2021年7月27日火曜日

タリバン復権はアメリカ帝国凋落の道標

 https://www.rt.com/op-ed/530280-us-withdrawal-taliban-resurgence/

投稿者のクリス・ヘッジはピューリッツアー賞をもらった人なのだとか。いわく、

「20年間の戦闘、納税者の1兆ドル、10万人のアメリカ兵、ハイテクガジェット、人工知能、サイバー戦争、ヘルファイアミサイルとGBU-30爆弾で武装したリーパードローン、グローバルホークドローン高解像度カメラ、エリートレンジャー、ネイビーシールズと空中コマンドで構成される特殊作戦コマンド、ブラックサイト、拷問、電子監視、衛星、攻撃機、傭兵軍、地元有力者への賄賂、数百万ドルをかけて訓練したのにやる気をみせない35万人のアフガニスタン軍。ついに最貧国の60,000人のゲリラ軍に勝てなかった。

「ギリシャ、ローマ、中国、オスマン帝国、ハプスブルク、ドイツ帝国、日本帝国、イギリス帝国、フランス帝国、オランダ帝国、ポルトガル帝国、ソビエト帝国を含む、過去4000年間の約70の帝国のほぼすべてが、同じような軍隊組織をもっていたのに崩壊した。共和政ローマの最盛期は2世紀しか続かなかった。帝国は一定期間で崩壊するよう設計されている。

「植民地を統治するために考え出された残虐なメカニズムはそのまま国内統治に適用される、とマーク・トウェインはいう。等云々。



2021年7月20日火曜日

ヒラリーが推したニューシルクロード

この記事(ひとつ前の投稿で紹介済み)を読んでいて思い出した。

https://www.rt.com/russia/529695-afghanistan-eurasia-battle-center/ 

2011年ごろ国務長官だったヒラリーが推していたのがニューシルクロード。トルクメニスタンの天然ガスをアフガン経由でパキスタンとインドに送ろうというプロジェクト。2012年から2014年までパキスタンで働いていたころ、我輩はこのことを知って、このオババは真剣にアホじゃないかと思ったものだ。

案の定というか必然的に、中国にいやがらせをしようというだけの動機でぶちあげられた与太話は自然消滅した。上の記事でも、「そもそも誰も必要としていなかったし、たんに一帯一路への対抗策」とあっさり斬られている。

ことほどさように、ヒラリーが当時ぶいぶい言わせていたのか、CIAがカーブルの路上も歩けない、ましてやアフガンの辺境地勢など知る由もない情報未満部員のあつまりだったのか、あるいはその両方だったのか。誰も何も言えなかったし、言うほどの智者がいなかったということなのだろう。

島国で育った日本人である我輩は、違う言語で、違う文化の人たちが地続きの場所で暮らしている恐怖を具体的に想像することができない。きっとアメリカ人も同様なのだろう。

アメリカ軍撤退後のアフガン

 ぺぺ・エスコバルという人はいろんなことについて調べて書いているジャーナリスト。中国とか香港とか一帯一路についてもちこちに書いているけれど、中国語はできないみたいで、おもに英語の二次情報を集めているようだ。それでもときどきおもしろい観点が提示されている。アジアタイムズの記事もそう。

https://asiatimes.com/2021/07/new-great-game-gets-back-to-basics/

タジキスタンのドゥシャンベで開催された上海協力機構の会合にはロシアがオブザーバーとして出席していて、タリバンがあちこちの参加国と話し合ってテロ根絶の方向で合意したそうな。ということは、アメリカ軍撤退後のアフガンで誰がテロをやるかというと、ぺぺさんによると18000人残っている傭兵部隊とアメリカ大使館(とほぼ一体化しているCIA)と、大使館を守るために残された600人のアメリカ兵。

ちなみにアメリカ大使館といっても、たとえばパキスタンのイスラマバードの大使館には2012年ごろの時点で数百人いて、その1/3くらいがCIAみたいな話を聞いたことがある。アフガンなんて推して知るべし。カーブルの大使館を守るためだけに600人の兵隊を残すというのだから。

ところでアフガン駐留アメリカ軍で働いていた、おもに通訳だったアフガン人とその家族18000人くらいがアメリカに移住するビザを待っているのだという。

https://www.rt.com/usa/529663-afghanistan-allies-fort-lee-visas/

これはたまたまなのだろうけれど、ビザ待ちの18000人と、アフガンに残る傭兵部隊18000人がほぼ同数。通訳とその家族はアメリカ軍のために働いていたとわかると殺されるに決まっているので、アメリカに移住したいということ。それにしても、傭兵部隊とか大使館員とかCIAがこれから通訳なしでどう活動するというのだろう?

アフガンにはふたつの公用語があって、ひとつはパシュトー、もうひとつはダリー語。このダリー語はほぼペルシア語。ペルシア語はさほどむつかしい言語ではないので、アメリカ人でもペルシア語ができるやつは多いだろうし、アフガンにいるCIAでもはんぶんくらいはペルシア語ができるんじゃないかな。でもペルシア語ができるといっても、白人があちこちうろうろすると目立つだろうな。アフガン系のアメリカ人なんてそもそもCIAに採用されないだろうし。3代さかのぼって身上調査するらしいからね。これはじっさいに応募したコリア系アメリカ人がぼやいていたことだ。

さて別の記事によると、潜在的テロリストとしてトルキスタンイスラム運動とかISホラサンとかがあり、さらにシリアで活動していたウイグルグループがアフガン北部に拠点を移しているという。

https://www.rt.com/russia/529695-afghanistan-eurasia-battle-center/

ロシア軍はウズベキ軍と共同で(アフガンとウズベクの)国境沿いに数千人の戦力を移動させているという。

https://www.rt.com/russia/529710-uzbek-troops-border-afghanistan/

数千人という規模が何を意味するのか素人としてはよくわからないのだが、潜在的テロリスト勢力に対する示威活動と考えるレベルなんじゃないかな。



2021年7月17日土曜日

ドナルド・ラムズフェルド死亡記念

 https://soundcloud.com/libertydotme/the-scott-horton-show-andrew-cockburn-on-the-catastrophic-legacy-of-donald-rumsfeld

「彼ほど死んだことが喜ばれ、またいなくなることが世界平和のためになったやつはいない」ということで、スコット・ホートンはアンドリュー・コックバーンを招いてラムズフェルド死亡記念号。

コックバーンというのはいろんなことをよく知っていて、聞いているととてもためになる。たとえば、なんでイスラエルが長い間イランを敵視しているのか、またアメリカのネオコンがなぜイスラエルのシオニストと親和性が高いのか、そういう基本的なことを考えるうえでのヒントをくれる。

イスラエルに関してはけっきょく、アラブ圏でイスラエルが存在感を増し、あわよくばアラビアの石油ブローカーとしての地位を確立したいのだと、そのためにはイスラエルよりも強い国をつくらせてはならないのだ。というわけでサダム・フセインは殺され、イラクは破壊され、カダフィも殺されてリビアも破壊され、いまシリアが破壊されている。

そしてそれはネオコンのやろうとしていることとぴったり符合している。


2021年7月8日木曜日

NATOは旧ソ連勢力圏の4/7を取ってしまった

 https://tunein.com/podcasts/News--Politics-Podcasts/Scott-Horton-Show---Just-the-Interviews-p1229749/?topicId=164227899

このインタビューでジェームス・カーデンが、「NATOは旧ソ連勢力圏だった東欧70万平方マイルのうち40万平方マイルを取ってしまった」と(たしか)言っていた。

またホストであるスコット・ホートンは「ウクライナが東欧だって?もっとずっと東の、トルコの北じゃないか。」という。

アメリカではなんでもかんでもロシアのせいだとマスコミが騒いでいる。ロシアのアグレッション(拡張政策)だ、という。いっぽうじっさいに、東方までずいぶん拡張してきたのはNATOのほう。

チェコもポーランドもバルト三国もノルウエーもフィンランドもロシアを恐れている、というのはほんとうにそうなのだろう。島国で生まれ育った我輩としては、地続きの恐怖というのをいまいちわからないし、東欧国家の恐怖心を想像するしかない。しかしながら、ロシアがいつかやってくるという恐怖と裏腹にあるのは、チャンスがあればこっちから出かけて行ってやろうじゃないかという性根なんじゃなかろうか。

欧州は、とくに西欧は文化人づらしているけれど、獰猛な肉食系の集まりであることを忘れてはいけないと思う。


原油価格の高騰はいつまで続くのだろうか

 OPECプラス(プラスというのはロシアのこと)の会合がUAEのわがまま(俺んとこにもっと割り当てよこせ=もっと汲みあげさせろ)で流会になったので、需給バランスがタイトになるという予測から原油価格が高騰している。

NHKでは石油情報センターがなんだかんだこじつけを発表しているけれど、けっきょくのところ需給関係で価格が決まるようだ。そう言ってしまえば身も蓋もなく、なんで高給を食んでいるのかということになる。

イランはJCPOAの枠で石油市場に復帰するといわれている。OPECプラスも、カルテルが成立しようがしまいが、原油を輸出しなければ財政がもたない。価格高騰がつづくと、市場が化石燃料を見放してしまう。

高値がつづいて安堵しているのはコスト高にあえぐアメリカのシェールオイル業者であって、いわばアメリカは高値をつづけるためにベネズエラやイランやロシアをいじめているというふうにいうこともできる。

中国は6月以来、ハイピッチで原油を買い付けている。しばらくは高値が続くだろうけれど、中・長期的に見れば価格が崩壊しないわけがない。

という見方が合理的だと思う。


アフガンの空港から撤退したアメリカ軍がタリバンに未開封の武器をたんと残していったとさ

 Sky News Shows Taliban Seizing Abandoned US Bases & "Treasure Trove" Of Weapons, Ammo

タリバンが首都カーブル制圧まで6ヶ月といわれていたが、この様子だと6週間くらいじゃないかとのこと。

ちなみにアメリカは政府とメディアこぞってシリアのアル・カイーダのトップを取り込むことになったらしい。

https://thegrayzone.com/2021/06/09/washington-positioning-syrian-al-qaeda-mohammad-jolani-asset/

ソヴィエト時代にアメリカがアフガンのタリバンを支援した、それと同じことをやっているようだ。懲りもせず。

2番目のリンクのグレーゾーンを主催しているのはマックス・ブルーメンソール。父親のシドニー・ブルーメンソールはビル・クリントン大統領の補佐官だった。おやじは有名人でどっちかというと体制派なのに、息子は立派に反体制を貫いている。名前でわかるようにユダヤ系。イスラエル政府によるユダヤ人の若者を支援するプログラムでイスラエルを訪問した経緯をインタビューで語っていた。もちろんイスラエル政府にもシオニストにも批判的で、グレイゾーンに現場の声を反映させている。とても興味深いジャーナリストだ。

2021年7月4日日曜日

アフガンからのアメリカ軍撤退が進む -> アフガン政府兵がタジキスタンに越境避難する

ねたもと

https://www.rt.com/russia/528326-afghanistan-taliban-border-tajikistan/

 迷走するバイデン政権が約束したアフガン撤退が予想以上に進んでいるらしい。在カーブルのアメリカ大使館を護衛するために600人くらい残すという話もあるらしい。そのうえに、アウトソーシングされた傭兵部隊をどうするのか誰もぜんぜん書かない。民間企業のやることなので情報情報公開する必要がないからしかたないのだろうけれど。

各地拠点都市がタリバンに制圧されていて、アメリカの空軍力による保護をうしなったアフガン政府軍の兵隊が、隣接するタジキスタンに流入している、というのが冒頭の記事。

アフガンの半分とタジキスタンはペルシア語圏なので、兄弟みたいなもんだ。イランに住んで働いていたとき、カスピ海のほとりのメシ屋でタジキスタンからきた爺さまと若い衆にあったことがある。爺も若いのも標準的なペルシア語を話していたのが印象的だった。ずいぶん距離があるのだから、もっと方言色が濃いのかと思っていたのだが。逆にテヘランで出会ったアフガン人のほうがクセの強いペルシア語だったような気がする。我輩はペルシア語についてはしろうとなので、ぜんぜんアテにならないが。

アフガン人がタジク人にまじったら、きっと区別できないんだろうな。ベトナム戦争のおわりのころに、アメリカが時間と費用をかけて育成した(と思っていた)南ベトナム軍が数日で人民の海に溶解してしまったのと同じく、アメリカが時間と費用をかけて育成した(と思っていた)アフガン政府軍も、きわめてすみやかに人民の海に溶解してしまうのだろうな。

アメリカのおせっかいって何だったんだろう?