2026年6月3日水曜日

マイケル・ハドソンとキャスリーン・タイソン:BRICSに新しいバンコールはいらへん

https://michael-hudson.com/2026/06/brics-doesnt-need-a-new-bancor/

BRICS Doesn’t Need a New Bancor

By Michael  Tuesday, June 2, 2026

Date: 22 May 2026

BRICSに新しいバンコールはいらへん

マイケル・ハドソン著 2026年6月2日

ニカ・ドゥブロフスキー:

みなさん、ようお越しやす。今日はデヴィッド・グレーバー研究所の夕べに来てくれてほんまにおおきに。マイケル・ハドソンとキャスリーン・タイソンによる「ドル支配の終焉、そしてなんでその転換はもう後戻りできひんのか」についての話し合いやで。マイケル・ハドソンは経済史家で、デヴィッド・グレーバーに影響を与えた最も重要な思想家の一人や。彼は一生をかけて、債務・帝国・金融がどないして世界の権力を形作るか、そしてドル体制がどないしてアメリカに他国の資源を搾取させ、誰にも気づかれんまま政策をコントロールさせてきたかを研究してきはった。キャスリーン・タイソンは元中央銀行家で、『多通貨重商主義:新たな国際通貨秩序』の著者や。お越しいただいてほんまおおきに。今日の議論、めちゃ楽しみにしてる。キャスリーン、どうぞ。

キャスリーン・タイソン:

呼んでくれてありがとうございます。マイケルと話して、今どこにいてどこへ向かうかについてアイデアを交換するんは、いつもほんま楽しい。まず少し歴史から始めるのがええと思うんやけど、前の世紀の中頃の政治がどれほど横暴やったか、わたしも最近まであんまりわかってへんかってん。「BRICSには独自の通貨が必要や、ドルに取って代わる別の通貨がないとあかん」って言う人が多いけど、調べれば調べるほど、今そんなんは無理やと思えてくる。

マイケルに薦められて、バンコールについて調べてみてん。これはジョン・メイナード・ケインズが1942年から1944年にかけて提唱したアイデアで、ポンドでも ドルでもない、金本位ではあるけど金に兌換できひん合成通貨を作ろうというものやった。読んでみたら、ほんまにびっくりするほど制約が多いんよ。ケインズの野心は、世界が通貨供給を拡大するにあたって金に縛られんようにしたい、というものやった。でもバンコールを巡るルールの多さを見たら、それが却下されて「じゃあドルでええやんか」ってなったのも当然やと思う。

ケインズは国際決済銀行の設立を提案した。中央銀行がこの決済銀行のメンバーになって口座を持ち、バンコールと自国通貨を売買するという仕組みや。バンコールを手に入れるには金を預けなあかんくて、それでバンコールを決済に使えるようになる。せやけどバンコールを金に換えることはできひん。つまり金を預けたら二度と返ってこない一方通行のシステムや。中央銀行によっては問題やと感じるところもあるやろな。

貿易黒字にも赤字にも上限が設けられてた。赤字が長く続いたら罰を受ける:通貨の切り下げ、決済銀行への利子引き上げ、金の強制売却、そして資本移動規制。戦争の真っ最中に、新しい機関にこれだけの主権を委ねないとあかんのや。でも黒字が過剰でも罰則があって:通貨の切り上げ、プラス残高に対する5%の利子を決済銀行の準備金に払わなあかんくて、黒字が続いたら10%に上がることもあった。

今の時代やったらとてもじゃないけど通らへんやろな。第二次世界大戦の最中、ブリテンがまだ世界帝国やった時代やからこそケインズにはそれが意味を持ったんかもしれんけど、結局却下されたわけや。

ケインズが利点として挙げてたのは、世界的な受け入れ可能性――つまりブロックされた残高がなくなる――、為替レートの秩序ある管理、そして「バンコールは金よりも気まぐれが少ない」という言葉や。なかなかええ言い回しやな。債務国も債権国も両方、不均衡の是正を迫られる、と。面白いんは、加盟国がたった6ヶ国しかなくて、世界を二分する仕組みやったこと。英国がヨーロッパとアフリカの貿易を管轄して、ニューヨークが北米・南米・アジアの貿易を管轄する。1944年に何十億人もの人間のためにそれを勝手に決めるっていうのも、ちょっとすごい話やな。そして重要なのは:ケインズは資本規制を恒久的な前提として組み込んでたこと。今の世界のほとんどの国には資本規制がない。だからそれを復活させるのは、ものすごく難しい。

バンコールを調べると、なんでこれをBRICSの参考モデルとして挙げる人がおるのか不思議に思えてくる。だってBRICSは全然ちゃうもんやから。BRICSは主権の放棄を求めへん。BRICSは何かを強制的にやらせるところがない。BRICSには報酬や罰の仕組みがない。BRICSには中央事務局すらない――事務局長もまだおらへん。だからバンコールがBRICSのモデルになるっていうのは、全然しっくりこない。各国の主権を尊重しながら発展しているBRICSのあり方と、真逆やねん。マイケル、そこについてコメントをもらえます?

マイケル・ハドソン:

言うてること、全部同意するで。でも技術的すぎて、聴衆の多くにはわかりにくいかもしれへんから補足する。1944?45年、戦後の通貨秩序の枠組みが議論されてた。提案は二つあった。アメリカはそれまでの体制を続けたかった。アメリカは世界の金の四分の三を持ってたんや――1930年代、第二次大戦が近づく中で、多くの金が逃避資本としてアメリカに流れ込んでたわけや。だからアメリカは金を基軸にして、ドルを金と同等にしたかった。当時ドルは1オンス35ドルで金に換えられる法的保証があったからな。

ケインズがやろうとしたのは、単に金の代替物を作ることやなくて、ドル体制そのものに代わるものを作ることやった。彼は言うてん:「ドル体制になったら、英国や他の国はみんなアメリカとの国際収支赤字を抱えることになる。今や世界の残りの国は金の四分の一しか持ってへんし、赤字が続けばさらに金を失っていく。そして通貨が下がらないようにするためには、金利を上げて赤字を資金調達せなあかん――最終的にはアメリカという債権者に利子を払い、アメリカにヨーロッパの企業を買収させて産業支配を許すことになる」と。実際、1945年から1950年の間に、アメリカの保有する通貨用金の比率は75%から80%に増えてん。

だから第二次大戦終結直後から、ドルが国際金融システムを支配することからの脱却が模索されてたんや。ケインズが提案してたのは、あんたも指摘したように、国際通貨そのものやなかった。彼は言うてん:「英国のようにアメリカとの貿易赤字を抱える国は、どうすればええんや?」と。アメリカはスターリング・エリア(ポンド圏)を解体させたから、インドやアルゼンチンみたいなスターリング保有国はそのポンドをアメリカでも使えるようになった。もちろんそっちで使うわ、英国の産業は壊滅してたから。

結果として各国は赤字になった。ケインズが考えてたのは:赤字を抱えて借金してる国が、貿易赤字や増え続けるアメリカへの債務返済を賄うために、金利を上げて景気後退を招かずに済む方法はないか、ということやった。

彼が向き合ってた政治的問題、わかるやろ。今日でも同じ問題があるんや、ただ立場が逆になってる。今やアメリカが巨大な赤字を抱えてる。1950年以降、アメリカの国際収支の状況は一変した。朝鮮戦争から、1970年代以降もしばらくの間、アメリカの国際収支赤字の全体が海外での軍事支出やったんや。

つまりアメリカの軍事支出が、世界経済にドルを供給してきた。例えばベトナム戦争では、東南アジアでドルを使う。受け取った側がそのドルを地元通貨に換えるために銀行に持っていく。その銀行がフランス系銀行やったからパリに送る。ドゴール大統領のフランスはそのドルをアメリカの金に換えた。アメリカはそれを止めたんや。

で、今日のアメリカはドルを市場に垂れ流しながら、返せんような巨大な債務を積み上げてる。そして何より、国際金融の仕組み全体と、中央銀行・政府間の関係を武器化してしまった。例えばイランが石油を輸出したとき、その代金をどう受け取るか。ロシアが石油を輸出したとき、受け取ったドルをどうするか。

ベネズエラは言うてた:石油輸出で黒字になったから、金準備を積み増すために金に換えて、英国銀行に預けようと。そこが金取引と金市場の中心やから。するとイングランド銀行はベネズエラの金を没収して言うた:「アメリカが、現政府に反対する人物を大統領にしたがってるから、差し押さえる」と。つまりベネズエラの金を没収したんや。

ロシアは2022年まで石油で大きな輸出黒字を積み上げてた。ドルで持つとアメリカに没収されるかもしれんから怖くて、ブリュッセルのEUの決済機関に預けてた。するとヨーロッパはアメリカの指示に従って、ユーロクリアに預けてた3000億ドルの外貨準備を没収した。

最近やと、イランが中国への石油輸出を増やせるようになって、代金の多くを人民元で受け取ったけど、ステーブルコインも買っとった。アメリカはそのステーブルコインも没収させてん。

だから世界中が問題に直面してるんや。アメリカはドナルド・トランプが言うたみたいに、海賊帝国になってしもた。ドルを武器にしてる。ドルを使えば没収される。中国の銀行に制裁をかける:イランが中国の製油所に石油を輸出しても、アメリカの銀行やその同盟国は取引できひん。「うちの法律は全世界の法律や。ドルを使おうが、うちが管理する暗号通貨を使おうが、うちの管理下にある資産を使って、うちの外交方針に従わへんかったら、没収する。もしうちがコントロールできひかったら、その国を破壊する」とアメリカは言うてるようなもんや。

そやから世界はドルやヨーロッパの通貨、アメリカの同盟国の通貨を使わずに、どうやって貿易と投資の仕組みを構築するかを考えないかん。単純な答えは:「別の通貨があればええやん」。でも実際にはドル以外の通貨はない。人民元を使う案もあるけど、どうやって人民元を調達するんや?

1950?60年代には――キャスリーンが言及した資本規制の時代には――各国の通貨に二重レートがあった。貿易用の為替レートと、資本移動用の為替レートや。経済にはふたつの部門があると気づいてたから:金融部門と、生産・消費・貿易・流通の実体経済。英国が戦後ずっとやらなあかんかったことをやらなくて済むように:英国は貿易赤字になるたびに、通貨が下がらないよう金利を上げて赤字を資金調達せなあかんかった。構造的に後進国化して、新自由主義化が進んで、社会主義でも工業国でもなく、ただの債務国になって経済が押しつぶされていった。

途上国も同じような問題を抱えてきた。世界銀行・IMF・アメリカの外交政策が言うてきたのは:「アメリカの輸出品と競合するものを輸出するな。自国で食料を育てるな。農業をやるなら、アメリカが買いたい熱帯作物を輸出するプランテーション農業にしろ、自分たちが食べる穀物を作るな。土地改革をやろうとしたら政府を倒してやる」と。グアテマラや中南米各国でまさにそれをやってきたんや。

他の国々は気づき始めてる:この通貨問題、つまり互いに貿易するためにはどうしたらええかという問題は、アメリカと欧米の経済全体から離れることが必要やと。じゃあどうやって独自の通貨体制を作るのか。ケインズが見抜いてたのは、代替通貨は作れへん、ということや。BRICSが独自通貨を作ることは政治的に実現不可能やと想像できる。なぜなら通貨を作る政府には議会があって、議会はその通貨を何に使うか、誰が使えるか、経済のどの部分に配分するかを決める。でもBRICSは左翼から右翼、寡頭政治から軍事独裁まで、ものすごく幅広い国の集まりや。どの国に新通貨をいくら配分するかなんて、合意できるわけがない。今のところは政治的に実現不可能や。

だから新しい国際決済手段の出発点として現実的なのは、中国・ロシア・イランが核になって、あとから他の国が加わっていく形やろな。でもどうやって決済手段を作るのか。中国が一帯一路で他国に投資するとき、他国でお金を使って、輸送インフラや港を整備してその国の経済を発展させる。そしてそれに対して中国に何らかの形で支払わなあかん。この債務をどう解決するか。

まず必要なのは、使う単位の価値をどう定義するか、や。暗号通貨みたいに誰でも買えるものはあかん、そうなったらビットコインみたいな投機の対象になってしまう。これは中央銀行間の帳簿管理の手段として、計算単位として機能するものでなければあかん。つまり国際的な新通貨というのは、貿易赤字・投資赤字・対外債務返済・軍事支出・政府支出のバランスを記録するための帳簿管理の手段のことなんや。そしてアメリカを介さずに実際に資金を移動できる手段が必要や。アメリカはSWIFTの銀行の借方・貸方を加減する仕組みを壊したから――「うちの軍事政策と外交政策に従わへん国は、この銀行間システムから締め出す」と言うてな。中国はすでに独自の代替決済システムを作ってる。それは助かるけど、まだ通貨を作るという問題は残ってる。

「ドルに取って代わるものは何か」と聞かれたとき、キャスリーンが言うてた通り:ドルは取って代わられへん。ドルは使われ続けるやろ、ユーロもペソも使われ続けるように。せやけどドル以外の何かを保有できる代替手段が必要や。それについて今日は話し合う。そこでキャスリーンが解決策の提案を持ってはると思うで。

キャスリーン・タイソン:

わたしの提案やなくて、実際に起きてることを言うてるだけや。2023年以降、BRICSサミットの共同宣言はすべて、「BRICS諸国は地元通貨での貿易を使うべきで、自国通貨・相手国通貨・双方が受け入れ可能な地域通貨で決済すべきや」と言うてる。つまり選択肢があるんや。ドルしか使えへんのやなく、自国通貨・相手国通貨・あるいは人民元・ルーブル・南アランドなど受け入れ可能なものを選べる。今のポイントは「選択肢があること」や。その選択肢が、これまで妨げられてきた新たなレベルの主権をもたらすんや。

「めちゃくちゃ複雑で費用がかかる」「どの通貨も価値が固定されてへん」と思う人も多い。そうや、為替市場で取引されて、価値は各国のパフォーマンスや、場合によっては投機的攻撃によって変動する。でもそれで構わへんし、実はそんなに複雑でもない。わたし自身、多通貨システム、中央銀行の多通貨システムも作ってきた。8通貨でリアルタイムに、すべての相手中央銀行とリアルタイム残高を管理するシステムを作ったけど、そんなに難しくはなかった。8通貨できるなら100通貨でもできるやろ、技術がもはや制約要因やないから。技術コストは劇的に下がった。ソフトウェアは一度書けば無限にダウンロードできる。みんなが同じ標準を使えば――国際銀行業界の場合はISO 20022――すべてが相互運用できる。

それが今まさに進んでいる。約2年前、ASEANは全会一致でシステムの相互運用を決めた。インドネシアは、確か十数か所とリンクしてる。システムがすべて同じデータ標準を使ってるから、相互接続できる。インドネシアでバーコードをクリックすれば、支付宝(アリペイ)が使えて、人民元口座から引き落とされてインドネシアの業者にルピアで支払われる。これはかなり速いペースで実現されてて、統合がどんどん進んでる。まだ企業の資金管理や銀行間送金には及んでへんから、ホールセール市場全体には対応できてへんけど、少額の貿易や観光なんかでは非常に重要や。原則が定着したら広がっていくやろ。

マイケル・ハドソン:

ほな、これが実際にロシアとインドの間で起きてた問題や。ロシアはインドに石油を輸出できるようになって、あんたの言う通りのことをやった――ルピーで受け取った。各国が自国通貨で貿易代金を受け取る。問題はロシアがどんどんルピーを貯め込んでいったことや。それをどうするんや?

インドにはロシアが必要とするものがない。そのルピーをどうするんや?ルピーが切り下げられたら?ロシアはどんどん価値が下がるルピーを受け取り続けるのか、インドがロシアの欲しいものを何も作れへんのに?それともロシアはルピーをどこかの市場で中国通貨に換えるのか?これが不均衡が生じたときの問題や:どう対処するんや?

キャスリーン・タイソン:

ケインズが「ロックされた残高」と呼んでたやつや――ルピーを大量に持ってるのに、インドがほしいものを作ってへん。

ロシアは船を買おうとしてみた。「インドよ、船を作れるやろ、作ってくれ」と言うて。ロシアはもともと自前で船を作れるから本当に必要なわけやないけど、ルピーを使いたかった。でもそれにも限界があった。

ところがインドには金の取引所がある。だからロシアはルピーをムンバイで金に換えてモスクワに運べる。これは非常に効率よく機能する。モスクワにも金取引所があって、上海にもムンバイにもドバイにもリヤドにもある。つまりこれも新たな「選択肢」の一つとして浮かび上がってくるものや:ロックされた残高に困ってるなら、金に換えて移動させればいい。先週まではそれがうまく機能してたんやけど、インドのモディ首相が「インド人にはもうそんなに金を買ってほしくない」と言い出した。これが圧力点になりうる。

もちろん金は、ある意味では第二次世界大戦につながった一因でもある。各国が自国民から金を没収してたから。フランクリン・ルーズベルトは1933年にアメリカ国民から金を没収して、1オンス20ドル67セントで強制買い上げして、翌年には1オンス35ドルに切り下げた。

だから今また金が重要になってきたとしても危険がある。アメリカは行く先々で金を盗んでるから。アフガニスタンに侵攻したときも金を奪った。イラクに侵攻したときも金を奪った。リビアに侵攻したときも金を奪った。2019年にはジョン・ボルトンがイギリスにベネズエラの金を奪うよう求めて、ベネズエラの金87トンが今年の1月に奪われた。ボリビアではクーデターの最中に空港から金が飛んでアメリカへ。だから金が再浮上するとすれば、金を求めて殺到が起き、アメリカはそれを奪うのが一番手っ取り早いと思てるようや。

つまり今や「海賊経済」の新時代に入ってるんや。カザフスタンみたいな、広大な領土に人口が少なくて、とてつもない金の埋蔵量を持つ国が標的になる。ちゃんとした防衛手段を持ってへんし。

2022年1月にウクライナ戦争の前哨戦として、カザフスタンでクーデター未遂があったやろ。あれが成功してたら、カザフスタンの金は今頃ニューヨークにあったやろうと思う。

だから今は多くのことが動いている時代で、金もその選択肢方程式の一部や。ここでわたしが言う金は「自己管理の金」のことや。自己管理するということは、リビアみたいに大量の金を抱えてる国が標的にされるリスクもある。でも外国の預託機関に預けるリスク――アメリカがイギリスの財務相に耳打ちすればイングランド銀行の金が消える、というリスク――を減らせる。

世界は同時にいくつもの方向に動いてる。固まってへん、流動期や。でも明らかに、金は通貨の選択肢と兌換性という観点から、結果の一部になってくる。

マイケル・ハドソン:

そやな、それは常に基本にある。代替案は:「金以外に何かないか?プラチナ、銀、ウランやプルトニウム、石油その他の原材料を基盤にしたらどうか」という考え方もある。でも問題は:なんで通貨を作るのに商品の裏付けが必要なんや?どんな経済でも通貨を作る必要があって、経済成長のためには商業銀行制度と中央銀行による信用創造が要る。金によってその量を制限されたくはない。

各国はどうやってこのシステムを作ればいいのか。さらに話をややこしくしてるのが、あんたが言ってた「海賊的な金の略奪」をアメリカがやっている一方で、こんなことも起きてるということや。リビアはアフリカの全通貨を金本位にしたアフリカ通貨圏を作ろうとしてた。アメリカがそれをドルへの脅威と見なした一因がこれや。「世界の石油貿易をコントロールして武器として使いたい、他国を石油から切り離して機械も電気も止められるようにしたい、金を全部支配したい」とアメリカは思てる。

第二次大戦以降、この金支配がアメリカに債権国の地位をもたらして、世界銀行やIMFを作って他国の貿易政策をコントロールする力を与えた。各国は赤字になり、その赤字は国際的な債券保有者から借りて賄われた。だから今日、途上国のほとんどがドル建ての巨額の債務を抱えてる――外国の債権者、特に自国の富裕層に対してな。

例えばアルゼンチンとブラジルでは、1990年代に政府がドル建て国債に年45%の金利を払ってた。誰がこれを買うてたのか?アメリカ人やヨーロッパ人はアルゼンチンやブラジルの国債なんか買わへん。買ってたのは中央銀行家や大統領とその家族といったアルゼンチンやブラジルの支配層だけやった。だからドル建て国債を保有してたのはアメリカ人でも外国人でもなく、その国自身の寡頭制支配層やったんや。

こうやって途上国やアジア諸国、ヨーロッパまでもがドル建て対外債務を大量に積み上げてきて、これを返済したら国内投資に回すお金がなくなる。債務を返せば成長への投資ができへん。これが現状や。今、石油価格が急上昇して、石油・天然ガス・肥料・石油化学製品・プラスチックといったものを以前よりはるかに高い値段で買わなあかんくなってる途上国やアジア諸国、ヨーロッパがどれだけ追い詰められてるか、わかるやろ。ロシアが18?16%の金利をかけてるみたいに金利を上げたら、3?4年ごとに債務が倍になってまた倍になる。このような状況で何らかのバランスが保てるわけがない。

だからこそ、ケインズのバンコール提案の特徴の一つが、将来の取り決めにも引き継がれるかもしれないと思うんや。ケインズは言うてた:「ある国が国際収支の赤字を持続的に抱えてるなら、明らかに債務を返せへんわけで、それは悪い融資やったということや。その債務は債権国に対して帳消しにされる。そして債権国がアメリカのように黒字を続ける政策をとり続けるなら、アメリカは英国みたいな債務国に対する債権の価値を失うことで罰を受ける」と。ケインズは言うてた:「英国は赤字になり、アメリカは黒字になる。このバランスを取り直す唯一の方法は、黒字国アメリカに対する赤字国の債務を帳消しにすることや」と。

だからケインズは債務問題を最重要課題と見ていた。債務者が長期間支払い不能であれば、債務は削減されなあかんと。これが彼の提案で最も急進的な点で、だからこそアメリカは基本的に反対した。「英国に対する債権を絶対に削減したくない。英国にはどんどん大きな赤字を作ってほしい。英国に金利を上げさせて、我々が英国の産業・メディア・政府そのものを買収するための口実にしたい」。これが本当の政治的なことなんや。

キャスリーン・タイソン:

そこはわたしは楽観的に見てる。この2?3年で何かが起きてきてるから。中国は各国からアメリカの債務を買い取って、はるかに低い金利の人民元建て債務に置き換えてる。今のところ、ケニア・スリランカ・エチオピア・モザンビークがそうなって、これらの国の債務返済負担が大幅に減った。人民元は米ドルよりずっと安定した通貨やから、安定性のリスクも小さい。そして中国がそれらの国の最大の輸出相手国やから、ドルのように調達できるか不安やったものと違って、債務の返済に充てる人民元を安定的に入手できるとわかってる。だから楽観的でいられる、解決策はあると思えるから。

マイケル・ハドソン:

そやな。それが世界の向かう方向や。あとはその技術的な取り決めの問題や。そこがあんたの専門やろ、こういう技術的な取り決めに長年関わってきて、各国の提案の背後にある政治的な動機、どうすれば得をするのかを見てきたから。

キャスリーン・タイソン:

SWIFTも私のクライアントやったしな。だから楽観的やねん。多国間で合意された信用、二国間で合意された貿易に、技術的な障壁はないと思てるから。確かに世界中がドルを使う世界より複雑やけど、おそらくもっと安定してる。貿易というのは予測可能なものやから――どんな作物を育ててるか、どの鉱山が稼働してるか、その年に何を生産できるかはだいたいわかる。天候災害や不作は別にして。

そして中国は来年も今年と同じく14億人いて、今年と同じかそれ以上のものが必要になる。だから人民元を債務の基軸にしたら、実はずっと安定したシステムになる。アメリカはヨーロッパや西アジアも気づいてるように、信頼できないパートナーであることを証明しつつある。より複雑でより多くの選択肢があるけど、地域の利益により適した、より安定した長期的な解決策に向かってる。確かに複雑やけど――

マイケル・ハドソン:

……通貨の為替レートを高騰させずにどうするか。「アメリカへの輸出で黒字になったから人民元で受け取りたい」って国が増えたら、中国の為替レートが上がって輸出が高くなり、輸入が安くなるやないか?

キャスリーン・タイソン:

中国の為替レートは今年、ゆるやかに幅の中で上昇してる。今年までは驚くほど安定してた。中国人民銀行は長年にわたって、人民元をドルとの一定の幅の中に保つ安定政策を続けてきた。面白いのはここからや:今年の初めから米ドルが大きく下落してたわけやけど、人民元もそれに合わせて下落してた。貿易相手国を不安定にせんように、自国通貨が高くなって損害を与えるのやなく、中国人民銀行は政策判断として人民元をドルと連動させ、貿易価格の安定のためにドルと一緒に下落し、安定を世界に輸出するような形をとってきた。

今年は少し上昇してるけど、それほど大きくない――長期的な安定政策は今もあるんや。そして中国に輸出して人民元を受け取ってる国にとっては、人民元の上昇は購買力の増大を意味する。中国からもっと買えるようになるから、さらにその購買力が有効に活きる。

マイケル・ハドソン:

まさにそれが起きてる。中国の外貨準備は増えてるけど、ドル準備は変わってへん。増加分はほぼ全部、金と取引相手国の通貨や。

あと二つ、1930?40年代に使われた対処法を挙げておきたい。一つは封鎖通貨。例えばドイツが「アルゼンチンから小麦を買う、その代わりにドイツマルクを渡す、でも使えるのはアコーディオンとか特定の楽器を買う時だけや」と言うような。用途限定の封鎖通貨があった。こういう通貨制限が今後また広がる可能性はどうやろ?

キャスリーン・タイソン:

チャットに質問が来てるみたいやから、後で拾いましょか。

バーターは実は十分有効やと思てる。例えばアルゼンチン。アルゼンチンは慢性的に外貨準備がない――腐敗と愚策でいつも使い果たしてしまう。でも5Gシステムが欲しかった。それでファーウェイに5Gネットワーク建設を契約した。ファーウェイは来て、ネットワークを作った。得意やから、効率よく。

するとアルゼンチンがまた外貨準備を使い果たして、ファーウェイへの支払いができなくなった。ファーウェイがやったのはものすごく賢くて:アルゼンチンには牛肉があって、中国人は牛肉が好きや。それでファーウェイは5Gネットワークの代金として牛肉を受け取った。その牛肉を中国に輸送して、ファーウェイ創業者の婿さんが食品輸入業をやってるから、みんなハッピーや。これもまた、国家の利益に沿ったより広い選択肢が世界を助けるということや。アルゼンチンはドルもなく人民元もなかったけど、牛肉はあった。ファーウェイは「それで構わへん、牛肉もらいます」と言うた。

マイケル・ハドソン:

もう一つの可能性が二重為替レートや、1950?60年代に使われてたやつ。貿易用の為替レートと資本移動用の為替レートを別にする。これについてはどう思う?

キャスリーン・タイソン:

2026年の今、ほとんどの国が小さくて開放的な経済体制を持ってる以上、二重為替レートは機能しないと思う。資本逃避をすぐに招くやろな。

あ、暗号通貨の質問が来てる――それはお答えしません、すみません、暗号通貨はやらへんので。「アメリカ政府に没収されない暗号通貨」という話やろけど、そんなものは存在しない。オフショアのUSDテザーを押さえられるなら、どこのどんな通貨でも凍結・没収できる。テザー自体が「安全や」と言うてたけど、実際にはそうやなかった。

「アメリカはユーロに対してどんな反応をしたの?」――これはとても面白い質問で、さっきも考えてたんよ。ユーロが創設されたとき、それは直接ドルへの脅威やった。でもヨーロッパはアメリカを常に同盟国だと思てた――NATOの主要国やから。だから何が起きるか全然予期してなかった。それでユーロは創設直後からほぼ破壊工作を受けて、実際何度も破壊工作を受けてきた。ヨーロッパの銀行は揺さぶりをかけて不安定化させやすい。ヨーロッパの国々も場合によっては不安定化させやすい、先月のハンガリーで見たように。ヨーロッパは実は売りに出てるようなもので、アメリカがいつでも介入して不安定化させられる。だからユーロは常に不安定な通貨や。申し訳ないけど――ヨーロッパ中央銀行も私のクライアントやったけど――これが現実で、彼らは浸透と不安定化や方向転換から安全ではない。

国際決済銀行(BIS)の歴史を調べてたんやけど、1930年に設立されたとき、ほぼ真っ先に、当時財務省顧問だったジョン・フォスター・ダレスというニューヨークの大物弁護士が、妹のエレノアをバーゼルのBISに潜入させて、設立の詳細を全部記録させた:すべての幹部・役員・それぞれの政策観・決定事項、1932年のニューヨークからナチスドイツへの1億2500万ドルの送金を含むすべての取引。彼女の日記は実質的にBISへの潜入記録で、それをハーバードの博士論文として発表し、兄たちに渡した。ジョン・フォスター・ダレスは戦後に国務長官になって、アレン・ダレスはCIA長官になった。つまり彼らはBISを最初から転覆させるための詳細な見取り図を持ってたんや。驚くことでもないけど、第二次大戦が始まる頃にはアメリカ人の親ナチス人物がBISのトップにいた。

だから制度や合成通貨に懐疑的なんや、浸透して方向転換させるのが非常に簡単やから。かなり皮肉な見方やけど、これは歴史やねん。

「ハドソンさん、BRICSはなんでまだ"タダ飯"問題を解決してへんのですか?」という質問があるんやけど。

マイケル・ハドソン:

「タダ飯」が具体的に何を指してるかわからへんけど……独自通貨を発行して他の国に持ってもらえばええやないか、スーパーで買い物してIOUを書いて払わずに済むみたいに、ということかな?アメリカはそれを一度やり遂げた。でも二度と同じことをできる国はない。だからドルの代替物が作られたら、アメリカがこの80年間やってきた一方的な搾取が防げるようになる。「海賊や悪徳銀行家とは取引したくない」と人々が思うようになるから。アメリカはあんたが言うてた通り、悪徳銀行家になってしもてる。

キャスリーン・タイソン:

悪い銀行家はいっぱいおるけどな。ECBで残念やったのは、危機に直面したとき、ヨーロッパ全体の中立的な銀行としての役割を果たすんやなく、債務蓄積の制限の執行を完全にやめてしまったことや。債務蓄積への歯止めはECB設立の目的の一つやったのに。ドラギが「なんでもする」と言うてしもた。ヨーロッパの量的緩和で面白いのは、ECBは財政責任のあるドイツ国債でなく、過剰債務を抱えた南欧の国債を優先して買い取ったこと。財政健全なら、ECBはあなたの債務に興味がない。財政無責任なら、ECBがその債務を支援する。だからイタリアはドイツより低い金利になれる――危機の際にECBがイタリアを支援するとみんなわかってるから。そこでも、設立文書や憲章が何を言うてようと、その機関は予期せぬ動きをするということがわかるんや。

マイケル・ハドソン:

つまりお金は政治的なものであって、自然法則みたいな自然なものやないと言いたいんやな?

キャスリーン・タイソン:

チャールズ・グッドハート教授と面白い話をしたことがあってな、「お金は一つの固定したものやない、発行者ごとに異なるもので、発行者の政策・許容範囲・行動・リスク耐性・リスク回避性によって時代とともに変わる」と言うてた。だからお金は決して固定されてへん。お金は発行者のあらゆる属性を束ねたものや。

マイケル・ハドソン:

そして通貨を創出する人が、誰がその通貨を受け取るか、何に使われるかを決める――それが全体の問題や。今は通貨の創出と銀行信用が民営化されてて、公共財としてではなく、中央銀行が民間銀行の代わりに動いてる。「成長し、生産性を上げ、生活水準を向上させるために何が必要か」という国家の視点からではなく、な。

キャスリーン・タイソン:

そうや。こんな質問が来てる、フランシスさんから:「アフリカ諸国が人民元への依存を深めた場合、たとえドルより安定してて低金利でも、同じ問題を別の国にスライドさせただけやないの?」

そこでアフリカ諸国は実際に変化を起こしてて、それが状況を変えていくと思てるんや。鉱石や農産物の国内加工を進めてる、しかもほとんどの人が思うよりずっと速いペースで。2024年12月にエジプトに行ってきてんけど、一番面白かったのはアスワンの先の砂漠の中の「サークル農場」や。巨大な灌漑設備がただの荒野の真ん中に。ナイル川の水を引いて灌漑設備を入れて、大量の食料を作ってた。運転手が誇らしそうに教えてくれてん、毎年22%以上の生産拡大をしてると。これはエジプトの輸入を減らして食料安全保障を高める。しかも低コストで実現してる:今は戦争してへん軍隊が農作業をしてるから。土地は全部公有地で取得コストもゼロ、荒野の真ん中やから。

農業・鉱業・加工業で共有されている現代的な技術や手法が、アフリカをかなり速く変えていく。だから依存大陸のままではなく、自立・自律できる大陸になっていく。それが大きな違いをもたらすやろ。楽観的で居続ける。

ニカ・ドゥブロフスキー:

ちょうど1時間ぴったりの議論やったな。ほんまにありがとうございました、すごかった。内容が複雑やし奥深くて、もう一回ゆっくり見て理解したい。次回の議題として――またぜひ来てほしいんやけど――金についてもっと掘り下げたいな、経済的安定を戦争でなく実現するためにはどうすればええか。チャットにもそういう質問が来てた。デヴィッドの言葉も引用したいんやけど、「歴史的に金・戦争・債務の結びつきは偶然やない:コインは兵士に給料を払うために発明されて、兵士は金を略奪して、金は鉱山に戻ってきて、兵士が通り過ぎた農村の人々が税をコインで払わされた」と言うてた。そして金の価格が上がってる。だからどう展開しうるか、私たちはどんな立場をとるべきか、というのは非常に面白い議論やと思う。暗号通貨については皆さんもう理解してるけど、金にはまだ明確な定義がない――だからそれを議論するのはものすごく面白くなるやろな。

ほんまにおおきにありがとうございました。

キャスリーン・タイソン:

おおきにありがとうございます。マイケルも。

マイケル・ハドソン:

呼んでくれてありがとうございます。キャスリーンも、おおきに。

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