2021年8月4日水曜日

アフガニスタンのこと

https://tunein.com/podcasts/News--Politics-Podcasts/Scott-Horton-Show---Just-the-Interviews-p1229749/?topicId=164842148

スコット・ホートンのポッドキャストでもこのところアフガンの話(上のリンクもそのひとつ)が多いのだが、インタヴューされるほうがおもに西洋人なので(英語の放送だからしかたがないのだけれど)ちょっと違うんじゃないか、この人らひょっとして地面を知らないんじゃないかというところがままある。

特に気になる点をあげておく。備忘録的に。

1. タリバンという言葉の定義というか、使用法。

西欧人はタリバンを、アルカイーダとかISと同じような軍団だと思っているようだ。

中村哲さんの受け売りをすると、「アフガン人なら誰もがタリバン的な要素をもっている」のであって、それは客人へのもてなしと復讐を社会規範とする農村共同体そのものである。いわば皮膚のようなもの。さらに受け売りをすると、アルカイーダとかISは専門的な訓練を感じさせる戦略や戦術をもっている。タリバンはただの半農半兵で、日本でいえば戦国時代の農民とか一向一揆に近い。

2. 言語、民族、部族の違いとスンニ・シーアの違い

さらに西欧人は、タリバンか否かというのと、パシュトーか否か、そしてシーアかスンニかを同じレベルで混乱しているように聞こえる。

しかし我がマブダチのヴァヒッドくんが言ったごとく、「アフガン人はイランにいるあいだはシーアの顔をしとる。」

喩えて言いえば、君はギタリストで、マイク・スターンのようにジャズのフレーズも得意だし、ロックのフレーズも弾けるとしよう。ギタリストとかミュージシャンというのがアフガン人であり、タリバン的人生である。ジャズとロックを自在に行き来するのは、スンニの環境ならスンニの顔、シーアの環境ならシーアとして行動する、そんな感じじゃないのかな?

やはりマブダチのハルーン博士が言っていた。「ついこないだまでシーアとスンニは通婚するくらいの仲だった。」

3. 周辺諸国はつねにアフガンを狙っているという思い込み

たしかにパキスタンなんかスケベー心を隠そうともしないんだけれど、パキスタンのパシュトーが果たしてアフガンと同舟してパシュトゥニスタンを作りたいかと言えば、そんなことはぜんぜんないんじゃないか。なんといってもパキスタンはいろんな面で緩い。バロチスタン州は知らないけれど、パンジャビ州なんて楽しい場所だと思う。誰がいまさらシャリアに戻りたいものか。クソ暑いからアフガン高原は魅力的だろうけれど。

4. 現代の戦争とは何なのか?

これが最後の違和感。ふたたび中村哲さんの受け売りだが、「アメリカ軍は空から地上に降りることができない。」

地上に降りたら殺されるし、負けてしまう。そしたら、空中から爆弾を落とすだけの戦いって、(これはシリアでもイエメンでも同じなのだけれど)いったいその戦争で何をしようというのか?

素人だからよくわからないだけなのだが、いままでの戦争というのは基本的に陣地とりであって、歩兵が首都とか拠点を取るとゲームオーバー。その歩兵を守るために空軍がある。しかし昨今の欧米による戦争は、空から爆弾を落とすだけ。

欧米人(+サウジ人な)は上級国民なので、(アフガンやイエメンやイランなど)貧乏人の軍隊と対等に喧嘩しないし、喧嘩しても負けてしまう。だから経済封鎖とかせいぜい空爆で、でもいったい何が目的なのか?

高級国民が空から爆弾を降らせ、地元の軍閥に金と武器を渡して歩兵部隊をつくる。あちこちの軍閥にそれをやるから、中央政府がなくなったとたんに内戦になる。でもみんな兄弟みたいなもんだから、農繁期になると戦争をやめて村でいっしょに飯を食ったりしている。そんなところにジョージ・アホ・ブッシュいわく「女性にブルカをたぶせないために爆弾を落とす」??

5. アフガンの地下資源が欲しい(中国)人たち

あんな荒涼とした山を、誰が好き好んで掘り返すかね?気候変動で旱魃がひどくなって、中国が金をだすから軍閥が人を集めてイリジウムを掘る、というのならアリだと思うけれど。

我輩はアフガンを見たことがないのでいまいちよくわからないのだが、カーブルは果たして産業都市なのか?それよかラホールみたいな、王宮と城壁の古い街で、旱魃になると食い詰めた100万人の農民が流入してスラム化する、農村のバッファーみたいな場所じゃないのかと思う。

そしたらタリバンがカーブルを取ることに、政治目的(つまり外国からの援助資金が流入するチャネルとしての汚職まみれの街)以外の何かがあるのだろうか?

戦争が終わる -> 都市に産業がおこる -> 経済成長して雇用が増える -> 民生と民心が安定する・・・なんてのは日本みたいに近代化に成功した場所でのみ言えるのであって、アフガンでそんな近代化モデルを想像することができない。あちこちに繊維の街や炭鉱の街はできるのだろうけれど。

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