2015年5月30日土曜日

PDMのおはなし その2 必要条件と十分条件

マトリックスというのは、担当者とか関係者に考えることを強いるツールだと我が輩は考えています。雑務で忙しい日々、ついつい考えることをサボり見逃してしまうような細部に悪魔も神も潜んでいる、というわけです。

さてひとつ前の投稿でPDMの欠点にふたつあると書きました。
1. ほんとうにそれでいいのかという検証プロセスが含まれていない。
2. リソースのインプットが無制限になりがち。

ここではリソース(事業運営資源)のインプット(投入)について考えます。
プロジェクトに投入できる資源(予算、人員、資機材、時間)は限られているので、目的を達成するためになにが最低限必要なのか精査することを担当者は求められます。つまり必要条件と十分条件をたて分けて考える必要があります。PDMというマトリックスには、それをたてわける検証プロセスがありません。プロセスがないということは、なにが必要条件でなにが十分条件なのか担当者に考えることを強いる枠組みがないということです。

たとえばソンミ村の例では、プロジェクト目標を達成するためにベトコンを見つけて殺すことが必要=必要条件だったと考えられます。ウィキペディアによると掃討作戦決行の前夜、C中隊指揮官のアーネスト・メディナ大尉が主張し決定された既定事項、つまり村民とベトコンを判別するのが面倒だったので、ぜんぶ殺してしまえばいい=十分条件が採択されたわけです。その結果、必要でなかったはずの資源まで投入され、そしてメディアが騒いだのでこれをきっかけに母国で反戦運動が活発化するという(プロジェクトにとってはマイナスの、おほぼコンティンジェンシーといっていいレベルn)波及効果を生んでしまいました。必要条件と十分条件を精査することがいかに大事か、という好例です。

PDMを見たとき、我が輩はそれをBSC(バランスト・スコア・カード)に転記するという作業をルーティーンにしています。BSCは財務、顧客、内部プロセス、学びと成長という4つの観点からプロジェクト戦略を検証するツールですが、PDMに書かれてある要素をそこに転記する作業を通じて、なにが必要条件でなにが十分条件なのかを考えさせられることになります。そしてPDMを書いた担当者にあれこれ尋ねつつ、なぜPDMがそうなったのかを検証します。

ベトナム戦争でアメリカ軍は膨大なリソースを投入しながら、ついに勝つことができず、しかし波及効果としてモンサントという化学企業をグローバルに環境と農業を破壊するお化け企業に育ててしまいました。リソース投入量を制限する枠組みをもたないPDM、というのは納入業者にとってとても美味しいマトリックスです。

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