ウクライナ情勢:ロシア軍の軍事面での評価はなぜ180度違うのか その2
さてまじめなはなし。ウクライナにおけるロシア軍の動静分析についてまったく異なるふたつの見方、ロシア軍が優勢/劣勢がある。
https://tomluongo.me/2022/03/31/podcast-episode-102-dexter-white-stage-2-ukraine-wwiii/
このポッドキャストを聞いたことがきっかけとなって、ポッドキャストの内容には直接関係はないけれど、なぜ分析結果が正反対なのか、その理由が整理できたような気がする。
1. 出発点の違い:この戦争が2022年2月に開始されたロシアによる侵攻なのか、2014年に始まるウクライナによるドンバス攻撃に対する反撃なのか。それによってそれぞれの軍隊の兵隊の士気の評価に違いが生じる。
2. それぞれの軍の兵隊の士気に対する見解:「2月にはじまるロシアによる一方的な侵攻」「プーチンの焦りによる拙速な作戦」という見方では、ロシア軍は寄せ集めで士気も命令指揮系統レベルも低い、となる。いっぽう2014年派はロシア軍の練度が高いという見方になる。
3. ロシア軍の展開スピードが予想されていたよりもずっと遅いことについて:
ロシア軍が一般人民を殺戮し、インフラを破壊しつつ進んでいるという(西側メディア寄りの)見方では、スピードが遅いのは劣勢という分析につながる。
いっぽうネオナチ軍に人質にされた一般人を傷つけることをロシア軍が避け、インフラを保護しつつ進軍しているという見方であれば、展開スピードの遅さはほとんど問題にされない。
4. 戦略:伝統的な戦略思考では、まず制空権を掌握する -> 主要空港に空挺部隊を送り込む -> 空港を制圧する -> デポをつくる -> 輸送機で装備と兵員を送り込む -> 首都を包囲する、となる。
伝統的というか教科書的な戦略思考でロシア軍の動きを分析すると、ウクライナ軍の抵抗によりロシア軍が困難な状況に置かれているという分析になる。
しかるに、ここで教科書的考え方に矛盾が生じないか?
ロシア軍が一般人とインフラを犠牲にするのであれば、第二次世界大戦ででアメリカ軍が日本に対して行ったような、あるいはおなじくアメリカ軍がドイツのドレスデンでおこなったような絨毯爆撃ですべてをより簡単に破壊することができる。あるいはミサイルで同様の効果を出すことができる。西側によればインフラを破壊しまくり、一般人民を殺傷しまくっているロシア軍がなぜそんな簡単かつコスパのいい方法を採用しないのだろう?そしてなぜ誰もそれを指摘しないのだろう?
キエフからロシア側の最寄りのまちクルスクまで500km足らず。これは東京から岩手県花巻市までの距離でしかない。鉄道があれば軍隊装備の輸送には便利だが、必ずしもそれがなければどうしようもないというわけではない。ウクライナからの避難民輸送にロシアは装甲鉄道車両を出してきたが、それもまたひとつのオプションという程度である。標記のポッドキャストでデクスター・ホワイトさんは鉄道の軌道幅について蘊蓄を傾けているが、現代はクラウゼヴィッツの時代ではない。鉄道の軌道幅だけで軍隊が戦略を決めるようなことはないと思う。
我輩はスコット・ホートンの反戦ラジオのポッドキャストを聞いている。ゲストとして出てくる軍人さんたちに錚々たるメンバーがいて、じっさいについこないだの戦争でマップにもとづいて戦略を策定し、実施してきたような人もいる。その人たちがそろって、「ウクライナ軍はおしまい。ロシアの勝ち。」という前提で話を展開する。それを聞いていて、毎日はいってくるJBPressメールの見出しだけ見て、「なんでこうなるんやろ?」と疑問に思っていたのである。
それにしても王立なんたら研究所のペーパーの無慙さよ。軍人さんたちが懸垂とか腕立て伏せとかさせられ、現場では泥水浴びて疲労困憊しているのに、奥の院(シンクタンク)では十二単衣で和歌を詠んでいるような対比である。
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