米国の石油・ガス輸出は国内価格上昇を助長している
https://www.zerohedge.com/commodities/us-oil-and-gas-exports-are-fueling-higher-domestic-prices
木曜日、6月23、2022 - 10:39 pm
著者:Kurt Cobb via OilPrice.com
過去10年間、米国の石油・ガス産業は、シェール革命の恩恵を最大限に受けることができるよう、輸出を制限していた連邦政府の規制を解除することに成功した。
今日、そのことが、米国が国内でガソリン、ディーゼル、天然ガスの価格をコントロールできない重要な理由の1つとなっている。
ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う経済不安で、自給自足を求める声が増幅されそうだ。
米国の石油・天然ガス産業は、輸出を制限していた連邦政府の規制から、この10年でようやく解放された。表向きの理由は、シェール革命と呼ばれる油田・ガス田の拡大により、米国には輸出用の石油・ガスが豊富にあるというものであった。
しかし、その本当の理由は、石油・ガス業界が、アメリカの他のほとんどの産業がすでに持っているものを欲しがったからである。それは「世界中のどこの国でも、一番高い値段で売れる権利」である。
このため、米国内の価格が世界価格に匹敵するほど上昇すると、米国の消費者が痛みを感じるようになった。エネルギー価格は投票する人すべてに影響を与えるので、常に政治的に重要な意味を持つ。
だから、米国のレギュラーガソリン価格が1ガロン5ドル以上になって、ジョー・バイデン大統領が米国の石油会社に対して、石油精製品の増産が必要だと言ったのは当然である。これに対して石油会社側は、製油所の稼働率はほぼ最大であり、短期的にできることは多くないと回答した。
ガソリン、ディーゼル、ヒーティングオイルなどの石油精製品の輸出を認めるのが、米国の長年の方針であることは、言うまでもない。国内需要を大幅に上回る精製能力を持つため、ガソリンは日量約100万バレル、軽油・暖房油は日量約140万バレル(6月10日までの週)と、かなりの量の精製品を輸出している。もし米国が国内の価格を下げるためにこうした輸出を抑制すれば、米国は自由貿易と自由市場という公約に違反することになり、供給を減らして海外の顧客の価格を引き上げることになる。
米国の天然ガス輸出の急増は、米国内の天然ガス供給を圧迫する。2年前に1,000立方フィート(mcf)あたり2ドル未満だった価格は、今日では7ドル程度にまで上昇している。(そのため、住宅や工業用暖房、天然ガスを原料とするプラスチックや天然ガス由来の窒素肥料などの化学製品のコストが急騰している。
液化天然ガス(LNG)輸出のブームは、米国の天然ガス生産の約11%を海外に送り出している(2022年1月から3月までの出荷量ベース)。LNGの輸出量は、2011年から2021年にかけて50倍にもなっている。(米国エネルギー情報局による数字)。
世界の自由貿易主義者たちは、すべての商品は最高入札者の手に渡り、世界中で自由に流通すべきであると主張してきた。また、政府の政策は、ある産業を他の産業より優遇したり、補助金を出したりすべきではないという。1992年、ブッシュ大統領の下でホワイトハウス経済諮問委員会の委員長を務めていたマイケル・ボスキンが、「米国は半導体の国産化を奨励する政策をとるべきか」と問われ、こう答えたと言われている。彼は、「ポテトチップ。コンピューターチップ。どっちもチップ。」と言ったと伝えられている。
今日、この国は全く同じ問題を話し合っている。半導体の産業政策は必要なのか?石油の輸出を抑えるべきか?天然ガス輸出の議論も近いうちに勃発しそうだ。
ポテトチップスを作る国か、コンピューターチップを作る国かは、本当に重要な問題なのだ。ロシアとウクライナの紛争は、世界貿易システムの突然の崩壊と再編をもたらし、世界各国は食料、燃料、そして半導体を含む重要な工業製品の不足に悩まされている。
いわゆる自由貿易よりも、自給自足と輸出可能な商品の国内価格が重要であるという判断が強まれば、政府が産業政策に関与し、輸出の可否を決定することの是非をめぐって、今後、多くの論争が起こることが予想される。
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