可能性もあります。
もう一つの方法は、商品に対する支配です。石油価格は勝手に変動する。一次産品価格が上昇する理由は、世界の他の地域が発展しているため、世界の他の地域がより多くのものを要求しているからです。世界の他の国々の発展そのものが、アメリカの購買力維持の試みにマイナスの影響を与えることになるわけです。
アメリカが世界を支配しようとすることの愚かさに早く気づき、生産的な国民経済であることに集中すればするほど、アメリカ人自身にとっても良いことでしょう。アメリカ人は、ドルを世界の貨幣として維持するだけでも、世界に対する支配を保持しようとするアメリカのむなしい試みの代償を払ってきたのです。
次回もよろしくお願いします。
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