2022年3月4日金曜日

プーチンの次なる手

https://tomluongo.me/2022/03/02/opening-salvos-tossed-putin-next-moves-ukraine/

トム・ルオゴさんがなんだかとても大事なことをわかりやすく書いているような気がしたので、抄訳しておいた。

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前回にプーチンがゲームチェンジャーであることを書いた。今回は「ウクライナの武装解除と脱ナチ化」のつぎの目標について書く。

信頼できる情報筋によると、ロシア軍はウクライナの少数民族居住地域でウクライナ軍を無力化という。アリステア・マクレオドの秀逸な投稿に対する我輩のコメントはつぎのとおり:

ECBも欧州各国中銀も、欧州のバンキングセクターがいかに脆弱かわかっていない。債務が資産を超過した状態で金利が上がる、これは東欧崩壊の序章である。

・・・それから3年が経過した。アメリカ/NATOが対プーチンのゲリラ戦を展開するというなら、財政面で大きな困難に直面するのは欧州だ。欧米が経済制裁を拡大すればプーチンは軍事で対応する。CIA/MI6がどんな情報戦を展開してもプーチンに対しては無力だ。スパイが始めた戦争をプーチンは軍事力で終わらせる。場所はウクライナだが、これはウクライナ戦争ではない。世界の趨勢を決する戦争だ。ダボス対ロシア戦がたまたまウクライナだったにすぎない。

アフガンの泥沼

ダボスはゼレンスキーが降伏するのを許さなかった。戦争が終われば条件交渉にはいる。戦いが終結したらロシアを経済制裁する名目がなくなる。終結とはウクライナ分割である。ダボスが支配する資本市場にとって、終結・分割させてはならない。和平交渉で時間稼ぎするのはそのためだ。

西側は情報戦で、つまり資本流出でおどして短期的損失を最小限度に抑えようとしている。いっぽうで金価格は上昇中。すばらしいことだ。ちなみに遅くとも本年末の、ウクライナ分割後の地図はつぎのとおり。

チェルニヒフとスマイが交渉のためのカード。ルヴィヴはポーランドへ。ダグラス・マクレガー退任大佐が述べたように、ドニエプル河以東はノヴォルシアとなり、ロシア連邦に編入される。

これがプーチンの第1目標である。これに向けてプーチンは軍事力を行使し、西欧は経済制裁で対応した。西欧はウクライナがアフガニスタンのように泥沼化することを(ヒラリーにならって)期待していた。ロシアを交際金融から締めだしたら泥沼化すると踏んでいたのだ。しかし食料とエネルギーをもつロシアにとって金融制裁は穴だらけ。これは非対称戦争だ。

西欧はロシア銀行の在外資産を凍結した(笑)。次の手はリアルの核弾頭しか残されていない。ロシアはウクライナの武装解除するだけの限定戦力を行使しているだけなので、核弾頭はいくらなんでも使えない。

ロシアは一般市民の犠牲を最小限におさえつつ領土を拡大している。一般市民を犠牲にしたら敵が増え、そこに西側が支援をする。それでは過去の戦争と同じことになってしまう。

NATOがウクライナに支援した武力はおおかた無力化された。いま西側が展開している情報戦と経済戦は下品なギャグ漫画としか思えない。なぜそこまでやるのか?西側政権が、コロナ封鎖やワクチン強制接種で失った信頼を回復したいだからだ。民衆をウクライナ側につかせようと必死なのだ。

ロシア風鍋煮込み

さて、プーチンがガス欠寸前の欧州になぜ天然ガスを送り続けるのか?それは供給を止めたら西欧人民を敵にするからだ。ウクライナで民間人を守っているのと同様、欧州人民を守れば、わけのわからないことばかりする政権を民主的に倒してくれるじゃないか。

つまりプーチンの最終目標は、ロシアを1世紀以上ものあいだいじめ続けた、西欧のダボスエージェント・パワーエリートの背骨を折ることだ。さていかなる手段で料理するのだろうか?

鍋奉行はプーチン。西側は彼のペースに乗せられる。西側の反応はすぐに読める。

ウクライナはEU加盟を望む。EUが受け入れる。ジョージアも同様。トルコの顔色が土色になるのがわかる。ハンガリーは見ていないふりをする。結局、どこもウクライナに派兵しない。

EUはウクライナを加盟させてどうするのか?当事者でないゼレンスキーが契約書にサインして戦場の風向きが変わるのか?契約書、土地所有法、体面・・・でどうなるというのか?ウクライナをEUが加盟させたら、EUは相応の責任をとらないといけない。ウクライナからロシアを駆逐するというのか。

昨夜、陽が沈みつつある大統領がウクライナ情勢についてコメントした。支持率が37%を切り、NATO経費でEUを財政破綻させた当事者が、EUを率いて対ロシア戦争を戦うのか?もしそうなら最大の誤算といっていい。EUが新規加盟国ウクライナのために戦うはずがない。

ネオコン・ネオリベはウクライナを泥沼にできると思っているかもしれない。プーチンのほうがウクライナをネオコン・ネオリベの泥沼にするかもしれないというのに。ロシアは欧州を支配することはできないし、その必要もない。上記の地図が実現すればいいだけだ。

金融制裁の限界

さてウクライナ分割のあとは領土保全である。金融制裁を無力化し、欧州がなけなしの金を使い果たすような環境を構築する。財政破綻で西欧政権が破綻する。ヒントはロシア財務大臣のコメントだ。金本位制の復活である。ゴールドへの付加価値税を撤廃する。ルーブルではなくゴールドで国際取引の決済をすれば、為替下落を回避できるし、外国資本逃避のショックを和らげることができる。

COMEXやLBMAなど従来のゴールド市場(といいつつ客からピンハネするメカニズム)からゴールドが流出する。ゴールドに裏付けられたロシア銀行システムが金融機関としての信頼を回復する。西側の銀行が顧客を顧みず搾取をつづけた結果、エネルギーとコモディティー市場が瀕死の状態であるのと対照的だ。

ペトロダラー体制が過去のものとなる。このまま原油価格が上がりつづけても、ロシア陣営から直接買い付ければ安価で手に入る。高値で買えば、世間から非難を浴びるのはプーチンではなくバイヤーだ。そしてロシアは原油収入でより多くのゴールドを備蓄する。

ロシアはイランとは違い、当面の困難を回避できる。イランは忍耐しか方法がなかったが、ロシアはタンカーを建造して輸出できる。困難な状況ゆえに繁栄し、世界の資本の流れを変える。

さて、西欧のダボス派が嵌まった罠の話をしよう。連銀パウエルは3月に25ポイントの利上げをするといった。「実行すると言ったかぎり実行する。」さらにいわく、「基軸通貨が複数あってもいい。」アメリカは金利上昇でスーパー債務超過になる。金利上昇でドルの流れが狭くなる。EUはロシアと対決しているのにアメリカは見ないふりをする。西欧ダボス派と連銀が対決する仕組みになる。

ウクライナがEUに加盟。NATOはひきこもり。ルヴィヴはポーランドへ。トランスカルパチアはハンガリーへ。EUが食うウクライナは残飯だ。

ネオリベ・ネオコンはプーチンを第2のミロシェビッチにしたいようだ。世の中には、アメリカの政治家や欧州の企業債に屈しない人たちがまだまだいるというのに。

この戦いは世界のありかたを変える。ダボス派にとって需要の減退なぞ祭りの生贄みたいなもんで、喉元を過ぎればなんとかなると考えているかもしれない。しかしその祭りはすでに終わっている。

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