林外相、53秒の国会答弁のためG20外相会合を欠席
https://sputniknews.jp/20230301/g2053-15119499.html
2023年3月1日, 23:00
インドの首都デリーで1、2日、主要20カ国(G20)の外相会合が開かれる。ロシアや中国のほか日本を含む西側諸国、グローバルサウスなど様々な意見を持つ国々が集まるなか、立場を超えて一致した見解が出せるかに焦点が集まっている。スプートニクは会合の主なテーマやロシアの提言する内容、林外相不在の日本の対応などについてまとめた。
会合のテーマ
2日の全体討議では食糧問題やエネルギー安全保障、持続可能な発展のための協力、テロとの戦い、人道問題、自然災害時の支援など多岐にわたるテーマが議題にあがる予定だ。ウクライナ情勢も主要な議題の一つになるとみられており、議長国のインドは各サイドの合意を取り付け、共同声明の発表に持ち込みたい考えだ。
西側諸国はこれまで通り、ウクライナ情勢をめぐり、血眼になってロシア批判やロシアの「孤立化」を目指すと想定される。だが議長国インドのビナイ・クワトラ第一外務次官は、開催にあたり次のように述べた。
「ロシアとウクライナの状況を鑑みれば、これが会合の重要なポイントになるのはもちろんだ。より大事なのはこの紛争がどのように世界の他の国々に影響を及ぼしているかを議論することだ」
ロシア、ノルドストリームテロ追及の構え
今回の会合にはロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相が出席する。1日にはすでに現地に到着し、インドやトルコの外相との二国間会合も行っている。
ロシア外務省によると、ラブロフ外相はG20会合で安全保障やエネルギー、食糧問題などについてのロシアの評価を表明する。また、ロシアとドイツをつなぐパイプライン「ノルドストリーム」の爆破テロについて、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)諸国の責任を追及する考えだ。
国際貿易や物流網の多様化も提言する。G20の「建設的な考えを持つ同僚」に自国通貨での支払いへの移行、決済メカニズムの整備、独立した保険スキームや輸送ルートの確保などを呼び掛けるとしている。こうした議論は、西側諸国による一方的な対露制裁や米ドルの影響力の低下などを背景にしているとみられる。
林外相は国会対応でG20欠席
日本の林芳正外相は国会審議に出席するため、2日のG20全体討議を欠席し代理として外務副大臣を派遣する。日本は主要7カ国(G7)の議長国であるのにも関わらず。日経新聞などによると、林外相は1日の国会審議に7時間出席したが、林外相への質問は1問のみで答弁時間はわずか53秒だった。
林外相は3日に現地で行われる日米豪印4カ国枠組みQuad(クアッド)の外相会合には参加する見込みだが、日本各紙は「日本にとって痛手」「発信力の低下につながる」と伝えている。予算案が審議入りする際の基本的質疑は全閣僚が参加するという「慣例」に沿ったものだというが、外交の重要局面でトップを派遣しなかったことは国際的に見れば非常識である。
インド紙「ヒンドゥスタンタイムズ」も林外相の欠席を否定的に伝えている。同紙は「内政問題で外相を自国にとどめておくことは、G20のホストであるインドをいら立たせる可能性がある。これは日本が、地域での中国の行動や、ウクライナとロシアの紛争を背景にモディ政権と協力を強化しようとしているときに起こった」と指摘している。インド政府は表面上は理解を示しているものの、日印間にしこりが残らないか懸念される。
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https://www.rt.com/india/572217-g20-india-russia-china-us/
2023年3月1日 07:36
G20外相会合は行き詰まる可能性が高く、組織の関連性が脅かされている。
ウクライナと米中の緊張をめぐる不和の中、世界20大経済大国の代表がインドで会合を開く
今週ニューデリーで開催される加盟国外相会議を前に、G20は世界的な不協和音に包まれている。2023年11月30日まで、インドが輪番議長国を務めている。
水曜日の夕方にガラディナーで始まる2日間のイベントは、9月に同市で開催される首脳会議に向けた初期の会合である。このイベントには、世界の20の経済大国(EU27カ国を含む)の代表が出席する予定。
水曜日の朝、メディアブリーフィングでインドの外務大臣Vinay Mohan Kwatraは、「それ以外に、13の国際機関とは別に、グループに属していない9カ国が特別招待されている」と述べた。
クワトラ氏は、日本が林芳正外相を欠席させたことを明らかにした。インドの外交官トップは、ニューデリーと東京の「素晴らしい関係」にもかかわらず、林外相の国内事情(自国での議会活動に参加することを選択した)を理由に挙げた。
林大臣の決断はニューデリーへのあてつけではない。経済的な影響力を持つG20そのものが、現在の国際政治情勢の中で取るに足らない存在と見ている。
1年以上前にロシアがウクライナで特別軍事作戦を開始し、クレムリンの報道官が「NATOはロシアと事実上戦争状態にある」と発言するなど、変化の風が世界を覆っている中で、この会議に何を期待できるのか。
新興国経済圏の影響力
G20のメンバーは、世界の国内総生産(GDP)の約85%、世界貿易の75%以上、そして世界人口の約3分の2を占めている。その中には、インドなど、米国主導の西側諸国ともロシア・中国軸とも完全には連携せず、中道を歩むことを望む新興国も多く含まれている。
G20の9カ国(ロシアを除く)のうち、新興国であるインド、ブラジル、メキシコ、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン、南アフリカの経済力を合計すると、9兆5000億ドル以上になる。これらの経済規模を合計すると、米国(23兆3200億ドル)と中国(18兆3200億ドル)を除くどの加盟国の経済規模よりも大きい。
インドの頭痛の種
インドのナレンドラ・モディ首相が掲げたスローガン「Vasudhaiva Kutumbakam」は、ヴェーダの聖典『マハ・ウパニシャッド』にあるサンスクリット語で、「一つの地球、一つの家族、一つの未来」とざっくり訳される。世界情勢が不安定な中、楽観的な考え方は冴えない。ニューデリーには、米国のブリンケン国務長官とその西側代表、ロシアのラブロフ外相など、世界の対立する陣営からの来賓を迎え入れなければならない。
ウクライナ紛争や台湾をめぐる米中対立の激化、北京の技術・経済発展を遮断しようとするワシントンなど、G20メンバー間の分裂が進むなか、緊迫した会議になるのは必至だ。
インドは現議長として、気候変動や世界の最貧国が被る債務負担など、より中立的でグローバルな問題に議論の舵を切るようだ。前者については、インドのSubrahmanyam Jaishankar外務大臣が1月に、グリーン開発協定がインド議長国でのG20の主要議題のひとつになると言う。
後者については、モディは先月の「Voice of Global Southサミット」で、発展途上国の債務増大を主要な話題の一つにした。世界銀行が昨年発表したデータによると、世界の低所得国74カ国が1年間に支払うべき350億ドルの債務返済のうち、131億ドル(約37%)が中国企業に対する債務であるという。同額である134億ドルは、中国の民間部門が負担している。
さらに悪いことに、昨年の350億ドルの見積もりは、Covid-19の大流行があった2020年に最終的に支払うべき債務総額よりも45%増加した。中国の債務保有に関する透明性の欠如は、世界的な議論の種である。
インドはGlobal Southにおいて主導的な役割を果たすことを熱望しており、債務負担に対する発言はそのための主要な手段の1つである。G20では、ニューデリーがより争点になりやすいテーマから議論を遠ざけようとしているが、この問題自体が不和の原因となる可能性がある。
トーキングポイント
クワトラは、会議の結果やウクライナ危機が包括的な議題となるかどうかについての推測を避けた。また、インドがどちら側につくかというメディアの質問には答えず、ニューデリーが紛争、戦争、軍事侵略、特別軍事作戦と呼びたいのかどうかという用語についてもはぐらかした。モディ首相が昨年9月にウズベキスタンのサマルカンドで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議で「今日の時代は戦争の時代ではない」と発言したことについて言及した。
木曜日の会議の議題もリストアップされ、Jaishankarが主宰する2つのセッションに分けられる。第1セッションでは、食料、肥料、エネルギーの安全保障と開発協力といった多国間問題の3つの原則について議論する予定。第2セッションでは、麻薬の殺戮を含むテロ対策、グローバルスキルマッピング、人道支援や災害リスク軽減など、新たな脅威を中心に議論される予定。
ウクライナ紛争をめぐる欧米の制裁以来、安価なロシア産原油の恩恵を受けているインドは、モスクワの軍事作戦がイベントの主役にならないように気を配っている。それでも話題はほぼ間違いなく、ブリンケン氏は発展途上国に影響を与える食糧とエネルギーの安全保障の問題に取り組む米国の取り組みを強調する予定だ。ラミン・トルイ米国務次官補(経済・ビジネス担当)によれば、ブリンケン氏は「ロシアの侵略戦争がもたらした損害を強調」し、モスクワに「ウクライナでの敵対行為の停止」を迫るよう他国に働きかける予定という。
大きな世界的な対立である米中関係も、おそらく大きく取り上げられる。米軍機が台湾海峡の上空を飛行し、「台湾海峡の平和と安定を危険にさらす」ワシントンの試みに、北京は直面している。
中国外務省は、中国のメディアで広く共有されている辛辣なエッセイの中で、アメリカの「覇権主義」に対して珍しくストレートな非難を発した。今月初めには、米軍が自国の領空を飛行していた中国のスパイ気球を撃墜したことで論争が勃発した。
中国は、これは民間の調査船が誤って航路を外れたものだと主張したが、ブリンケンは予定していた北京訪問を取りやめるた。王毅国務委員は、気球事件に対する米国の対応を「想像を絶する」「ヒステリック」と評した。
前任の王氏が国務委員に昇格した後、初のインド訪問となる中国の秦剛外相は、G20会合でブリンケンの反ロシア的な打ち出しに対抗しようとする可能性が高い。
予想される結末
ウクライナ情勢をめぐる米国主導の西側諸国のいじめにロシアと中国が引き下がらないため、2日間の会議の結果、コンセンサスの欠如がありそうな結果である。新興国は、ニューデリーが「南半球の声」の代弁者としての立場を強化しようとしても、傍観者的な役割に終始することになりそうだ。
先週土曜日のG20財務相会議では、多くの問題でコンセンサスを欠き、世界経済に関する共同声明を採択することができなかった。今週の会議でも、同様の結果が予想される。
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