2023年8月7日月曜日

福島原発 処理水放出は安全?ロシアの学者の見解

https://sputniknews.jp/20230805/16718404.html

2023年8月5日, 16:30

まもなく、福島第一原発の汚染水の段階的な海洋放出が始まる。しかし、IAEA。(国際原子力機関)の承認を受けているとはいえ、この海洋放出は、ロシア、中国をはじめとする一定の国々にその安全性に対する懸念を呼んでいる。この問題について、「スプートニク」はロシア科学アカデミー極東支部太平洋海洋学研究所の副所長を務める地理学准博士のヴャチェスラフ・ロバノフ氏にお話を伺った。

概況

ヴャチェラフ・ロバノフ氏は、沿岸部に位置するほぼすべての原子力発電所。(そして核燃料再処理工場)は人工放射性核種に汚染された水を放出していると指摘し、次のように述べている。

「しかし、放出する前に、予め、規制基準に従った濃度まで浄化するか、希釈している。たとえば、除去が不可能なトリチウムの場合もそうです。つまり、汚染水は浄化されるか、放射性同位体が完全に安全なレベルになる濃度まで薄められている」

福島原発の場合

ヴャチェスラフ・ロバノフ氏は「スプートニク」からの取材に対し、今ある情報によれば、福島第一原発内に貯蔵されている汚染水のトリチウム濃度は700000ベクレル/?であると述べている。

「日本の飲料水の規定濃度は60000ベクレル、ロシアでは7000ベクレルです。つまり、放出されることになっている処理水は、大きな問題が起こらないようにするため、海水で1対11.5、あるいは1対100の比率で希釈される必要があります。海洋放出のプロセスは、ロシアも中国も加盟している、権威のある国際的な機関であるIAEAが監視します。ですから、IAEAがその許可を出したということは、この権威ある組織の加盟国の代表ともそれについて合意しているということです。

しかしながら、こうした問題は現在、政治と密接に関係していることから、研究者らにとって、この問題について十分に話し合うのは困難な状況です。しかし、学術的な見地から言えば、もちろん、日本の東部からクリル諸島にかけての海洋の放射能汚染のレベルをモニタリングする必要はあるでしょう」

ロバノフ氏はさらに、ロシア側は、近く、ロシア科学アカデミー極東支部太平洋海洋学研究所の調査の枠内で、学術研究船「アカデミク・オパリン」を使いモニタリングを行う予定だと明らかにした。調査は8月8日、日本海とオホーツク海、クリル諸島およびカムチャツカ周辺海域でスタートする。調査完了後、ロバノフ氏は、その結果について「スプートニク」に報告してくれることになっている。

過去の調査

これより前、ロシアは2011年の福島第一原発事故直後にも同様の調査を行ったとロバノフ氏は明かしている。

「そのときは、事故の2週間後、ウラジオストクの上空でも、ピョートル大帝湾の水中でも、ヨードとセシウムの放射性同位体の濃度の大きな上昇が確認されました。つまり、地球上の大気が移動したということです。放射性核種の一部は川から日本海へと流れ込みました。しかし、大部分は海洋の流れに乗って、東へと移動しました。もっとも近いロシアの海域は、クリル諸島周辺です。

数学的モデルを使って、放射性核種を豊富に含む水の予測拡散パターンを計算したところ、放射性核種は水の渦に集中していて、これらの水は、冬に、海面の水と海底の層が混ざり合い、海水の流れによって移動することが分かりました。こうした水の渦は定期的に日本からクリル諸島周辺へと移動しており、放出された汚染水を運ぶ可能性があります」

そこで、2012年にロシアはこの予測を確認するための特別な調査が行われたとロバノフ氏は付け加えている。

「すると、実際、この日本東部の水の渦の中には、トリチウムとセシウム137が高濃度となっているのが観測されましたが、クリル諸島海域、オホーツク海、日本海周辺では、高濃度の放射性核種は確認されませんでした。しかしそのときは、水の渦はすぐに壊れ、セシウムを豊富に含んだ水は海洋循環によって米国沿岸部に広がり、そこからアラスカ海流とアリューシャン海流に乗って北東に向かい、再びロシアの沿岸部に戻ってきました。しかしもちろん、放射能核種の濃度はきわめて低くなり、いかなる危険もありません」

ロバノフ氏は、また、金沢大学の日本の研究者らは毎年、北海道の沖合でモニタリングを行なっているとも指摘している。

「高濃度のセシウム137が2020年、2021年に確認されました。これは巨大な海洋循環で移動した福島の水です。2017年には日本海でもそのような水の動きが確認されましたが、それは南回りで移動したものでした。おそらくそれは、漏れか、不法な放出ですが、法が厳しく遵守されている日本では不法な放出というものは考えにくい。」

しかし、絶対にないとは言えないかぎり、定期的な海水の調査を行うことが必要だとロバノフ氏は締めくくっている。

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