2016年11月22日火曜日

開発工学のススメ

「投入」というところでPDMのことについて書いたのだが、要すれば国際開発業界は発想とかプロセスとかイノベーションといったところで、製造業にくらべてとてもとても遅れている。しかし、(軍隊業界もそうだけれど)大変な金額が流れ動いている。大変な金額が流れ動いている業界には若くて優秀な人たちが集まってくるのだが、金額の量にくらべてローテクなので、若い人たちは失望してしまう。

製造業はバイテクな結果をハイテクなプロセスで追及しているのでとてもエキサイティングなのだが、給与水準が低かったりするので、若い優秀な人たちがそれほど食いつかないという現象が起きてしまう。

ここまで書きながら考えたのだが、若くて優秀な人たちに見る目がない、というか哲学がないのが問題なんじゃないか。多くの人たちが流れる金の量しか見ていないんじゃないか?金が入れば、君の能力を、野心を、好奇心を腐らせていいのか?っちゅうことやね。それも老頭児が言い続けなければならないことだ。

そういえば1980年代、アメリカで似たようなことがあった。理系の優秀な人たちが、金に目がくらんで金融業界に行ってしまうという現象を、GEはじめ製造業が嘆いていたのだ。

その後なにが起こったかはみなさんご存知で、「金融工学」というめんどくさい分野が成立してしまった。ゼロサムゲームの金融業において、いったいなにが工学なのかいまだによくわからないのだが、アメリカ選挙戦の前後で対ドル円が10円も大きく変動してしまうというように、ゼロ金利で溢れたマネーが電脳のアルゴリズムにもとづいて、極めて短期間(秒単位以下)で似たような動きをするようになった。株式市場と為替市場と、かなりタイミングは遅れるけれど国債市場がひとつになった投機競技コンプレックスで、メガバンクとか郵貯とか損保とか年金機構がそれぞれの、しかし似たようなアルゴリズムでマネーを動かしている。年金機構が5兆円をスッてしまったのは報道された。有能な若い人たちが間違った方向に行ったら、世界が、すくなくとも我々の年金も、間違った方向に行くということなのだ。

閑話休題。では、金の量とプロセスの老朽度がつりあっていない開発業界(そしてたぶん軍隊業界)にとって、どういう方向に動くのが望ましいのか?
金の量につりあったレベルのプロセスに進化させればいいんじゃないか、というのがひとつの考えかた。つまり、理系の優秀な頭脳を投入して、金融工学レベルの「開発工学」をつくりあげる。そしたら、開発手法が秒以下のスピードでくみ上げられるようなアルゴリズムが開発される。
うん、不可能じゃないな。

ガン治療で似たような話がある。ガンの遺伝子を特定して、遺伝子が変質してしまったところだけを攻撃する薬を処方するのだそうな。開発で、飢餓、貧困、エネルギーなど格差のあるところを衛星カメラや赤外線センサーで検出し、問題をアルゴリズムで分析し、迅速に必要な「投入」を行う。未来の災害緊急支援。

流通業では、POP(レジの情報がサプライチェーンにリアルタイムで送られ集計されて出荷に反映されるシステム)のおかげで問屋などミドルマンが駆逐された。プロセスが改善されればミドルマンが駆逐される。

クリントン財団なんかチャリティー業界におけるミドルマンの最たるもので、ハイチの支援災害のとき、現地と国際機関の情報格差と国務長官たる立場を利用して、自分らに寄付してくれる企業におおいなる便宜をはかったことが報道されている。Pay-to-playっていうキーワードで情報がぼこぼこ出てくるよね。情報格差と時差が縮小すれば、そういう悪意のミドルマンが中抜きできなくなる。クリントン財団は一説によると85パーセントくらいを自分らのチャンネルに流していたんだっけ?身近なところでは、ネットで直接寄付できるようになれば、アグネスも「ユニセフ協会」で中抜きできなくなるようなもんだな。

「開発工学」ができてプロセスが改良され速度があがれば、悪意をもったミドルマンを駆逐することができる。
それには理系の優秀な頭脳を開発業界に流入させる必要がある。金は潤沢にあるのだから、あとは工夫とやる気だ。

同じように「軍事工学」が発達すれば、悪意をもった集団がやりたい放題できなくなる。・・・あ、そうか。悪意をもった集団がやりたい放題するために、軍隊業界を鈍牛に留めているんだった。
兵隊がなんぼ殺されても、民間人がどれほどコーラテラルダメージ(とばっちり)を被っても、あんまり気にしない国家なのだから。われらが宗主国では、「アメリカに生まれた以外なにも持たない人々」と、「アメリカ国籍を合法的に手に入れたい非合法移民」がわんさかいる。そしてメインストリームのメディアもNGOも、現地一般人の被害なんて知らせようとしない。ウォール街とかワシントンDCでは誰もそんなことを気にしないのだ。

そう考えれば、人命尊重の気風がまだ残されている我が国はやはり世界の最先端なのであって、我が国でこそ「開発工学」や「軍事工学」が成立する可能性がおおいにある、と思いませんか?

少なからぬ人数の(元)自衛隊員が鬱病に悩んでいる。有能で、日本の将来を真剣に考えれば考えるほど、メガネおばはんが弄するような言葉あそびと現場の乖離に真剣に悩まなければならない。それも早く早く、なんとかしなければならない。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム