ラリー・C・ジョンソン:UAEの「奇跡の回復」
記録的な原油、空っぽのタンク
2026年10月24日
みなさん、ええ知らせやで。戦争は終わったんや。少なくともアラブ首長国連邦(UAE)ではな。今月の見出しだけ見たら、そう結論するしかないわ。10月14日、ブルームバーグが国際エネルギー機関(IEA)の推計を報じたんやけど、UAEの9月の原油供給は日量530万バレルっちゅう過去最高に達したそうや。ホルムズ海峡の心配をせんで済むように首長国が作ったフジャイラ港は、日量262万バレルの積み出しで、これも過去最高。巨大なルワイス製油所も、8月末にフル稼働復帰が宣言された。ほな、(ノンアルの)シャンパンでも開けよか。
ところがや、カール・ミラーが10月22日付のUAE石油・ガス・システムの評価をわしに送ってきて、このパーティーに水を差してくれたんや。たしかに首長国は原油輸出を回復させた。せやけど、それ以外は何も回復してへん。ガス事業はまだよろよろしとるし、石化プラントは原料不足で干上がっとるし、次の攻撃を耐え抜くためのはずの燃料備蓄は、開戦前の3分の1くらいまで吸い上げられてしもた。UAEは、ガソリン警告灯を点けたまま生産記録を叩き出しとるっちゅうわけや。
安全な避難先なんかやなかった
長年、UAEは自分らのことを「湾岸のスイス」て売り込んできたやろ。安定してて、多角化してて、地域の混乱とは無縁で、ヘッジファンドも石油メジャーも枕を高くして寝られる場所やて。ところが2026年が来た。米国エネルギー情報局(EIA)によると、UAEの原油・コンデンセートの生産は、年初の日量およそ400万バレルから、3月から5月の平均で240万バレルまで落ち込んだ。4割の崩壊や。スイスやと思とったら、イランのドローンの射程圏内やったっちゅうこっちゃ。
被害のリストは、まるでエミレーツ産業の観光ツアーやで。ルワイスの製油コンプレックスは3月10日に火災を起こして止まった。日量12億8000万立方フィートを処理する設計やったシャーの高硫黄ガスプラントは、3月16日に燃えた。UAEのガス網の心臓部やったハブシャン・ガス・コンプレックスは4月3日にやられて、念のために言うとくと、4月8日にもまたやられた。ボルージュの石化プラントは4月5日に損傷。エミレーツ・グローバル・アルミニウムの製錬所は3月28日に明かりが消えた。5月17日には、ドローンがバラカ原子力発電所を支える電気設備に当たった。アブダビの誰も、国連安保理の議事録では絶対に読みたなかった一文やろな。
ほんでフジャイラや。迂回港やで。ホルムズで何があってもUAEの石油を流し続けるためだけに作られた港や。ロイターの集計では、戦争が始まってから少なくとも19回攻撃されとる。3月16日の週には、積み出しが日量44万バレルまで落ちた。5月4日の攻撃のあとは、石油製品の輸出がほぼ丸1か月止まって、その日から6月1日までの間に出港した製品タンカーはたった1隻。1隻やで、1隻。保険のはずが、その保険にも保険がいるっちゅう話になってしもたんや。
「使える」けど「動いてへん」
原油は戻った。ガスは戻ってへん。ADNOCガスの第2四半期の数字を前年同期と比べてみ。国内ガス生産は32.5%減、LPGやナフサみたいな輸出向け液体製品は54.5%減、自社分のLNGは63%減や。輸出液体製品の販売は252兆英国熱量単位(BTU)から117兆BTUに落ちた。LNGの販売はおよそ71%減。売上は39%減、EBITDAは47%減、純利益は52%減。たった1社、たった1四半期で、23億ドルの売上が蒸発したんやで。
せやけど、ミラーの資料の中でわしがいちばん気に入っとる数字はこれや。ADNOCガスは、第2四半期の設備稼働可能率が99.9%で、前年より良かったて胸を張って発表したんや。ところが実際の設備利用率は、80%から54%に落ちとる。プラントはやる気満々で、いつでも動ける状態やった。そやのに動かせんかった。原料も、貯蔵も、輸出ルートも、全部叩き潰されてたからや。「うちの車は完璧なコンディションです」て発表しながら、その車はタイヤ外されてブロックの上に乗っとる、っちゅう会社版やな。
それ以降の回復は、ほんまもんやけど部分的や。ハブシャンのガス供給は、8月10日の時点で85%まで戻った。ボルージュは6月末までにプラントを直したんやけど、そこで初めて「入れるもんがない」ことに気ぃついて、稼働率60%で回しとる。アルミ製錬所は、8月下旬までに電解槽の4分の1を再稼働させて、全部終わるのは2027年の早い時期になる見込みや。修理のほうが回復よりも早いっちゅうこっちゃな。
燃料切れ寸前で走っとる
欧州のエネルギー大臣の週末を台無しにするはずの数字がこれや。10月19日時点で、フジャイラの石油製品在庫は725万バレル。開戦前はおよそ2070万バレルあった。65%の減少や。ガソリンとナフサの在庫は87%減。燃料油は53%減。ディーゼルとジェット燃料は23%減で、しかも今月に入って1週間だけで18%も減っとる。冬を目前にしてな。
フジャイラは、そこらの町のガソリンスタンドとちゃうで。世界有数の船舶給油・石油製品取引のハブで、船が燃料を入れて、トレーダーがアジアと欧州の間で貨物を一時的に置いとく場所や。通常の3分の1しか在庫がないっちゅうことは、ショックを吸収する力も通常の3分の1ほどしかないっちゅうことや。ミラーの計算は容赦ないで。輸出の出口が日量100万バレル分ふさがって、使える貯蔵容量が1000万バレルしかなかったら、油田を閉めなあかんようになるまで約10日。10日やで。そんなもん戦略備蓄とちゃう。ただの連休や。
3分の1しか運べへんバイパス
ホルムズ海峡が閉まった時のUAEの答えは、ハブシャンからフジャイラまでのADCOPパイプラインや。設計上の輸送能力は日量150万バレル、うまいこといって180万バレルってとこや。ところがADNOCは、生産能力が日量485万バレルあると言うとる。ちゅうことは、非常口に乗れるのは乗客の3分の1ほどや。2本目のパイプラインは2027年に予定されとるそうやけど、2028年にこの戦争をやろうと思とる人には、さぞ心強い話やろな。
ほんで、あの9月の記録はどうなんや? 一部は、ほんまに修理が進んだ分や。一部は、UAEがOPECを抜けたことによるもんで、5月に生産枠が都合よく消えたからや。ほんでIEA自身の説明によると、一部は、すでに過去最低やった在庫を取り崩して出した分や。貯金を切り崩して売るのは、月間の過去最高収入を出すにはええ方法やけど、ビジネスモデルとは言わへんで。そのあいだに、地域全体で見ると、9月の石油製品の出荷は日量190万バレルで、開戦前の470万バレルと比べてこの程度。LPGの出荷は日量67万バレルで、開戦前は150万バレルやった。回復がほんまなんは原油タンカーだけや。それ以外は、プレスリリースの中だけの話やな。
もう1ラウンド、いこか?
公平を期して言うとくとな、ミラーはそこをきっちり言うてくれとるんやけど、UAEのエネルギー・システムの3割から4割がまだ壊れたままやて証明できる人は誰もおらん。被害と修理の完全な公開台帳はないからな。ルワイスや原油生産での回復は、彼もちゃんと評価しとる。せやけど、問題の形ははっきりしとる。UAEは原油を出荷する力は立て直した。けど、ガス事業も、石化の原料も、なによりも燃料備蓄も、まだ深刻なほど減ったままや。
そこへ来て、ワシントンの最新の名案が、イランへの再攻撃やで。イランは、フジャイラだけでも少なくとも19回、UAEの輸出システムに手ぇが届くことを見せつけてきた。前回、首長国が一撃を食らった時は、フジャイラに2000万バレルの石油製品があって、衝撃を和らげてくれた。次はそれが700万バレルほどや。記録的な生産と空っぽのタンクは、レジリエンスとは言わん。崖っぷちに立っとる国が、景色の感想をSNSに投稿しとるだけや。


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