2026年6月11日木曜日

スコット・リッター:狂犬を撃て

吠える犬を射殺せよ(Shoot the Dog)

サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)での俺のプレゼンは、本来なら外交的な洗練の極みとなるはずやった。せやけど、俺は台本から逸脱した。結果、その方がよっぽど良かったんや。

SPIEF 2026での俺

2026年6月4日、俺はSPIEFのパネルディスカッションに参加する名誉に預かった。1997年から続くロシアのビジネスと政治のリーダーたちが集う恒例行事や。このイベントは年々巨大化しとって、今やスイスのダボス会議を凌駕しとる。2026年のダボスには136カ国から約3,000人が集まったが、SPIEFには100カ国以上から25,000人近くが集まったんや。

欧州主導で西側がロシアを外交的・経済的に孤立させようと躍起になっとる時期に、SPIEFはその努力が愚かやったことを証明しとる。唯一いなかったのは欧州の連中や(ただし、欧州企業からの代表団やビジネスリーダーは何百人もおった。ロシアはビジネスするのにええ場所みたいやな。SPIEF 2026の4日間で約84ドルの契約が結ばれたんやから)。SPIEFは、ダボスの孤立した希薄な空気の外側にある「現実世界」が集まる場所や。最近のSPIEFは、プーチン大統領が期待通りの演説をして、数時間にわたって質問に答える本会議で有名やな。

パネルディスカッション

俺が参加したパネルの題名は「世界の無秩序:現代の国際関係に外交の余地はあるか」。モスクワ国際関係大学(MGIMO)のドミトリー・ストルコフ准教授が司会やった。パネリストにはロシアのアレクサンドル・パンキン外務次官、MGIMOのアナトリー・トルクノフ学長、CSTOのセルゲイ・ポスペロフ事務局長、イタリアのミケーレ・ジェラチ元経済開発次官、そしてフランスの歴史学者ジョン・ラフランドらがいた。

俺は事前にメモを書き留めてプレゼンを準備しとった。けど、壇上に上がると台本なんて吹き飛ぶもんや。俺のプレゼン自体は好評やったけど、最後に「狂犬のように振る舞う欧州に対して、ロシアにとって最善の解決策は『その犬を射殺すること(Shoot the dog)』だ」とぶち上げた時は、会場もパネリストも言葉を失っとったな。

「犬を撃つ」ということ

外交官は「リアリスト政治」や「理想主義政治」、そして「国益」について語る。俺は外交官やないが、ヘンリー・キッシンジャーの『外交』なんかを読んで、これらの概念を学んできた。

俺は人生をかけて外交の結末を背負ってきた。中距離核戦力(INF)全廃条約や、イラクでの国連兵器査察団の指揮がそれや。俺にとって軍備管理協定は、人間の理性の最高到達点や。

INF条約は軍備管理の金字塔やった。核戦争は勝者を生まず、戦うべきではないという共通理解のもと、核を制限するんやなくて「排除する」という合意やったからや。それは米ソ双方の利益やった。

一方、イラクの武装解除は全く別もんやった。国連決議という形で、軍事力を背景に他国に強制されたものやった。本来、核兵器が人類の脅威であるという共通認識から進化すべきやったのに、米国の覇権主義のせいで、予防外交の歪んだ形になってしもうた。

欧州という「無」

今や、米国は軍備管理のない世界を作ってしもうた。米国は軍備管理をロシアに対する戦略的優位を得るための道具にして、不都合になれば条約から離脱する。米国という覇権国家は「アメリカ・ファースト(自国優先)」から「アメリカだけ(アメリカ・オンリー)」に変わり、道徳的な羅針盤を失ったんや。

さらに複雑なのは、欧州の現状や。第二次大戦後、欧州は米国の保護下で生きてきた。ソ連崩壊後、EUという政治的統一を目指したが、それは欧州を「空っぽの寄せ集め」にしただけや。かつて欧州を定義していた国アイデンティティは消え去り、何にも立脚しない fictional union(架空の連合)が出来上がった。欧州は文字通り「何にも立脚しとらん」んや。

今や欧州は、かつての主人から切り離され、パニックに陥っとる。そして自分たちが何者かを取り戻そうと過去の栄光にすがりつき、米国の覇権よりも危険な状態になっとる。ドイツはナチスの過去の地政学的な政策まで掘り返しとるんや。英仏はロシアを標的とした核戦力を固め、ドイツは独自の核抑止力を求めとる。彼らは2029年、2030年という具体的な戦争の年まで設定しとるんや。

ロシアはどうすべきか

ロシアの外交は常にプラグマティックや。米国はいつか正気を取り戻す可能性がある。やがて軍備管理の道に戻るかもしれへん。

けど、欧州は違う。放置された欧州は、ニヒリズムの温床となり、内側から制御不能な自滅的傾向を強めとる。そう、欧州は、出会うもの全てを脅かす「狂犬」になったんや。

ここで、小説『アラバマ物語(To Kill a Mockingbird)』の例を挙げたい。物語の英雄アティカス・フィンチは、狂犬が現れた時、村の人々から頼りにされた。彼が優れた弁護士やからやない。彼が「撃てる」からや。 法律では狂犬から村は守れへん。弾丸だけがそれをできるんや。

ロシアにとって、法律は欧州という狂犬から守ってくれへん。じゃあ、ロシアは何をするべきか?

「その犬を射殺せよ(Shoot the dog)」

誤解せんといてほしい。これは核戦争を煽るもんやない。欧州を外交の相手として認めるのをやめることや。「欧州の統一」なんていう幻想を捨てることや。ドイツも英国もフランスも、自力じゃ軍事的な幻想を維持できへん。

ロシアは、NATOの解体、米国の欧州撤退、そしてEUの必然的な崩壊を促せばええんや。欧州が自ら作った煮込み鍋の中で勝手に腐り果てるのを待てばええ。煮込みの材料が自分たちの破滅をもたらすレシピやって気づいた時、連中は狂気から目を覚ますやろ。その時、欧州という虚構は死ぬんや。

「犬を射殺せよ」は文字通りの意味やない。予防外交を武器として攻撃的に適用するためのメタファーや。ロシアのアティカス・フィンチが、名前の由来になった男と同じくらい見事にそれを使いこなすことを願っとるわ。

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