身から出た錆。バイデンのSPR放出が原油価格抑制につながらない理由
バイデン米大統領は3月31日、高騰するガソリン価格を引き下げるため、米国の緊急原油備蓄から前例のない放出を開始した。これに先立ち、米国大統領はロシアに石油禁輸を課したが、湾岸産油国に石油採掘を強化するよう説得することはできなかった。
国際石油経済学者でESCP欧州ビジネススクール(ロンドン)のエネルギー経済学客員教授であるマムドゥ・G・サラメ博士いわく、
「バイデン米大統領が2021年の最後の四半期に、米国の戦略石油備蓄(SPR)から5000万バレルの原油を放出すると発表したのに、世界の石油市場や石油価格は事実上無視した。」
「その後、国際エネルギー機関(IEA)が今年1月にOECD諸国の石油在庫から6000万バレルの放出を発表したが、世界の石油市場は全く無関心だった...米国のSPRから再び石油を放出することは、価格への影響において以前の放出よりも良い結果をもたらさないだろうが、少なくとも市場の逼迫をわずかに緩和するのに役立つだろう。」
3月31日に発表されたファクトシートによると、バイデン政権は1日100万バレルx6カ月=合計約1億8000万バレルの放出を予定している。オックスフォード大学のグローバルエネルギー学者であるジャスティン・ダーギン氏によれば、今度の放出はSPRの46年の歴史の中で最大の石油放出である。にもかかわらず、「構造的には世界の一日消費量の約1%、米国の一日消費量の5%に相当するだけである。」
「バイデン政権は、SPRを以前とは違った形で活用している。」
「そもそもSPRは供給の途絶や製油所の停止を緩和する手段として戦略的に配置されていたが、バイデン政権は価格をコントロールするために使おうとしている。」
現在、SPRには5億6830万バレルが貯蔵されている。
石油会社は、長期的解決策ではないと見ている。
さらに、バイデン大統領は、石油業界にもっと石油を汲み上げさせるために、連邦政府の借地権が使われなくなったら、石油掘削業者に罰金を科すことを計画しているという。
Bloombergによれば、バイデン氏の「使うか取られるかだけの政策」は、バイデン氏と米国の石油採掘業者との間の溝を広げた。シェールガス開発業者たちは、「生産者への手数料を増やせばエネルギー価格が下がる?馬鹿だねー。」と公言している。サラメいわく、
「シェールの損益分岐点をはるかに超える原油価格の上昇にもかかわらず、シェールオイル生産者は資本規制を口実に生産量を上げることができないでいる」と彼は言う。「シェールの坑井生産性は低下し、生産コストが上昇している。2022年にシェールオイルの生産量の増加は、2021年時点での日量平均1100万バレル(mbd)ではなく、最大20万〜30万バレル(b/d)となるであろう。」
+++++
今日の時点(2022年4月7日)で日本政府が公表した放出予定量は1500万バレル。市場に影響を与える量ではなさそうだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿
登録 コメントの投稿 [Atom]
<< ホーム