2022年12月14日水曜日

なぜロシア-ウクライナ戦争は終わらないのか?

http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/src/read.php?ID=54593

最も重要な戦争終結の障害 これが野蛮な西洋だ!莫大な利益を上げる者たちの存在 小型で安価な爆弾を供与か?(1)

2022年11月30日付 Hamshahri 紙

 政治的指導者の誤算、イデオロギー対立、軍需企業の莫大な利益がウクライナでの停戦の大きな障害となっている。

【ハムシャフリー電子版】米国国防総省は、ウクライナに供与するため米国製M-26ロケットに容易に搭載可能な小型で安価な爆弾を生産し供給するとのボーイング社の提案を検討していると発表した。注目に値する点は、このロケットの射程距離が150㎞であることにより、ウクライナがロシア戦線後方の標的やこの国(ロシア)の領土さえも攻撃できるということだ。

 ロイター通信は情報筋を引用して、「ボーイング社のGLSDB爆弾はおそらく2023年早春にはウクライナに供与されるだろう」と記している。ウクライナ戦争の開始から9か月以上が経過したが、ロシア領土を標的に設定するだけの能力をウクライナに与えることのできる新兵器の供給を鑑みれば、戦争の激化が見込まれることは間違いなく、現在のところ終戦は疎か停戦の情報さえない。それにしても何がこの戦争を長期化させる要因となっているのだろうか?

誤算

 過去200年の間、世界の軍事紛争の多くは、終戦までに平均2か月から3か月かかっている。しかし専門家らによれば、戦争は3つの戦略的理由によって長期化する。それは政治的指導者が、戦争での敗北により自らの政治家としての存続が脅かされると考えている場合、指導者が自国と敵の力を正しく評価していない場合、そして今日の敵が将来的にこれまでよりも強力になることを指導者が懸念している場合である。『フォーリン・アフェアーズ』誌は次のように記している。「ウクライナ戦争では多かれ少なかれこれら全てのケースが見られている。例えば、もしプーチンがロシア戦争での敗北によって自身のロシアでの支配が終わる可能性があると考えているなら、ロシア国民にもたらされる結果がどうであれ、プーチンはウクライナでの戦争を継続するだろう。」

戦争長期化のもう一つの要因は、不確定性である。

 通常、戦争から数か月経つと、双方の当事者は自国と相手国の軍事力について比較的現実的な評価を行い、それに基づき調停の有無にかかわらず戦争終結のための合意に達するよう努めるが、ウクライナ戦争を含む一部のケースではそのような動きがない。ウクライナ軍は予想を上回り、西側の支援を受けてロシア軍に抵抗している。一方で、ウクライナ軍がロシア軍を自国領土から撤退させられるかは定かではない。もう一つのポイントは、寒い冬の到来によって、最近厳しい経済危機とエネルギー危機に直面しているヨーロッパ諸国がキーウ(キエフ)への支援継続の意欲を失う可能性があることだ。

 一方、ロシアのウラディーミル・プーチン大統領が発表し、国内での抗議をもたらした総動員令[2022年9月21日にプーチン大統領は《部分動員令》を発動した]を含むウクライナ戦争のロシアへの国内的影響も、この先数か月で明らかになるだろう。現状でのこの不明確さが、和平交渉に向けて双方が消極的であることの主な要因となっている。これらとは別に、ウクライナ戦争にはいくらかイデオロギーに由来する面もある。西側のロシア政治評論家らによれば、プーチンはウクライナ人のアイデンティティとウクライナ政府を信用していない。

 他方で、ウクライナも妥協する姿勢を示しておらず、この点に関するいかなる反対意見も激しく撥ね退けている。『フォーリン・アフェアーズ』誌は次のように記している。「停戦と交渉に反対する双方に対してどのような語を使って呼んでも違いは無い。結果はおおよそ同じである。両者とも現実的な政治を否定し、理想とする目的のために闘っている。このため、この戦争の終結の見通しは少なくとも向こう1年は不透明なままだ。」

武器売却による莫大な利益

 軍需産業の利益はウクライナ戦争の分析でしばしば見落とされる要素である。武器販売は、この戦争の継続に重要な役割を果たしている。米国国防総省はウクライナに新兵器を供与することを発表したが、一方で米国のジョー・バイデン政権は、開戦時より数億ドルの武器をウクライナにすでに売却してきている。この間、通常数週間かかっていた民間企業による武器売却許可に関する法的手続きは、現在では数時間となっている。

 2022年の最初の4か月間だけで米国国務省はウクライナと3億ドル以上の武器取引を承認してきたと言われている。一方、昨年一年間でウクライナとの武器取引に関して同省が許可した額は、1500万ドルにも達していない。『ニューヨーク・タイムズ』紙は次のように記している。「機関銃、対戦車ミサイルといった武器や安全保障支援を含む米国とウクライナ間の175億ドルの契約と比較すると、取るに足らないように思えるかもしれないが、民間企業の武器契約を追跡できないことは大きな問題である。」

 武器輸出分野の問題に取り組んでいる法律家オルガ・トーレス(Olga Torres)氏は、『ニューヨーク・タイムズ』紙に次のように語っている。「以前は武器売却に携わっていなかった多くの人々が、今日この取引に参入している。なぜなら高収益な仕事だからだ。今日、医師や個人事業主までもがこの市場に参入している。これが野蛮な西洋である。」

「プロジェクト・シンジケート」のウェブサイトは、このことに関する分析を次のように記している。「米国軍需産業の莫大な利益は、少なくとも今後数か月でウクライナ戦争が終結する可能性を低下させた理由の一つである。」

 数十年にわたりイラクとアフガニスタンでの長期戦争から利益を享受した米国の武器請負業者たちは、現在ウクライナ戦争の好機に注目している。今日軍事兵器に関する国際的取引の39%を占めているこれらの企業は、ロシアのウクライナに対する攻撃の前から長きにわたりヨーロッパの武装化プロセスを始めており、現在ウクライナ戦争の情況を最大限利用しているところだ。

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