ジョン・ミアシャイマー的分析:オデッサの沈黙:領土を取らずに国を殺す、ロシアの新しい戦略
https://www.youtube.com/watch?v=abkPazKhuiY
ワシントンの連中を不安にさせる質問から始めよか。 もし、この戦争の最大の転換点が、ドンバスの塹壕でも、派手な反転攻勢でもなく、ウチらが余所見(よそみ)しとる間に「沖合で静かに」起きてたとしたらどないする?
これまでの2年間、ウチらは「戦況は膠着しとる」「時間は西側にある」っていう安心させるストーリーを聞かされてきた。黒海は封じ込められ、ロシア海軍は無力化された……とな。地図の数キロの動きや、死傷者の数、支援パッケージの額ばっかりが議論されてきた。けどな、歴史は「『活動』と『戦略』を混同する勢力」にはいつも冷酷や。
今、オデッサ周辺で起きたんは、単なる「出来事」やない。「断絶(ラプチャー)」や。ウクライナだけやなく、NATOの信頼性、世界の食料安全保障、そして新しい世界秩序そのものを変えてまう戦略的シフトなんや。
オデッサの街にはまだウクライナの旗がなびいっとる。劇的な包囲戦も、上陸作戦もなかった。だからみんな見逃したんや。21世紀のパワー(権力)は、もはや「占領」を必要とせえへん。必要なんは、「機能」「アクセス」「リスク」をコントロールすることなんや。
ロシアはオデッサを「占領」してへん。「使えんようにした(unusable)」んや。 これで西側の戦略的な大欠陥が露呈した。「領土を失わなければ、支配権は変わってへん」という思い込みや。「時間は民主主義に味方する」という思い込みや。「カメラが向いとる場所で戦争が決まる」という思い込みや。
ウクライナの経済の動脈であるオデッサが、占領されずに無力化された。そしたら「主権」って一体何なんや? NATOが目の前でこのシフトを見過ごすなら、「抑止力」って何なんや? もし「食料、貿易、海へのアクセス」が戦場の勝利より結果を左右するなら、ウチらはそんな世界への準備ができとるんか?
最大の洞察を教えたるわ。ロシアは戦争の結果を変えるために、陸上で勝つ必要はなかったんや。「領土」やなくて「機能」の支配権を勝ち取ればよかった。その場所こそが、オデッサ周辺の海域やったんや。
「どっちがどの街を支配しとるか?」なんて問いは、20世紀の遺物や。この戦争の決定的要因は、経済の動脈、リスク環境、戦略的アクセスのコントロールや。これらが無力化されたら、主権なんて紙の上の名目だけで、中身はスカスカや。
オデッサにはロシア兵はおらん。でも、もはやウクライナの「世界へのゲートウェイ(玄関口)」としては機能しとらん。商船は制限され、保険料はアホみたいに高く、海へのアクセスはロシアが事実上決定しとる。これこそが「風景を変えてまう事実」や。
ロシアがやったんは、戦術的な成功やない。「戦域レベルの戦略的勝利」や。黒海の「運用環境」を作り変えることで、ウクライナの経済的存続能力を叩き、西側の抑止力の限界をさらけ出した。エスカレーション(激化)の基準に触れんように、静かに、スマートにな。
派手な地図の変化がないから、大衆には見えへん。そこにあるんは「不在」や。空っぽの航路、静まり返った港、サインされへん契約書、動かへん貨物……。「不在」はニュースにならん。でも戦略的には、この「不在」は壊滅的や。
ウクライナが近代国家として機能し続けられるかは、穀物、金属、工業製品の「輸出能力」にかかっとる。これは「細かい話」やない。財政の安定、通貨の強さ、政治の自律性の土台なんや。オデッサが無力化されたら、戦場でどれだけ頑張っても、ウクライナの戦争継続は「外部からの支援」に構造的に依存しきることになる。
これはNATOにとっても大問題や。抑止力っちゅうんは、「戦争になる手前の段階」で相手が戦略環境を作り変えるのを防げると思われとるからこそ機能するんや。でもロシアは「線を越えずに、勢力図を書き換えられる」ことを証明してしもた。モスクワから見れば、これはエスカレーションやない。「最適化」や。政治的な体裁は残したまま、海路、リスク計算、経済の未来をコントロールしよるんや。
これが一番不愉快な事実や。もし「実質的な機能のコントロール」が「形式的な主権」より大事なら、ウチらの「勝利」や「安定」に対する前提は全部オワコンや。この戦争はもはや「ウクライナが領土を守れるか」やない。「占領されずに勝つ方法を学んだロシア」の隣で、経済的に自律していられるかっちゅう話なんや。一度これに気づいたら、もう元には戻れへんで。
なんでこうなったんか。オデッサ回廊がなんで決定的軸になったんか。これを「ロシアの思いつき」やと思ったらアカン。これは、NATOも冷戦も、今のロシア国家ができる前からある、「長年の戦略的ロジックの再起動」なんや。
ロシアが大陸帝国として現れた瞬間からの構造的問題……それは「地理」や。広大なユーラシアに広がる陸軍国でありながら、一年中使える「不凍港」へのアクセスが限られとった。これは単なる不便やなくて、存続に関わる弱点やった。
だから18世紀のエカチェリーナ大帝の時代から、黒海はロシアの戦略の中心やった。1794年のオデッサ建設は、都市開発やなくて「戦略的解決策」やったんや。ロシアの内陸部と世界市場をつなぐ玄関口や。その後のクリミア戦争も、二度の世界大戦も、トルコ海峡を巡る冷戦の対立も、全部この「黒海沿岸の支配」が核心やったんや。
1991年のソ連崩壊で、この何世紀もかけて作った戦略的構造がぶち壊された。クリミアとオデッサが、独立したウクライナのものになった。西側から見れば「決着した歴史」やけど、モスクワから見れば「一時的な異常事態」やったんや。
ロシアの行動を「衝動的」とか「イデオロギー的」と言う分析家は、この「継続性」を見逃しとる。2014年のクリミア併合は、ナショナリズムやない。ロシアのプランナーが「不可欠」と考える軍事・海軍の拠点を取り戻すためやった。
でも、クリミアだけじゃ足りん。黒海の北西部を支配(あるいは拒否)せんと、クリミアは孤立し、補給線が脅かされる。だからロシアの軍事ドクトリンは、クリミアと周辺の沿岸アーク(弧)を「一つの作戦上の問題」として扱ってきたんや。
ここに西側の政策ミスが入ってくる。NATOの東方拡大と、ウクライナの西側統合のシグナルが、ロシアの「歴史的懸念」を「目先の戦略的脅威」に変えてしもた。ロシアから見れば、NATO側のウクライナが黒海沿岸を全部握るんは、「北東の角っこに閉じ込められる」ことを意味する。地中海へのアクセスはトルコ次第になり、戦略的縦深(奥行き)は消える。
ワシントンやブリュッセルはこれを「主権に基づいた政治プロセス」やと思った。でもモスクワは「包囲網」やと思った。この認識のズレが戦争の深い原因や。
2014年のクリミア奪取は第一の修正やったけど、根本は解決してへんかった。オデッサの海へのアプローチに影響力を持たんと、ロシアの南の脇腹(フランク)は弱いままや。だから、今起きとるんは「エスカレーション」やない。1991年に中断された戦略的なアークの「完成」なんや。
西側の分析は歴史を「背景」にするけど、モスクワの計算では、歴史こそが「設計図」なんや。
数字を見れば、オデッサ回廊がいかに「戦略的大地震」かよくわかる。 開戦前のウクライナ経済の90%以上は、海と鉄道で動いとった。海へのアクセスを邪魔したら、単に経済を遅らせるだけやない。「ウクライナがどんな種類の国家でいられるか」を変えてまうんや。
2021年、ウクライナの港は1億5,730万トンの貨物を扱っとった。穀物と金属のパワーハウスや。その中で、オデッサ港だけで2,250万トン以上を扱っとった。 そして穀物や。ウクライナは年間4,720万トンの穀物を輸出しとった。これ、地域的な話やなくて、世界の供給そのものや。2021年には穀物輸出の96%が黒海経由やったのが、2022年には69%に落ちた。
国連主導の「黒海穀物イニシアチブ」があったけど、あれは戦略的に見れば、「システムの存続がロシアの政治的寛容とリスク管理に依存しとる」ことを証明しただけやった。主権的なコントロールやなかったんや。
結果どないなったか。2022年のウクライナのGDPは29.2%も激減した。これは単なる戦争のダメージやない。「輸出の絞め殺し(strangulation)」と財政的なストレスの結果や。 軍事費も異常や。2024年、ロシアの軍事費は1,490億ドルでGDPの7.1%。対するウクライナは647億ドルやけど、GDPの34%や。世界一重い軍事負担や。
オデッサが大事な理由は簡単や。国家の「血流」そのものやからや。 血流を静かに、閾値(いきち)の下で、じわじわと絞っていけば、国旗は掲げたままでも、経済も戦争努力も政治的未来も、ゆっくりと酸素を失っていくんや。
ロシアのやり方は「電撃戦」やなかった。「蓄積のキャンペーン」や。 2022年後半からの攻撃は、派手な勝利やなくて、システムの「連結組織」……鉄道の結節点、橋、燃料デポ、変電所を狙った。一つひとつは戦術的に見えても、パターンは明白や。ロシアはオデッサの景観やなくて「接続」を破壊しとったんや。
例えば「ザトカ橋」。ルーマニア国境とオデッサを結ぶ最重要ルートやけど、完全に壊すんやなくて、何度も何度も叩いて「信頼できん」ようにした。破壊やなくて「信頼できないこと(unreliability)」こそがターゲットやったんや。
海では、正式な封鎖はせえへん。そんなことしたら国際的な反発を食らうからな。代わりにモスクワは、黒海北西部に「重層的な拒否システム」を広げた。クリミアの防空システム、沿岸ミサイル、潜水艦……。 結果、封鎖より効果的な「リスクの場(risk field)」が生まれた。船を沈める必要はない。「保険をかけられんようにする」だけでええ。保険料が跳ね上がり、海運会社が自発的に撤退する。禁止されてるからやなくて、「合理的やないから」船が来なくなる。これが、武力だけやなくて「市場のロジック」を使った支配のシフトや。
ウクライナも勇敢に戦った。水上ドローンでロシア艦隊を脅かし、ロシアも無敵やないことを示した。一時はバランスが戻るかと思った。 でも、それを続けるには資源と規模がいる。ここでの非対称性が決定的やった。西側の支援は技術的には高くても、量は限られ、到着は遅れた。防空システムは脅威にさらされとる都市が優先され、ドンバスの東部戦線にリソースが吸い取られた。南部は戦略的に手薄になった。
ロシアは南部でウクライナ軍を打ち負かす必要はなかった。ただ、「増援を高くつかせ、維持を疲れさせる」だけでよかったんや。 月を追うごとに、実質的なコントロール・ゾーンは広がった。ウクライナの海域は細い沿岸の帯にまで狭まった。
2024年中盤、転換点はもはや否定できんようになった。 港はまだある。街も生きとる。でも、ウクライナの「経済の動脈」としての役割は消えてしもたんや。


0 件のコメント:
コメントを投稿
登録 コメントの投稿 [Atom]
<< ホーム