2016年12月16日金曜日

マッキンゼーの日本農業効率化論その3

日本の農業の強みは、豊富な水に裏打ちされた高品質。コスト削減のためにモンサント(今はバイエル)の殺虫剤とか化学肥料なんて使わない。モンサントを使っても収量増にならないし。機械化はコスト削減のためではなく、体を痛めないようにするため。サプライチェーンの最適化といっても、種を買うのはタキイとか地元の種屋、最右翼は地元種交換プログラムに参加している。ディマンドとのマッチングは、地元の顔を知っている人が固定客でよろこんで高値で買ってくれる。いまさらPhDやマスターディグリーをもった、現場を知らないコンサルタントに説教される筋合いはない。

コスト削減とか、サプライチェーンの最適化なんかしなくても、農業というビジネスモデルはじゅうぶんに収益性が高い。たとえば我が輩は師匠(柿澤オルガニックファーム)から完全有機枚をキロあたり680円で買う。こないだ120キログラム買った。地元ではあちこちで、キロ350円くらいでうまい米を売っている。師匠の米の在庫がなくなったらキロ350円のを買っているけれど、じゅうぶんうまい。でも師匠のところからも買う。なぜか?師匠だから。土壌の菌のはなしとか、得難い体験をいろいろ対面で聴けるし、そういう人があちこちにいるのが楽しいから。

これはたとえば、甲信越でそこそこ有名なホームセンターのチェーン、綿半が800億円を売りながら経常利益が8億円、というのとぜんぜん次元が違う話であります。20万点以上を巨大な店舗に揃えて、経常利益が1%。ほんと流通はつらそうだ。しかし綿半がなければ買い物難民になる爺さん婆さんが沢山いる。つまるところ地域貢献である。すばらしい。インベスターは投資しないだろうけど。士農工商の「農工商」はリターンの大きい順番なんじゃなかろうか、とも思う。

我が輩の祖父は右田佐善という人で、和菓子屋をやっていた。我が輩は小学校のころから紋日になると店を手伝わされたのだが、あるとき佐善さんに近所の同業者の値段をスパイするようにいわれた。「あの店は餅を水増ししてる。うちはそんなことはやらん。けどな、あの店よりちょっとだけ安うするんや。」
品質で比較優位に立ち、価格でも比較優位に立つ。そしたら作ったものはぜんぶ売り切れる。品質が同等なら価格競争になる。在庫がたまる。在庫処分で損切りする。それより売り切ったほうがいいに決まっている。こんな感じのちょっとした知恵や工夫は、べつにインベスターに教えてもらうほどのことでもない。

グローバリゼーションの結果は価格競争である。日本の農業は原則、生産者と顧客のGNN(義理と人情の浪花節)でいくべきであって、その上で知恵を絞ればいい。

マッキンゼーは考えを整理するネタを提供してくれるのでありがたい。

おしまい。

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