2017年6月25日日曜日

「中央銀行がデフレと戦うというのは間違いだ。なぜか?」抄訳と思索

Four Reasons Central Banks Are Wrong To Fight Deflation
Jun 22, 2017 6:40 PM
Authored by Jorg Guido Hulsmann via The Mises Institute,

デフレというのは物価が下がることである。通貨供給量が減ることとか、インフレ率が下がること、という解釈もあるが、じつはデフレがあるからこそ「通貨供給量を人為的に増大させることは正当化できない」ということなのだ。

デフレは危険、と通貨政策当局は言う。通貨当局がデフレと戦う、という場合はつぎのいずれかが根拠とされる。
1. 財の蓄積、ひいては生活水準に悪影響がある(と歴史は物語るという。)
2. デフレになると物価がさらに下がることを期待して人々は買い控えをするからである。
3. デフレになると昔の借金を返せなくなる。
4. 銀行が困るし、そうなると資金が流れにくくなる。
5. デフレで価格が動かなくなると雇用が減る。
6. 金利はゼロより低くしようがないから、雇用にも生産にも刺激策がとれない。

じつはどれにも嘘が含まれている。
第1に、デフレは財の蓄積に悪影響などない。物価が下がっても成長率には関係がない。
第2の点について、いきなりデフレになったときは確かにそうなのだが、いずれ誰もが必要なものは買わざるを得ない。腹が減ったら食わざるを得ないのだから、消費活動が停止することはありえない。デフレのせいで停滞する消費は無視できる程度だし、売られなかった財は他のより有効な用途に使われるだけだ。
第3の指摘は正しい。デフレ前の高い値段で取り決めた借金を返せなくなって、破産が増える。企業経営の立場からすれば困ったことなのだが、しかし社会全体で見れば資源は保全される。ここは大事なポイントなのだが、デフレで破壊されるのは財の貨幣換算された価値だけであって、ゆえに所有者は破産したりするのだが、財そのものは保全され、つぎの所有者の手に渡ることになる。だからデフレで社会全体の生産活動が停滞することはない。
第4に、デフレで銀行が困るというのはたしかにそうだ。借金を返してもらえなくなるし、企業倒産が増えたら銀行の流動性が危なくなる。ただし上の議論と同じく、倒産する銀行は大変だろうけれど社会全体として困ることはない。そもそも銀行は資源を創造しない。銀行は既存の資源をより有効に使う人のところに金を貸すだけだ。銀行が金を貸さなくても資源に影響はない。ただそれを使う人が入れ替わるだけだ。

こう考えると、金融当局があれこれ言うほどデフレはひどいことではない。デフレに大きな影響を受けるのは通貨供給を増やしつづけてきた中央銀行だ。デフレになると保有残高の少ない準備銀行や借金まみれの政府や企業や消費者の資産が減るのだが、つまりそれは資源が新しい手に渡るだけのことだ。
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抄訳以上。以下は思索。

国家がやりたい放題やって大赤字をつくり、それを救済するためにインフレが必要となり、中央銀行(=国家)が紙幣を増刷する。
国家も企業も、いままでの人口増加とプラスの経済成長を当たり前のこととして運営や制度設計をやってきた。人口ピークを過ぎれば、企業の生産したモノもサービスも製造設備が多すぎるので当然ながら価格が下がる。それは政府の制度運営も、役人の数も同じことで、支出が多すぎる。しかし企業も政府も規模を縮小するには時間が必要。
しかし今のところ、中央政府はインフレ目標を設定して紙幣を増刷し、ゼロ金利で株式バブルを演出。地方政府は人口増加をめざして子育て支援や合コンを主催、企業は生産と販売を発展途上国に求め転戦。
企業が生産と販売を発展途上国に求めたので国内の雇用は縮小。労働者の4割が非正規という惨状で高いモノは売れない。でも企業は利益を追求するので、企業は内部に対して奴隷労働を強制し、外部は「穏やかなインフレ」という嘘を言いわけに、瓶もパッケージも箱もどんどん小さくし、形だけは食品だけど、ケミカル(増量剤や増粘材や香料)とカロリー(油脂と果糖)満載のバケモノが横行する社会になった。
原油の需要が激減していることからもわかるように、これは日本だけではなく欧米でも共通の現象。

告白すると、じつは1929年の大恐慌がなぜ起きたのか、そのメカニズムについて理解していない。永遠の繁栄といわれたアメリカでモノがつくられすぎたのならデフレになるはず。しかし結果はハイパーインフレ。「株価暴落がきっかけ」と言われても、いまの株式市場にくらべれば規模は小さく、庶民が全財産をつぎこむようなプレイヤーであったわけでもない。けっきょく、株価が暴落して信用が収縮した(銀行が金をまわさなくなった)のと、デフレでモノが売れないので企業が倒産し、多くの生産と雇用が失われたということか?それなら今の日本と同じで、デフレが進行するはず。生産と雇用は途上国に転戦しているんだから。そしてデフレをインフレに転化するには、膨大な通貨が供給されなければならないはず。

いまの日銀も連銀も欧州中銀もおなじように膨大な通貨を供給しているのだが、政府の嘘はべつとしてインフレになっている様子は見受けられない。

上の文章のとっぱしで唐突に「通貨供給量を人為的に増大させることは正当化できない」と出てくるのだが、ここまで考えるとそれが理解できる。
 中央政府は膨大な借金をインフレで解消しようとして(じっさいのはなしインフレでしか解消できないし、するつもりもないだろうから) 通貨供給量を増大させる。株価(というのは民間の経済活動を推し量る指標のひとつにすぎないのだが、それが聖典視され、株価をあげることが金科玉条にされてしまった)を高めるためにゼロ金利政策を行う。

おそらく、カイザーリポートが言うようにリーマンショックで信用が収縮し、金融機関を救済するためにゼロ金利政策をおこない、たまたまそれが株価を上げることにつながったので、麻薬のようにゼロ金利をやめれなくなったということ。

ゼロ金利なんてやらずに、徳政令を出したらよかったのかもしれない。国家は学資ローンですら待ってくれない。アベノミクスは完全に失敗、と我が輩が情報蒐集しているメディアでは定説になっているのだが、総務省と電通に支配されたわが国メディアはそれを紹介しない。

「創造的破壊」が近いのか?それとも天変地夭が先なのか?

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