2016年12月16日金曜日

マッキンゼーの日本農業効率化論その2

レポートのなかでカーギルやスタバのことがでてくる。以下引用。
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上記の内容(効率化とエンドマーケットとのコラボ)は、既に数多くのバリューチェーンや地域で活用されている。例として、開発途上国のココアやコーヒーなどの高付加価値作物、また、米国の大手ビール企業に納品する麦生産者の麦生産 が挙げられる。例えば :
ƒ スターバックスはコスタリカとルワンダに生産者支援センターを設立し、現地の生産者に生産コストの削減、真菌感染症の感染の抑制、コーヒー品質の向上、そして、プレミアムコーヒーの 生産増加のためのリソースや助言を提供している。さらに、生産サイクルにおいて生じる現金コストを負担する生産者に融資する組織に対し、資金も提供している。
ƒ カーギルは2500以上のフィールドスクールを設立し、生産者にココア生産管理および持続可能性向上のベストプラクティスを教えている。同スクールで学んだコートジボワールのココア生産者の収益は53%増加した。さらに、カーギルは Cargilll Coop AcademyというミニMBAのようなプログラムも設立し、生産者に必要なマネジメントスキルなどを教えている。

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我が輩がまずひっかかったのはここだった。

農業のアセット(資産)は、土地。他にあるか?ない。
農業のリソース(資源)は、水と土と日光と人間の介入。他にあるか?ない。肥料っていうのは、日本の高価格高品質の代表といえる完全有機農業なら、必須ではなくせいぜいのところ二次的な投入要素だ。また人間の介入手法も、日本では百花繚乱。我が輩の住む諏訪郡だけでも、「師匠」と呼ばれるランクの人たちがうじゃうじゃいる。「フィールドスクール」?「ミニMBA」??こういうのはあくまで途上国のプランテーションの話でしょう。

ここで考えなければらないのは、農業で基本的なアセットである土地に、なぜインベスターが投資しないのか?言い方を変えれば、金があるなら土地を買って自分で農業やったらええやん、ということ。テクノロジーがあるというのなら、なぜ自前で畑を耕さないのか?

・・・それは、自分が体を動かして仕事をしたくないから。他人を雇って働かせて、自分たちはマーケットに近いところでいちばんおいしい部分をスキミングしたいから。それに尽きる。

製造業なら誰でも知っている。原材料を安定して供給してほしいなら、川上にさかのぼって自前で原材料をつくる。原材料のコーヒー豆やカカオを安定供給してほしいなら、自前でやればいい。なんでそれをやらないのか?手間ひまがかかって、あんまり旨みがないから。外部条件(気候や買取価格や水)の変動に弱いから。時間あたりの報酬が安いから。

だから、顔が見えない農民にぶんなげたい。顔を知りたくない。なんでか?値段があわなくなったら切り捨てるから。しかし効率よくやってほしいので、技術を教えてあげよう。自分たちの求める値段と合ったら買ってあげてもいいけれど、そうでなかったら他から買っちゃう。自由市場だから仕方がないよね。買って欲しかったら努力しな。

「僕は君たちに武器を配りたい」の瀧本哲史さんも、とてもいいことを書いてるんだけれど、最後にひっかかったのはそこだ。なんでインベスターになるんだよ?金があるなら、自分でアセットとリソースを用意して、自分で体を動かして生産すりゃいいじゃないか。

けっきょくのところ、自分でからだを動かしたくない人はインベスターの道を歩み、自分で体を動かす人は自営業の道を歩む。そういうことなのだろうな。

そこがグローバリゼーションとローカリゼーションの境界になる、と思う。自分でからだを動かさない人はグローバル化に賛同し、自分でからだを動かす人は反グローバリゼーションになる。農業は、基本的に反グローバリゼーションなのだと思う。だからマッキンゼーみたいにグローバリゼーションの文脈で農業を論じると、コスト削減とか、サプライチェーンの最適化とか、ディマンドとのマッチングとか、アグリテックへの投資なんていうピンボケの結論しか出てこない。

つづく。

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