ロシア産ゴールドの受け皿となるアラブ首長国連邦
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2023年05月31日付 al-Quds al-Arabi 紙
アラブ首長国連邦がロシア産金流入に向けた主要な門戸となる
【ロンドン:ロイター通信】
ロシア税関の記録によると、ウクライナにおける戦争を要因とした西側の制裁によってロシアにとっての伝統的な輸出経路が断たれて以来、ロシア産金にとってアラブ首長国連邦(UAE)が主要な貿易拠点となっている。
ウクライナ戦争の開始以来の1年間に出荷された約1000回の金出荷の詳細を含むこの記録は、UAEが、2021年にはわずか1.3トンであった輸出量から増加した75.7トン(43億ドル相当)のロシア産金を輸入したことを示している。
UAEに次ぐ大口の輸入国としては中国とトルコが続き、両国は2022年2月24日から2023年3月3日にかけて約20トンを輸入した。この期間の税関統計が明らかにしているように、これら3国が合わせて当該時期におけるロシア産金の99.8%を輸入した。
ウクライナ戦闘が始まってからの数日間、各国の多くの銀行や運搬サービスを提供する諸企業や貴金属鉱物の精錬サービスの諸企業は、金の貯蔵・取引の中心として通常ロンドンに輸送されていたロシア産金の取り扱いを控え、ロンドン貴金属市場協会は2022年3月7日よりロシア産金の取引を禁止した。さらに同年8月末には英国、EU、スイス、米国、カナダ、日本がロシア産の金輸入を禁止した。しかし輸出統計によるとロシアの金生産者らはすぐに、UAEやトルコや中国などモスクワに制裁を科していない国々に新たな市場を見出した。
経済開発協力機構の金源専門家のルイス・マーシャル氏によると、ロシア産の金は溶解・再鋳造されたうえで、原産国や源を隠しながら欧州や米国での市場を見つけることが可能だという。
さらに同氏は続けて、「ロシア産の金がやって来れば、これを現地の鋳造所で再鋳造し、現地の銀行や貿易業者を通じて原産国を特定したうえで、市場で売却することが可能。ここにリスクが潜んでいるのである…。このために、制裁規則に違反しないことを望む購入者らにとって、デューディリジェンスの手続きが不可欠」。
UAE金地金市場委員会は、同国が違法商品や資金洗浄のほか、制裁対象団体との取引に関する取り締まりを、明確かつ厳格な管理プロセスを通じて行っていると述べた。
さらに委員会はUAEが、国連が決定したような現行の国際規範に準拠しつつ、国際的な取引相手との開かれた公正な取引を継続するつもりであると付言した。
米国政府はロシアを排除しようとする試みにおいて、UAEとトルコを含む国々に、仮に自国の制裁対象主体との取引を継続する場合、G7各国の市場を失う可能性があると警告した。
しかしロイター通信が入手した情報では、この2か国が米国の制裁の対象であるかどうかについては明言されていない。
米国財務省は、傘下の外国資産管理局が制裁を適用しているにもかかわらず、ロイター通信のコメント要請に対して反応しなかった。
ロイター通信が貿易業者から得た通関統計によると、2022年2月24日から今年の3月3日の間にロシアから輸出された金の総額は116.3トンであった。コンサルティング企業のメタル・フォーカスが、ロシアは2022年中に325トンの金を産出したと見積もっているにもかかわらず、である。
ロシアが産出した金の残りはおそらく国内にあるか、または統計記録に含まれない取引を通じて輸出された。一方ロイター通信は(産出額の)統計に含まれるロシア産の金の輸出割合を特定できなかった。
トルコ財務省もコメント要請に対して回答しなかった。金輸出に関して、ロシアの政府、通関当局および中央銀行もコメント要請に対して回答しなかった。
ロンドン市場はロシアに依存していないため、ロシア産金のロンドン以外の場所への移行は大きな打撃とはならない。しかし英国貿易統計によると2021年、ロシア産金はロンドンの総金輸入額のうち29%を占めた。一方2018年には、これはわずか2%であった。
UAEといえば、長きにわたって繁栄している金セクターを有している。通関統計によると、同国は2016年から2012の間に、毎年平均750トンの純金を輸入していた。つまり、ロシアの記録に記載されている貨物は、総供給量のわずか10%を占めるにすぎなかった。
さらにUAEは金地金や貴金属の大きな輸出国である。
UAEにロシア産金を大量に輸出したある企業のマネージャーがロイター通信に語ったところによると、ロシアの企業はUAEで金地金を世界標準価格より約1%安い価格で販売しており、それが取引を誘引しているという。
このマネージャーは匿名を条件に、彼の会社がUAEに輸送している金の大部分は金属精製所および精錬所を目的地としたもので、そこで溶解され再鋳造されることを明かした。
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