マイケル・ハドソン:レンティア資本主義と成長幻想
https://michael-hudson.com/2026/03/rentier-capitalism-and-the-illusion-of-growth/
2026年3月7日
(ハドソン円卓会議・パトロン支援者向け座談会の書き起こし)
カール・フィッツジェラルド(司会): ハドソン円卓会議へようこそ。18年にわたって様々な形式でインタビューを続けてきたけど、今回も2025年を振り返っての締めくくりや。マイケル、2025年の決定的なトレンドは何やった?
マイケル・ハドソン: まずヨーロッパが崩壊しつつあるということやな。フィナンシャル・タイムズが「ヨーロッパはアメリカから離れへんと、トランプは要求をどんどん釣り上げ続けるだけや。ヨーロッパは自分たちの輸入を武器化せーへん貿易相手国を見つけなあかん」と書いてたんや。これはFTが書いたことで、私が言ってるわけやないで。
ウォール・ストリート・ジャーナルにはドイツの電力価格が1キロワット時46セントで、アメリカの16セント・カナダの12セントと比べてどれだけ高いかという話があったんや。WSJは「これは全部ヨーロッパが脱炭素経済と風力・太陽光発電に賭けた結果や」と書いてたけど、ロシアとの貿易をやめたせいで電力が高くなってるという事実には一言も触れてへんかった。全部アメリカが石油貿易を支配し続けようとする戦略の一環なんや。アメリカはベネズエラの石油を自発的にせよ強制的にせよ確保しようとしてるし、イラクとシリアの石油もコントロールしようとしとる。要するに、アメリカの外交政策に従わへん国の電気と暖房を消せるようにしようとしてるんや。
アメリカの対外政策がいかに露骨に攻撃的になり、制裁をかけた相手国よりもアメリカ自身の経済にとって自滅的かということが大きなニュースやな。ヨーロッパだけは例外で、ロシアとの戦争をエスカレートさせようとするという死に急ぎの意志があるみたいやけど。アメリカはウクライナ戦争から撤退して、以前は無償で与えてた武器をヨーロッパに売ることを望んどる。NATOの指導者の一人が「2027年までにロシアと戦争するつもりや」と言うたら、プーチンが「1?2日で終わる。48時間後には交渉相手がいなくなるやろ」と返したんや。
プーチンはウクライナと戦うのとヨーロッパと戦うのは違うと説明してるで。ウクライナはロシア語話者が多くてロシアの一部になったから壊したくなかったけど、ドイツ・フランス・イギリス・オランダ・スカンジナビア・バルト諸国に対してはそんな感情はないということや。
カール: 国内政治面では、独立した統計データへの攻撃、労働統計局長の解雇、新しいFRB議長の指名が気になります。
ハドソン: どうやらトランプは忠実な人物を任命して金利を下げさせようとしてるみたいやな。共和党の減税が財政赤字と債務を膨らませてて、金利を下げへんと利子の返済コストが社会支出・経済補助金その他あらゆる予算を食い潰してしまうからや。
WSJにアーサー・ラッファーが「トランプの関税で物価が上がった分を労働者が払えるようにする方法のひとつは、給与税の天引きを減らすことや」というオピニオンを書いてたんや。でもそれをやったら議会が「社会保障が破綻した。廃止か民営化するしかない」と言えるようになるんやで。
現実には給与から天引きされた金は社会保障の支払いのために本当に貯蓄されてるわけやない。単に税負担を労働者に移すための仕組みなんや。フランクリン・ルーズベルトが「これで社会保障が政治的に受け入れやすくなる」と思って導入した神話が、今や社会保障を大幅削減するか民営化するかの口実になろうとしてるんやで。
カール: 38兆ドルの米国債は返済されることがあるんですか?トランプが債務帳消しをやる可能性は?
ハドソン: 債務帳消しはないやろな。政府の国債はあなたのポケットにある紙幣と同じ種類の債務なんや。誰も10ドル・20ドル・100ドル紙幣が返済されるとは思ってへんやろ。そんなことしたら紙幣がなくなってしまうからな。政府債務も同じや。財務省に行って「この20ドル紙幣を返済してくれ」と言えば、10ドル紙幣を2枚くれるだけや。金や銀は返ってこーへん。
トランプの「解決策」のひとつは暗号通貨やな。人々が暗号通貨を買い、ドルに連動した暗号資産を保有する。でも誰が4%の利子が付く国債の代わりに利子のない暗号通貨を買うんや?暗号通貨会社に入ってきたカネが米国債に投資されて、その利子は全部スポンサー企業の手に渡るだけやで。誰がこれをやるかというと、クレプトクラット(盗賊政治家)、ゼレンスキーのようなウクライナのギャング、麻薬密売人、犯罪者やな。
アメリカは1960年代にオフショアバンキングセンターを開発して犯罪資本を引き付けることでベトナム戦争の軍事費を支えようとしたんや。今は暗号通貨という新しい「ホットマネー」を使って財政赤字を賄おうとしてる。これは財政的にも政治的にも不安定さを増すばかりやで。
カール: 欠陥だらけの税制と金融システム、経済データの操作。市場はなぜまだ成長できると信じているんですか?
ハドソン: 大きな理由はひとつ。代替手段がないということや。アメリカはBRICSと脱ドル化を脅威と見てるけど、ロシア・中国・イランを孤立させるためにやってきたことは全部、これらの国にとって保護関税みたいなもんやったんや。ロシアから農業を制裁したら、ロシアは自前のチーズ製造と農業を発展させて、今や巨大な小麦輸出国になっとる。アメリカが他国を罰しようとした反応のほとんどはブーメランになってアメリカ経済自身を傷つけてる。アメリカは自滅しつつあって、ヨーロッパも独自の形で自滅しつつある。それが世界を二つの貿易・金融ブロックに分裂させる触媒になっとるんや。
(参加者ミシェル・ロミンとの対話)
ミシェル: ペペ・エスコバルが資本がロシアに流入してるという話をしてました。
ハドソン: ロシアはドルを必要としてへんのや。ルーブルで労働者を雇って物を買えばいい。中国もドルを必要としてへん。入ってきたものは全部金の形で買い取っとる。
私はロシアの中央銀行が18?19%という金利を設定してることに全然賛成できへんのや。これは狂気の沙汰やと思う。彼らにはMMT(現代貨幣理論)が本当に必要や。もしまだ旅行できるなら、ロシアにマルクス主義か少なくともMMTを持っていこうとするやろな。
脱ドル化や金融化された経済への適応を試みてる他の国々も、お金とは何か・お金と信用の違い・生産的投資と単なる金融投資の違いについて明確な理解を持ってへんのや。そしてそれは価格と本質的なコスト価値を区別する価値理論がないからやで。
地代(レント)とはコスト価値を超える市場価格の超過分のことで、それが私の研究の核心なんや。西洋で「成長」とされてるものの全ては、ただの移転支払い、つまり金融手数料・家賃・独占地代・天然資源地代への支払いに過ぎへん。これは実際の生産やない。ジョン・スチュアート・ミルが言うように、地代受取人たちが「眠りながら稼ぐ」不労所得なんや。
(参加者ジョン・チャドウィックとの対話)
チャドウィック: カナダの第三党NDPについて。
ハドソン: 1970年代にカナダで本当に苦労したんや。枢密院が私を呼んで政府のシンクタンクを立ち上げ、私を財政顧問にして統計機関を設立しようとした。でも銀行からの反発がひどくて、カトリックの神父が「この道はガス室に続く」とまで言い出したんや。スコシアバンクのような最も腐敗した銀行から特に反発が強かった。結局実現しなかったんや。
ハイパーインフレについて: ハイパーインフレは起きへんやろな。ハイパーインフレは外国為替市場で起きる現象で、ドイツみたいに対外債務を支払う時に通貨を大量発行する時に起きるんや。アメリカやカナダや他の西側諸国ではそれは起きへん。むしろ逆や。このカネの創造は全部債務創造やから、デフレ的なんや。問題はアメリカとカナダが直面してるのはデフレ、特に債務デフレやで。
AIバブルについても一言。AIとは呼びたくないな。「非人間的知性」とか「合成相関知性」とか呼んだ方がええんちゃうか。本当の知能やないんやから。AIの「利点」はひとつ、ガベージ・イン・ガベージ・アウトや。自動分析システムをコントロールしてゴミ情報で満たすことができるなら、望まない思想を全部検閲できるんや。AIをコントロールしてる人たちは全体のためのオーウェル的な論理を作り出すやろな。
(参加者キンバリー・ミムスとの対話:ユニバーサル・ベーシック・インカム)
ミムス: シカゴでのUBI実験が話題になっています。AI時代に雇用が減る中でどう生き残るか。UBIに何か肯定的な見方はありますか?
ハドソン: カンザスシティのグループはUBIを推進してるけど、議会が許すはずがないな。共和党も民主党も「福祉や」として反対するやろ。
リカードもマルクスも同じ問題を議論してたんや。リカードは力織機がイギリスの労働者を失業させると言い、マルクスは「確かに織物工は減るけど、今度は機械や力織機を作る労働力が必要になる」と指摘したんや。でもAIの場合はそれが当てはまるかどうかわからへんな。シリコンバレーの人々の右寄りの政治観を共有しないと、このシステムの構造化に関われへんから、非常に集権化されたイデオロギー的思想統制システムになってしまうんやで。
ニューヨークやアメリカの大都市では経済が貧しくなるにつれて出生率が下がっとるのが独特な現象や。過去75年で女性が労働力に加わり、子どもを持つには誰かに世話をしてもらわなあかんけど、それが払えへんからや。マムダニが言う「市が集団的に保育を提供する」というのは正しいと思う。それを不動産課税で賄おうとしてるわけやけど、不動産利権が市を支配してるから実現できるかどうかやな。
(参加者ハミダットとの対話:スーパー・インペリアリズムと暗号通貨)
ハミダット: ミランの論文を読むと、ドル安にしながらステーブルコインでドル需要を維持しようとしてるように見えます。FRBの機能がさらに民営化される方向では?
ハドソン: トランプはドルを下げることで輸出競争力を高めたいと考えてるかもしれへんけど、アメリカは輸出するものがそんなにないんや。そもそも生産してへんものをどうやって競争力のあるものにするんや?
ドルが下がれば、ドル建ての債務を抱えるグローバルサウスの国々にとっては返済しやすくなるというプラス面はあるで。でも同時にOPEC諸国は「なんでドルが下落し続けるのに準備金をドルで持ち続けなあかんのか」と思い始めるやろな。ロシアの準備金がどうなったか、ベネズエラの金がイングランド銀行でどうなったかを見てるんやから。
トランプがドルを安くしようとする試みの結果は、短期金利の上昇圧力になるんや。政府は金利の安い今のうちに長期債を発行しようとするやろけど、長期債金利は高くなるから解決にならへん。そうすると短期債でロールオーバーしていくことになって、毎年借り換えの必要な債務の割合が増えて、コンタンゴ状態(短期金利が長期金利を上回る状態)が生まれる。1979年のポール・ヴォルカーの時代と同じことが起きるんや。
ドルはスターリング(英ポンド)の道をたどって、アメリカ経済はイギリス経済がたどった道をたどっていくやろな。そこにステーブルコインが短期的な解決策として機能するかもしれへんけど、短期的な解決策は常にそれよりも大きな長期的問題を生み出すんやで。「返済できない債務は返済されない」というのが私の結論やな。
球体的な影響力(勢力圏)の分割について: 私はそれが機能するとは思えへん。他の国々は自発的にどんな準帝国主義国家の勢力圏に入ることも拒否するやろ。彼らが求めてるのは相互支援なんや。そして大きな債務危機が来ると思う。ウクライナが法的先例を作るやろな。「これは悪意ある債務(オディアス・デット)だ。IMFは戦時中の国への融資を禁じてる自らの規約に違反して融資した」という形でね。新しい国連が必要になって、債務モラトリアムから始まって、1931年以降の連合国間債務とドイツの賠償金と同様に、最終的には帳消しになるやろな。
(AIと地代についての議論)
カール: AIが不動産投資家やブラックストーンのような企業に莫大な優位性を与えてることを懸念しています。
ハドソン: その通りや。AIは家賃を吊り上げるために使われてるし、借り手の収入と支払い能力に応じて家賃を調整するためにも使われてる。「各借り手の能力に応じて、各家主の(無限の)必要に応じて」というわけや。AIと地主制と土地地代は幸せな組み合わせにならへんで。
(今後の著作について)
カール: 執筆中の本、「十字軍から第一次世界大戦までの西洋の金融的台頭」について聞かせてください。
ハドソン: 産業資本主義の台頭について、17世紀半ばのマラカイ・ポストルスウェイトのような人物はすでに「金融セクターはその富を経済に再投資せーへん」と指摘してたんや。債券保有者は産業投資に金を使わーへん。ロンドンやパリの一等地不動産を買うか、イタリアの高級織物のような高級消費財を買うだけやで。
直近2年間のアメリカの消費支出の増加の半分は、上位10%の富裕層によるものなんや。「消費支出が増えてる、景気は良い」という話は、底辺90%を貧しくすることで富裕層が豊かになって消費してるだけなんやけどな。
私の本は本質的に、金融セクターの目標が絶対君主制への戦争融資から、議会民主主義の支援へ、そして産業への支援へとどう変化したかを示してるんや。財政家たちは議会制政府を支持した。なぜなら議会は王が債務を踏み倒するのを防いで、経済全体の富を担保にできるからや。
19世紀の古典経済学は全て、経済地代を最小化して価格をコスト価値に近づけるために発展したんやけど、国際投資は金融化されて、鉄道・運河・通信などの自然独占と土地・プランテーションに集中してしまったんや。私はこの金融セクターが支配した政府の形態が1000年かけてどう変容したかを示してるんや。必ずしも文明の利益のためにではなかったけどね。
カール: 今日も本当に充実した議論でした。ありがとう、マイケル。
ハドソン: こういう議論が大好きやで。質問に答えながらアイデアが浮かんでくるんや。書くより話す方が得意やからな。みんなの支援が本当に力をくれるんや。ありがとう。では夕食にするわ。


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