2023年7月5日水曜日

グアム防衛

https://sputniknews.jp/20230704/16440943.html

2023年7月4日, 19:30

米国はグアム島の対ミサイル防衛を強化している。最近、明らかになったところによれば、米国は2024年に移動可能な新型レーダー「AN/TPY-6」と新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備を開始する。こうしたシステムのグアムへの配備が完全に終了するのは2029年とされている。

米国にとって重要な島

グアム島は太平洋に配備されている米軍の重要拠点である。マリアナ諸島の最南端にあるもっとも大きな島で、日本にとって深い記憶に残るサイパン島の南、フィリピン沖の東2100キロ、台湾の南東2700キロ、上海の南東3100キロに位置している。

グアムには2つの重要な基地がある。島の北部にあるのがアンダーセン空軍基地で、総延長3200メートルと3400メートルの2つの舗装滑走路、多数の駐機場、格納庫、倉庫、技術サービスがある。空軍基地には米軍第11空軍隷下の第36航空団(ソ連の空軍に相当する)が常駐しているが、この航空団は航空機は有さず、空軍基地を使用する空軍部隊の行動を調整、支援している。

その中には、核兵器を運搬できる戦略爆撃機В-52Н、В-1В、В-2も含まれている。これらの爆撃機はときおり、空軍基地で演習を実施し、米空軍の能力を見せつけている。

またときに爆撃機は日本の航空自衛隊を掩護している。たとえば、2020年10月、第9遠征爆撃飛行隊のВ-1Вが、自衛隊のF-15 を16機と2 F-2を2機掩護した。

グアムは中国、ロシア極東、北朝鮮の核砲撃の起点である。この基地には、ロサンゼルス級原子力潜水艦5隻が常駐している。この潜水艦は巡航ミサイル、トマホークと対艦ミサイルUGM-84ハープーンを搭載している。潜水艦の他にも、この海軍基地には、米艦隊、第3艦隊との通信を維持する通信センターが置かれており、第3艦隊(太平洋東部)、第5艦隊(ペルシャ湾、航海、アラビア海)、第7艦隊(太平洋の西側とインド洋の東側)との通信を維持している。

しかも日本の横須賀基地に司令部が置かれている第7艦隊は、現在、米海軍の中でも最大規模の部隊となっている。この小さな島が、太平洋西部、とりわけ中国沿岸部近くの米艦隊と空軍部隊の行動を保障している。

もちろん、この地域における米国の主な仮想敵は、かなり以前からこれらの基地を弾頭ミサイルで攻撃する計画を立てている中国と北朝鮮である。

不十分なミサイル防衛

グアムのミサイル防衛強化に関する問題は、インド太平洋軍をフィリップ・デービッドソン司令官が率いていたときから持ち上がっていた。2020年7月、デービッドソン海軍大将は、グアムは最大射程距離が4000キロに達する中国の弾道ミサイルDF-26の射程圏内にあるとして問題を提起した。このタイプの移動式の弾道ミサイルは、武漢あるいは洛陽からグアムに攻撃を実施することができる。さらに、中国には空中発射型の巡航ミサイルCJ-10、海上発射型の巡航ミサイルYJ-18がある。海軍大将は、中国のすべての兵器を列挙しなかったが、いま挙げたものだけでも、グアムがかなり危険な状況にあることは十分に理解できる。

そこで、デービッドソン大将は、グアムに高高度防衛ミサイル(THAAD)とパトリオットミサイル防衛システムの追加部隊を配備することに成功した。しかし、彼はそのような防衛は不十分であることを理解していた。そこで、イージス・アショアのグアムへの配備について提起した。しかし、デービッドソン司令官は2021年4月に退官した。

現在、インド・太平洋軍を率いるジョン・アキリーノ海軍大将は、長い間、この問題に注意を向けてこなかった。

というのも、評判の高かった弾道弾迎撃ミサイルシステムTHAADは、非常に限られた戦闘能力しか持っていないからである。THAADが迎撃できる最長射程は200キロで、最大高度は200キロ、つまり弾頭が大気圏に突入する前に迎撃することができる。

レーダーは、1000キロ離れた標的を捉えることができ、これはかなり優れたも。しかし、レーダーは360℃網羅できない。水平60度、垂直90度の範囲のみである。これは、ミサイル攻撃が想定される方向にレーダーを設置する必要があることを意味する。そして、レーダーは、標的を捉えたとき、これを追跡し、迎撃ミサイルを誘導するのだが、システムはこの段階で何も見えない状態となる。

防衛ミサイルシステムは、単独の弾道ミサイルを撃墜することができる。たとえば、2022年1月17日、アラブ首長国連邦に配備されたこのシステムが、アラブ首長国連邦の大規模な石油施設を破壊しようとしていたイエメンのフーシ派の弾道ミサイルを撃墜した。

ただ、グアムはさまざまな方向から攻撃を受ける可能性がある。中国人民解放軍は、094型原子力潜水艦を6隻有しており、それぞれ、弾道ミサイルJL-2(最大射程7200キロ、核弾頭数1?3)を搭載している。しかし、情報によれば、2022年11月、潜水艦には射程9000?10000キロの新型ミサイルJL-3が搭載されたという。このような潜水艦1隻が太平洋の中央に進出し、ミサイル射撃を行えば、東方、北方、あるいは南方からグアムの2つの基地を撃破することができる。北西に向けられたTHAADのレーダーはこれを捉えることすらできない。THAADが迎撃できないDF-17、DF-21、DF-26などの極超音速滑空ミサイル、また弾頭数で島の防衛を突破できる12個の弾頭を搭載可能なDF-41を考慮せずに、である。2020年、これらのすべてのミサイルが中国人民解放軍のミサイル部隊に配備されている。

つまり、防衛ミサイルTHAADの配備は、ミサイル攻撃から島を現実的に防衛するというよりは、自身にとっての安心のためと言える

しかしながら、イージス・アショアは防衛できない

そして、グアムのミサイル防衛が不十分であるという認識は、ついに、インド・太平洋軍の現司令官にも行き着いた。グアムのミサイル防衛システムの新たな構成は、4つの移動式レーダーAN/TPY-6、迎撃ミサイルRIM-161 スタンダード・ミサイル3 ブロック2Aとなった。これは言うまでもなくかなり改善された状態ではある。この改良型のミサイルは最長距離2500キロ、高度1500キロの目標物を撃破することができる。

これまでに明らかになっているところでは、レーダーは360度のパノラマアラウンドビューで、およそ1500キロ先の標的を発見することができる。4つのレーダーで各セクションを網羅して完全に全体を捕捉することができ、島に接近してくる弾道ミサイル、巡航ミサイルを含めたあらゆるミサイルを発見することができる。一方、24セルの弾道ミサイル防衛システム、イージス・アショアは大々的なミサイル攻撃にも対抗するのに十分である。

しかしもちろん、問題もある。レーダーはきわめて優れたも。2013年、レーダーの製造者であるレイセオン社は1つあたり3億ドルのレーダー22台を製造する計画であった。しかし、競争相手であるロッキード社からの圧力により、この発注は一時停止となった。そして米海軍が再び、新型船舶のために、総額32億ドルとなる10台のレーダーを発注したのは2022年3月になってのことである。つまり、グアムのミサイル防衛システムのために4台のレーダーを割り当てるのは難しい。

おそらく、ミサイル防衛の強化プログラムは2029年までを目処としており、この間に、できるだけ多くのレーダーを作っていく計画であると思われる。最初はおそらく1台のレーダーで対処できるミサイル防衛システムが最小限の構成ですら整っていない間、島はイージス・アショアを搭載した駆逐艦でカバーされる。

米軍司令部にとっては悩ましい問題が生じる。それは海上の艦隊を守るのか、重要な基地を守るのかということである。

かつては、海上配備型のイージス・アショアはミサイル攻撃への反撃に十分なものだと考えられていた。しかし現在、米軍司令部は、基地も守るべきだと考えるようになった。もしそうであるなら、ハワイ、沖縄、横須賀も守らなければならない。これらすべての基地がミサイル攻撃を受ける可能性があり、そうなれば米国の海軍、空軍は司令部、通信、基地のインフラを失う可能性がある。

米軍のもっとも高位の将軍や大将の中で、イージス・アショアのレーダーとミサイルをどこに配備するのか—艦上なのか、それとも基地を守るために地上に配備するのか—という議論を始めることになるレーダーとミサイルは、あらゆる場所に配備するのには足りない。とはいえ、議論は無意味なものになるなぜなら、中国人民解放軍のミサイル軍はすでにいま、米国が太平洋西部に配備しているミサイル防衛を突破する能力を有している。

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https://sputniknews.jp/20230428/15816780.html

中国空軍は米国の空母にミサイルを誘導できるか?

2023年4月28日, 07:05

最近、米国防総省の機密文書が流出した。2022年8月9日付のある文書には、中国の偵察無人機「WZ8」の使用について書かれている。この無人機は戦略爆撃機H6から発射されるもので、文書によれば、高度およそ30キロをマッハ3の速度(時速3675キロ)で飛行し、リアルタイムで情報を収集することができるとされる。その後、無人機は基地あるいはその他の空港に戻って着陸するために着陸脚がついている。データによれば、無人機は中国東部戦区の第10爆撃機師団に所属している。

この第10爆撃機師団というのは、中国人民解放軍空軍の主要な爆撃部隊である。2022年11月30日、第10爆撃機師団の第28航空連隊の爆撃機2機が、ロシアのツポレフ95と共に対馬海峡を哨戒飛行した。そんなわけで、新たな無人機の登場は一定の懸念を呼び起こしている。

公表されたすべてが真実ではない

まず思い出さなければならにのは、この話には多くの嘘がある。

1.第一に、機密情報の漏洩によって明らかになった文書に真実が書かれていると信じてはならない。文書の内容は、全面的あるいは部分的に捏造され、何らかの目的のために漏洩に見せかけて公表されたものである可能性も除外できない。

2.第二に、中国のメーカーは爆撃機WZ8の性能について何らかの情報を発信しているものの、すべての真実を明かす義務を負ってはいない。彼らが公表している性能が、仮想敵に虚報を与えるために、実際よりもよく、あるいは悪く改ざんされている可能性もある。

たとえば、WZ8は、ミサイルエンジンYF-50Aを2基有していると言われているが、これは宇宙に打ち上げられた衛星の軌道を修正するために使われている小さなエンジンで、その推力は米国の巡航ミサイルBGM-109トマホークのエンジンの2倍である。

中国の無人機にはエンジンが2基あるため、推力は米製の巡航ミサイルの4倍となる。しかし、トマホークは重量1200キロで、速度は時速880キロに達する。中国のWZ8は重量おおそ5000キロで、時速3675キロまで出せるという。これはにわかには信じ難い。おそらく、エンジンははるかに強力である。

たとえば、米製の巡航ミサイルのエンジンの30倍の推力を持つ第3段用のYF-40である可能性がある。このエンジンが2基あれば実際、マッハ3の速度を達成することができる。敵の偵察部隊に、誤った方向のものを模索させるために、エンジンの指数はどうとでも書ける。

想像するに、WZ8は非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素を推進剤とする2基のエンジンを搭載した航空機である。この推進剤は非常に効果があるが、きわめて毒性の高い燃料である。航空機は爆撃機から時速700?800キロほどの速度で空中発射され、その後、スピードを上げ、高度を上げる。そしてエンジンが切れると、無人機は少しずつ向きを変え、元の基地に帰還する。

このような無人機が2.5キロ飛行しながら、300メートルごとに高度を下げるよう設計されている場合、高度48キロから着陸するのにはおよそ400キロ飛行する。つまりこの航空機は高速で長く飛行することはできない。ミサイルエンジンの比推力はおよそ300秒であるが、WZ8の燃料は2000リットルほどと少ない。そこで、1度速度を上げた後は、飛行場に戻る設計になっている。

正確で絶え間ない偵察

ではなぜこのような航空機が必要なのか。偵察のためである。WZ8は武器を搭載してはいないと思われる。おそらく、開発された目的はそれではない。しかし、150?200キロの爆薬を搭載し、巡航ミサイルにすることは可能である。あり得るのは、WZ8は偵察、そして敵の艦船などのような航行中の目標物に異なるミサイルを誘導することを任務とする。

1. 中国では、航行中の船や空母を攻撃することができる核弾頭搭載可能な弾道ミサイルDF-21Dが開発された。空母に命中させるためには弾頭を誘導しなければならない。これはきわめて困難な課題である。空母は30ノット(時速およそ55キロ)で航行しており、ミサイルが飛来する15分の間に、艦隊は約13キロいずれかの方向に移動する。に命中させるためには、絶え間なく目標を追尾し、宇宙空間で弾頭を弾道修正する必要がある。そのためには、目標物を発見し、それに関するデータを伝えることが必要となる。WZ8はこの課題を遂行できる。

2. 爆撃機Н6も対艦ミサイルを搭載している。もっとも性能のよい射程250?400キロのYJ12は最大マッハ4の速度を出す。目標物に命中させるには、目標物を常にマークし、追跡し、センサーの捕捉範囲で敵の艦船に近づくため、対艦ミサイルの向きを修正しなければならない。

WZ8はこの課題も十分に遂行できる。偵察無人機は、海上の目標物の攻撃に際し、爆撃機H6の可能性を大きく広げる。偵察衛星あるいは早期警戒管制機のデータに応じて、Н6編隊は敵の艦艇のいる場所に接近する。航空機がWZ8を空中発射し、そこからデータを収集し、対艦ミサイル発射の準備を行う。もし命中しなかった場合、あるいは損傷を与えた場合には、基地に戻り、新たな弾頭を備え、もう一度攻撃する。この手法は、コンセプトとしては悪いものではない。航行中の海上の目標物を攻撃する際の問題を解決する。しかし、それが本当にうまくいくかどうかは、実際の戦闘でしか確認することはできない。

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