2021年12月24日金曜日

ぺぺ・エスコバルがマックス・ブルーメンタールのグレイゾーンにビデオ出演

 https://thegrayzone.com/2021/08/21/us-afghanistan-pullout-cia-opium-pipeline/

ぺぺ・エスコバルというジャーナリスト。過去アーカイブをユーチューブから抹消されたというくらいなので、いわゆるインベスティゲーション・ジャーナリストなるカテゴリーに属する正義の人なのだが、我輩の見たところをメモしておくことにする。

1. CIAがアフガンのアヘン・ヘロインビジネスで相当の運営費を稼いでいた・・・という旬のフレッシュな話題を提供してくれるありがたい存在。なのだが、しばらく読んでいるうちに退屈になってしまう。いまいち深掘りしないところが飽きさせる原因じゃないか。

2, CIAのアフガンビジネスもそうなんだけれど、それがいったい全体(たとえばアメリカの軍産複合体ビジネスモデル)にどれくらいのインパクトがあるのかがよくわからない。

3. ヒントをいっぱいくれる。彼が注目しているつぎの麻薬生産&トレード中心地は東南アジアのいわゆるゴールデントライアングル。ミャンマー軍のブイブイさ加減を見るにつけ、中国に見放されたミャンマー軍部のいったいどこがスポンサーなのだろう?・・・そうか、10年まえからアメリカはバンコクの大使館体制をやったら強化してきたじゃないか。大使館アタッシェのほとんどがCIAと傭兵部隊なら、なんとなくつながりが見えてくる

4. 一路一帯のことを90年代から書いているのは知っているけれど、そのうちにこの人は中国語を読めないし話せない、というのが明らかになってくる。アフガンのことを9.11前から書いているのも知っているけれど、そのうちこの人はペルシア語もパシュトー語も話せないというのがわかってくる。たとえば、Khorasanという地域のことをぺぺさんは「コラサン」と発音する。我輩がパキスタンにいるあいだ、ウルドゥー話者のみならずパシュトー話者でもみな喉奥から出す擦れる音で「ホラサン」と正しく発音していて、外国人で現地のことをよく知らない人だけがコラサンと呼んでいた。事情をよく知らなかった我輩が「コラサン」と言ったとき、誰もがおだやかに「ホラサン」とさりげなく訂正してくれたのものだ。そしてぺぺさんはトルクメニスタンやウイグルのことを書いているにもかかわらず、トルコ語もウイグル語もできそうにない。

5. ぺぺさんが「俺の内部コンタクト」とか「俺のニ内部ュースソース」とかいうのも、したがって英語かスペイン語ができる人に限られるようだ。誰もがそう考えると思うのだが、英語とか西欧の外国語ができるアジア人が西欧人ジャーナリストに内部情報を提供するとき、なにか意図があって提供するにきまっている。その信憑性、位置づけ、重みづけを補強するのが現地語による調査。その現地語ができなかったら、せっかくのニュースはいまいち深みを欠く結果となる。ぺぺさんのストーリーは面白いのだが、ずっと追っかけるつもりにならない、じきに飽きてしまうのがそのへんの深みのなさなんじゃないか。



2021年12月16日木曜日

ロシアとウクライナ

 スコット・リッターという人は元海兵隊で国連の兵器査察官なんかを務めたこともあるそうな。いまはRTにコラムを投稿したり、反戦ラジオにゲスト出演している。

そのリッターさんがマックス・ブルーメンタールの「モダリット・レベル(温厚反乱)」のビデオで面白いことを語っている。つぎの理由から、戦争にはならないとリッターさんは考えている。

https://www.youtube.com/watch?v=NLpPyuzxSf4

1. 30年前の冷戦時代にアメリカ軍は人数、装備、訓練すべてが充実していて、インテリジェンスを提供するCIAも精鋭分析官が揃っていた。いまや精鋭は引退し、アメリカ軍はいざ出動となっても人数も揃わず、装備があったとしても訓練していないのでコーディネーションができるような状態ではない。だからウクライナのクレージーな大統領がトリガーをひいても駆けつけることができない。それはバイデン政権もよく知っている。

2. ウクライナ侵攻したらアメリカはロシアに対し国際銀行決済システムSWIFTから締めだすと脅しをかけている。たしかに締めだされたらロシアは困ることは困るんだけど、じつのところ困るのはアメリカとEU。EUは天然ガスの47%をロシアから輸入しているし、その通過料金でかつかつ食っている状態なのがウクライナ。アメリカも天然ガスの18%をロシアから輸入している。ロシアをSWIFTから締めだしてまず困るのはEU、そしてそれでなくてもインフレが進むアメリカ。

てなあんばいで、バイデン政権は強いアメリカを演出しているのだけれど、じつのところ事態が沈静化するのを願っているにちがいない。

リッターさんはRTでイランとロシアのことについて書いている。こっちもおもしろい。

https://www.rt.com/op-ed/543323-iran-israel-war-attack/

イランは先週水曜日に、「もしイスラエルが軍事的攻略をおこなったらイランはイスラエルのここにミサイルを撃ち込む」というマップを公表したそうな。

イスラエルは強いようで、じつはアメリカの継続的支援がなかったらイランと戦争することはできないらしい。そのアメリカがイランとのJCPOAに復帰しようとしているので、こちらもイスラエルの思い通り戦争というふうにはならないだろうとのこと。

SWIFTから締めだされても、ロシアは中国に天然ガスや原油を売ることができる。すでに締めだされたイランも同様。ということは、SWIFTカードを見せるたびにカードのありがたみが薄れていくという困った状態になっている。

帝国の崩壊というのはこんなふうになっていくのだな。

パキスタンにいたとき、自衛隊の元准将で地雷を撤去するNGOの活動をしている人と知り合った。その人の話が興味深かったのは、地雷のタイプ(足で踏んだら空中に飛びあがって炸裂し、半径何メートルの範囲にいる人たちの下半身を攻撃する)とか、それが幅どれくらい x 長さどれくらいの地域にいくつくらい埋められている・・・なんていう話だった。そんなふうにして「脚を失った人たちが農作業ができなくて生活に困るようになる。それが気の毒なんです。」という。

軍人さんは理系の人たちなので、下部構造から考える。そのために必要な情報を収集・分析する。そして対処法を考える。だから説得力がある。