2023年2月14日火曜日

ドイツ戦車KF-51パンターが前線まで辿り着くことはない

https://sputniknews.jp/20230214/kf-51-14938230.html

2023年2月14日, 06:01

ドイツの防衛企業ラインメタル社のアーミン・パッパーガー社長は、ドイツ政府がウクライナへの新たな戦車の供与に同意すれば、ウクライナ軍に戦車KF-51パンター新車を供与する可能性があると述べた。KF-51パンターは、2022年6月に展示会ユーロサトリに初めて公開された。ドイツ政府が供与を承認すれば、ラインメタル社は15〜18ヶ月かけて、新たな戦車の製造を行うことになる。ウクライナ軍はすでにかなり以前から、同盟国から与えられる武器で戦闘を行なっている。

新型ではなく改良型

この戦車を新型と呼ぶには、一定の条件がある。というのも、KF-51は、ドイツの戦車レオパルト2の車体、エンジン、トランスミッションを基に製造される。砲塔には、130ミリ砲L52が自動装填装置とともに搭載される。

新機軸として、イスラエル製の無人機Hero-120徘徊型兵器(いわゆる自爆ドローン)のための発射機とドイツ製の偵察用クワッドコプターが砲塔内に収められている。ラインメタル社は、3563台生産されたレオパルト2の改良型であろう。

古いレオパルト2の車体に新エンジンとトランスミッション、新砲塔と機器を設置したものがKF-51である。目的は、戦車の戦闘能力の向上。レオパルト2の有効射程が3000〜3500メートルであるのに対し、130ミリ砲の有効射程はそのほぼ2倍の6000〜7000メートル。比較すると、ロシア製の戦車Т-90プロルィフの有効射程は5000メートル。ドイツ製のレオパルト2はすでにロシアの新型戦車の性能を大きく下回っており、改良が必要とされていた。

KF-51はレオパルト2の改良型である。しかし、ドイツにとってはどちらでもよいことだ。

タリバンに破壊された戦車

欧州では、新たな戦車の登場に際し、誇張宣伝が行われることが多い。今回のKF-51についても、高性能でもっとも防衛力が高いと評されている。

過去の戦闘を見れば、どんな戦車も攻撃され、破壊される。KF-51と同様の防衛力を持つ装甲が施されたレオパルト2は、アフガニスタンやシリアで、近代的な戦車、近代的な対戦車砲を持たない敵を相手に使用された。アフガニスタンではタリバンによって6台のデンマーク軍戦車と3台のカナダ軍戦車が殲滅され、シリアではアルバブの攻防戦で、戦闘に参加していた30台のトルコ軍戦車のうち、最大10台が殲滅または重大な被害を受けた。半数は、ソ連製の対戦車ミサイルによって損傷を受けた。KF-51が近代的な戦車や対戦車ミサイルと衝突した際に、アフガニスタンやシリアでの戦闘よりも良い性能を発揮すると言える根拠はない。KF-51は正面装甲に弱点がある。車体と塔との間に、正面の20%ほどを占める大きな隙間がある。

同様の欠点は、米国製の戦車M 1エイブラムスにもあるが、ドイツはこれを完璧なものにした。

この隙間にフガス破片榴弾が命中すれば、車体と砲塔を破裂し、回転機構と砲塔の開閉部分が破壊されるか、あるいは砲塔が吹き飛ばされる。

使用できるのは早くて3年後

KF-51が使用されるのはまだ先である。我々が目にすることができるのは展示用モデルと宣伝用のブックレットだけである。ラインメタル社はドイツ政府が決定を下した15〜18ヶ月後、つまりおよそ半年後に製造を開始すると言う。

そこから最初の製品が生産されるまでにはさらに半年かかる。

そこから、ウクライナの戦車兵の訓練、ウクライナへの輸送、戦車部隊の展開、戦闘準備の完了までにさらに時間を要する。

ドイツ政府がラインメタル社の提案を今すぐ承認したとしても、KF-51を使用するウクライナ軍の部隊が戦闘態勢に入れるのは、約3年後になる。

そのときウクライナ軍には戦車兵が残っていないかもしれないし、ウクライナ軍自体が存在していないかもしれない。現在のウクライナ軍の状況がすでに壊滅的なものであり、悪化の一途を辿っていることを考えれば、ウクライナの軍事政治的ステータスが急変する可能性がある。

そうなれば、ドイツの新型戦車はこの戦争に間に合わない。さらに、新型戦車を何台生産することができるのかという疑問がある。

レオパルト2は1979年から2015年にかけて、平均ペースで、年間98台生産された。

KF-51が古いレオパルト2のエンジンとトランスミッションを交換し、新たな砲塔と設備を設置するなら、ラインメタル社は年間およそ120〜150台、つまり半年でおよそ60〜70台、生産することができる。

この数はウクライナ軍が成功を期待するにはあまりにも少ない。ドイツの防衛企業社長の提案は、ウクライナに対し、現実よりも多くを期待させている。ラインメタル社は、有名企業であり、第二次世界大戦以前も、大戦中にも、武器を製造していた。ロシアはかつて、戦場でこの企業の製品に直面する機会があり、新型も恐れない。

KF-51がそれほど強固なものなのか、ドイツの商業経済紙「ハンデルスブラット」はどのようにこの戦車を評価するのか。

戦車殲滅に対する賞金

ウクライナがKF-51の供与を熱く歓迎することは疑いない。ロシアの企業家、知事、そして人気のテレグラム・チャンネルが、西側の最新型戦車の殲滅に賞金を出すと約束している。その額は、たとえば、エイブラムスやレオパルト2で500〜1000万ルーブル(およそ980〜1790万円)。KF-51に対しても、レオパルト2と同程度の賞金がかけられる。

欧米の戦車は収集され、ロシアの戦車製造会社に送られて研究され、クビンカ戦車博物館のコレクションに加えられる。ウクライナでの戦闘では、敵の装甲車との戦いにおける一定の戦法が作られた。そこには、無人機を使った偵察や自爆ドローン「ランセット」のような無人攻撃機での攻撃などが含まれている。こうした無人機は戦車の攻撃には使用されない。

2022年12月のデータによれば、ランセットは10の砲撃手段、7台の自走砲、6台の戦車、8台の装甲輸送車を殲滅した。

ウクライナの戦車Т-80もランセットの攻撃により破壊された。攻撃型の無人機が最近撮影した、ウクライナの戦車兵らが上空を飛ぶランセッ」を見つめる画像は印象深い。ウクライナ軍は反撃を試みることも多く、反撃の際には戦車に集中しており、一方でウクライナの装甲車は空爆によって破壊されている。

スヴァトヴォとクレメンナヤ地区では、ロシアの大砲がウクライナの戦車車列を猛撃した。

無人機によって撮影された画像では、少なくとも、2台の戦車が榴弾砲を受けて、燃えている。高精度の榴弾砲クラスノポリによって、ウクライナの戦車が有効的に殲滅されている。現在の戦闘行動における命中率は、移動する目標を含め、96%。装甲車両の攻撃には、多連装ロケットランチャーTOS 1(ブラチーノ)も効果を発揮している。長い射程を誇るKF-51だが、戦線に辿り着く前に、後方でランセットまたはクラスノポリの犠牲となる可能性が高いと言える。

 

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