2017年6月26日月曜日

カイザーリポート 第1088回 ファイナンシャライゼーション

[KR1088] Keiser Report: Financialized Economy
Posted on June 24, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/06/kr1088-keiser-report-financialized-economy/

ファイナンシャライゼーションというのは、一部の人間が債務などのメカニズムを悪用して巨万の富を集める詐欺的手法のこと、とェームズ・ハワード・クンスラーが定義します。
ステイシーはそのクンスラーのブログを引用しつつ、いつかこのシステムは崩壊するに違いないと言います。
しかしマックス・カイザーは「この借金アパルトヘイト社会で上層の人間はゼロ金利で金を借りることができるが底辺の人間は10%とか20%の金利を払わなければならない」といいつつも「ゼロはいくらでも並べることができるから、このやりかたに終わりは来ない」といささかシニカルな見方をします。この二人の意見は今回めずらしく平行線のまま前半はおしまい。

後半は All the Plenary’s Men という映画をつくったジョン・ティタスがゲスト。
この映画は、麻薬カルテルやテロリストのために資金洗浄をやってきたHSBC(香港上海銀行)がなぜ一人の逮捕者も出さず、些細な金額で裁判所と折り合いをつけ事実上無罪放免されたのか、というテーマを追求したものです。(YouTubeで見られます。)
ジョン・ティタスによると、HSBCはFSBのメンバー。FSBとは金融安定理事会。このFSBはBISの下部組織。BISとはスイスに本拠をおく国際決済銀行。つまり国際決済銀行や金融安定理事会でSIFI(Sistemically Important Financial Institute:制度的に重要な金融組織)と認定された銀行は、テロリストや麻薬マフィアと取り引きしようがなにしようが、アメリカ大統領でも手に入らないような特権:犯罪行為の免罪符を得ることができるということです。
じっさいにアメリカの司法当局がHSBCを訴追しようとしたとき、イギリス政府から連銀に送られた訴追をやめろというレターのコピー(John TitusのWebページでダウンロードできるそうです)を手に、法律専門でもあったジョン・ティタスはその文章を解読していきます。

+++++
さてついでに。このカイザーリポートをYouTubeでみていたら、近所にギリシャの財務大臣だったヤニス・ヴァロファキスの本の紹介とインタビューの動画がありました。
Yanis Varoufakis blow the lid of EU’s hidden agenda というタイトルです。
https://www.youtube.com/watch?v=nGt82RFfg3U
ヴァロファキスが “Adults in the Room” という本を出して、ギリシャが財政破綻してトロイカが救済じゃなくて国家資産を解体・押収・売却にやってきたときの様子を生々しく、隠し録音も含め描写しているとのこと。
インタビューでヴァロファキスが簡潔に背景を解説しています。
2008年のリーマンショックで世界中のあらゆる銀行が事実上破綻した。
アメリカでは連銀が、イギリスではBOIがそれを救済するために大量の紙幣を供給した。
ところがEUはECBにそれを禁じていた。ECBは設立当初から民間銀行を救済することが禁じられていた。EUの財政は危機的だった。メルケルのドイツはじめフランスなど主要国はギリシアから収奪することにして、トロイカとしてやってきた・・・。

2017年6月25日日曜日

OPEC原産合意は2018年に崩壊するとマクアリーが予言

http://www.zerohedge.com/news/2017-06-22/macquarie-warns-opec-deal-collapse-2018

ファクトが上のグラフに図示されていて、
OPECの減産ぶんをアメリカのシェール増産が相殺している。

マクアリーが指摘する現状は、
アメリカのシェールを壊滅させる価格レベルに引き上げるのは無理。
自分の尻尾を追いかける犬みたいなもの。

いわく、OPECの選択肢は
1. 需要が回復するまで減産合意をつづける。
2. 合意を破棄する。

とのこと。



「中央銀行がデフレと戦うというのは間違いだ。なぜか?」抄訳と思索

Four Reasons Central Banks Are Wrong To Fight Deflation
Jun 22, 2017 6:40 PM
Authored by Jorg Guido Hulsmann via The Mises Institute,

デフレというのは物価が下がることである。通貨供給量が減ることとか、インフレ率が下がること、という解釈もあるが、じつはデフレがあるからこそ「通貨供給量を人為的に増大させることは正当化できない」ということなのだ。

デフレは危険、と通貨政策当局は言う。通貨当局がデフレと戦う、という場合はつぎのいずれかが根拠とされる。
1. 財の蓄積、ひいては生活水準に悪影響がある(と歴史は物語るという。)
2. デフレになると物価がさらに下がることを期待して人々は買い控えをするからである。
3. デフレになると昔の借金を返せなくなる。
4. 銀行が困るし、そうなると資金が流れにくくなる。
5. デフレで価格が動かなくなると雇用が減る。
6. 金利はゼロより低くしようがないから、雇用にも生産にも刺激策がとれない。

じつはどれにも嘘が含まれている。
第1に、デフレは財の蓄積に悪影響などない。物価が下がっても成長率には関係がない。
第2の点について、いきなりデフレになったときは確かにそうなのだが、いずれ誰もが必要なものは買わざるを得ない。腹が減ったら食わざるを得ないのだから、消費活動が停止することはありえない。デフレのせいで停滞する消費は無視できる程度だし、売られなかった財は他のより有効な用途に使われるだけだ。
第3の指摘は正しい。デフレ前の高い値段で取り決めた借金を返せなくなって、破産が増える。企業経営の立場からすれば困ったことなのだが、しかし社会全体で見れば資源は保全される。ここは大事なポイントなのだが、デフレで破壊されるのは財の貨幣換算された価値だけであって、ゆえに所有者は破産したりするのだが、財そのものは保全され、つぎの所有者の手に渡ることになる。だからデフレで社会全体の生産活動が停滞することはない。
第4に、デフレで銀行が困るというのはたしかにそうだ。借金を返してもらえなくなるし、企業倒産が増えたら銀行の流動性が危なくなる。ただし上の議論と同じく、倒産する銀行は大変だろうけれど社会全体として困ることはない。そもそも銀行は資源を創造しない。銀行は既存の資源をより有効に使う人のところに金を貸すだけだ。銀行が金を貸さなくても資源に影響はない。ただそれを使う人が入れ替わるだけだ。

こう考えると、金融当局があれこれ言うほどデフレはひどいことではない。デフレに大きな影響を受けるのは通貨供給を増やしつづけてきた中央銀行だ。デフレになると保有残高の少ない準備銀行や借金まみれの政府や企業や消費者の資産が減るのだが、つまりそれは資源が新しい手に渡るだけのことだ。
+++++

抄訳以上。以下は思索。

国家がやりたい放題やって大赤字をつくり、それを救済するためにインフレが必要となり、中央銀行(=国家)が紙幣を増刷する。
国家も企業も、いままでの人口増加とプラスの経済成長を当たり前のこととして運営や制度設計をやってきた。人口ピークを過ぎれば、企業の生産したモノもサービスも製造設備が多すぎるので当然ながら価格が下がる。それは政府の制度運営も、役人の数も同じことで、支出が多すぎる。しかし企業も政府も規模を縮小するには時間が必要。
しかし今のところ、中央政府はインフレ目標を設定して紙幣を増刷し、ゼロ金利で株式バブルを演出。地方政府は人口増加をめざして子育て支援や合コンを主催、企業は生産と販売を発展途上国に求め転戦。
企業が生産と販売を発展途上国に求めたので国内の雇用は縮小。労働者の4割が非正規という惨状で高いモノは売れない。でも企業は利益を追求するので、企業は内部に対して奴隷労働を強制し、外部は「穏やかなインフレ」という嘘を言いわけに、瓶もパッケージも箱もどんどん小さくし、形だけは食品だけど、ケミカル(増量剤や増粘材や香料)とカロリー(油脂と果糖)満載のバケモノが横行する社会になった。
原油の需要が激減していることからもわかるように、これは日本だけではなく欧米でも共通の現象。

告白すると、じつは1929年の大恐慌がなぜ起きたのか、そのメカニズムについて理解していない。永遠の繁栄といわれたアメリカでモノがつくられすぎたのならデフレになるはず。しかし結果はハイパーインフレ。「株価暴落がきっかけ」と言われても、いまの株式市場にくらべれば規模は小さく、庶民が全財産をつぎこむようなプレイヤーであったわけでもない。けっきょく、株価が暴落して信用が収縮した(銀行が金をまわさなくなった)のと、デフレでモノが売れないので企業が倒産し、多くの生産と雇用が失われたということか?それなら今の日本と同じで、デフレが進行するはず。生産と雇用は途上国に転戦しているんだから。そしてデフレをインフレに転化するには、膨大な通貨が供給されなければならないはず。

いまの日銀も連銀も欧州中銀もおなじように膨大な通貨を供給しているのだが、政府の嘘はべつとしてインフレになっている様子は見受けられない。

上の文章のとっぱしで唐突に「通貨供給量を人為的に増大させることは正当化できない」と出てくるのだが、ここまで考えるとそれが理解できる。
 中央政府は膨大な借金をインフレで解消しようとして(じっさいのはなしインフレでしか解消できないし、するつもりもないだろうから) 通貨供給量を増大させる。株価(というのは民間の経済活動を推し量る指標のひとつにすぎないのだが、それが聖典視され、株価をあげることが金科玉条にされてしまった)を高めるためにゼロ金利政策を行う。

おそらく、カイザーリポートが言うようにリーマンショックで信用が収縮し、金融機関を救済するためにゼロ金利政策をおこない、たまたまそれが株価を上げることにつながったので、麻薬のようにゼロ金利をやめれなくなったということ。

ゼロ金利なんてやらずに、徳政令を出したらよかったのかもしれない。国家は学資ローンですら待ってくれない。アベノミクスは完全に失敗、と我が輩が情報蒐集しているメディアでは定説になっているのだが、総務省と電通に支配されたわが国メディアはそれを紹介しない。

「創造的破壊」が近いのか?それとも天変地夭が先なのか?

2017年6月23日金曜日

カイザーリポート 第1087回 IPOじゃなくてICO

[KR1087] Keiser Report: ‘Initial Coin Offerings’
Posted on June 22, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/06/kr1087-keiser-report-initial-coin-offerings/

ビットコインのようなクリプトカレンシーをSEC(証券取引委員会)みたいなレギュレーター(規制担当機関)が今後どう扱うのか、という話です。
IPOならSECの規制対象だけれど、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)なら大丈夫、という考えていいのかどうか?
ビットコインのみならず、ふたりが話題にしている etherium というクリプトカレンシーもあり、後半で出てくるのはメタル(金、銀、イリジウム、パラジウムという4種類の稀少金属を組み合わせた金融商品です。そのなかでビットコインは、既存の体制に穴をあけることがそもそもの動機だったことから、SECのような規制当局の介入を避けるため巧妙に仕組まれています。
マックスいわく、建物(既存体制)を壊すことが目的なのに、やりようによっては建物をつくって「ここが標的ですよ」とペンキで描くようなことになりかねない、と言います。ステイシーは、いかに巧妙に当局の介入を回避したとしても、当局に目をつけられたら逃げられない、といいます。その例として、大航海時代のオランダで東インド会社が急性ちょいし、アムステルダムに取引場がつくられたこと、その後のチューリップバブルをきっかけに大量の人間が国王により斬首されたことを引き合いに出してステイシーがいいます。
「国王がチューリップバブルで大損を出したので多くの人が斬首された。怒らせてはいけない人間を怒らせた結果が斬首。」と、現代でも権力をもつ側の発想は変わっていないといいます。
マックスはクリプトカレンシーの本質を言い当てます。
リアルな生産品の生産と取引ではなく、人間の考えを貨幣に変えるのがクリプトカレンシーなんだ、と。
だからクリプトカレンシーに投資するなら、リアルなリターン、たとえば会社の経営権を握るという、その接点が問題になるのだ、と。
+++++

蓋し、マックスの指摘は的を得ています。
グーグルはバーチャルで財をなした会社ですが、その大部分は広告収入から。
広告というのは、リアルではなくバーチャルなものです。広告をいくら生産してもそれを食って生きることはできない。
考えてみれば過労死で話題になった電通も、広告というバーチャルなものを主要商品として、テレビ枠とかオリンピックのようなイベントの放映権のピンハネで儲けています。しかし人はイベントへの期待感とかテレビ広告枠とかテレビ番組を食って生きることはできない。同じように、プリンターのインク吐出ヘッドとかUSBメモリーを食べて生きることもできませんが、広告やニュースほど目に見えない存在ではありません。
わかりやすくするために、フィジカルな商品はドルとか円に交換し、バーチャルな商品は仮想通貨で交換する、というのはどうだろう?・・・しかしここまで考えると、それならドルとか円とかユーロはどこまでリアルなのか?という話になります。
連銀も日銀も欧州中銀も、ゴールドみたいな稀少金属のリザーブなしで紙幣を擦りまくっています。いまや紙幣ですらなく、金融機関の残高記帳のデビット・クレジットのみ。通貨世界がほぼバーチャル貨幣で占められる昨今、リアルな取引(共産党がひっくりかえったときの中国みたいな資本逃避も)こそビットコインという倒錯が起こりつつあるのかもしれない。

我が輩は天変地夭術のあかつきには物々交換にじゃなかろうか、そしたら味噌とかコメとか麹とか蒸留酒が有望だろう考えています。

2017年6月21日水曜日

インドがクリプト通貨を承認したのでビットコインが2700ドル。

標記がすべて。ビットコインはじめクリプト通貨は日本でもこないだこっそり(メディアはどこも報じなかったけれど金持ちには当然周知)国会で承認されましたよ。

シリア。アメリカ。イスラエル。イラン。ロシア。中国。

アメリカがシリア国軍機を撃墜したので、つぎの状況が明らかになりました。

1. イスラエル、アメリカ、サウジ(とカタール以外の湾岸諸国)はシリアを取りたいのでイスラム国を尖兵として支援。トランプはトボけたふりをしつつイスラエルのいいなりという意味で貫徹している。
2. ロシア、イラン、中国はシリアの国家主権を尊重するかたちでアサド政権を支援しイスラム国を攻撃。
3. トルコはカタールであれイランであれ、ガスパイプラインが通るシリアが欲しいのでイスラム国を支援しつつカタールも支援。要するにエネルギーを通じて欧州のきxたまを握ることができれば、自国に石油・ガス・鉄が出なくても生きていける。

どっかで聞いたのだけれど、アメリカの今回の攻撃は巧妙に、イラク・シリア国境のイスラム国分断を狙ったものだという。なぜかといえば、アメリカはイラクのイスラム国をテロリストとして攻撃し、シリアのイスラム国を反政府穏健派として支援してきたので、国境を越えて合流されてしまうとビミョーなことになるから、だそうな。それはそれでおもしろいじゃないか。

カイザーリポート 第1086回 カーマゲドン

Keiser Report: #Carmageddon (E1086)

https://www.youtube.com/watch?v=8X27nX2GoZU

2008年のリーマンショックの引き金になったのはサブプライムといわれる住宅ローンでした。救済のため連銀はじめ世界の主要中銀がゼロ金利を開始。ゼロ金利のおかげで借金が容易になり、それがほぼ10年間つづいて今回のサブプライム自動車ローンとサブプライム学資ローンを生む土壌になりました。
自動車をリースして、90年ごろなら5年くらいリースしたあと、リース終了後の「買取は1ドル」なんていうのがありました。しかし今はオートローンが不良債権化したためリース期間が6年7年と延び延びになり、買取のために金を払わなければならない状況だそうです。政府も金融機関も「もっと気楽に借金を!」と言い続けた挙句、どうせ借金するならと大きく高価な車が売れ、「新車販売は好調」といいつつその陰で不良債権は膨れ上がってきました。それは学資ローンでも同じ。医療費もインフレが続いています。なぜなら、借金で買いたい放題なので誰も価格のことを問題にしないから。
しかし最近になってアメリカの中古車相場が暴落しています。レンタカー会社は償却を終えた膨大な台数を売り払うため大変な金額を出さなければなりません。
金融機関はサブプライムローンを貸し出すことで業績を上げてきましたが、それは不良債権を増やし続けてきたのと同じことです。一方で年金機構など機関投資家は、このゼロ金利時代に8%から9%の利殖実績を上げなければならないため、ジャンクボンドやデリバティブに手を出さざるを得ません。

という話でした。

2017年6月19日月曜日

カイザーリポート 第1085回 ジェネレーションギャップ

[KR1085] Keiser Report: Generational Gap & Cuba Policy
Posted on June 18, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/06/kr1085-keiser-report-generational-gap-cuba-policy/

ミレニアムがベイビーブーマー(いわゆる段階の世代)以上の人工(=投票)集団になる、という話です。イギリス(とアメリカ)でそれが顕著に現れたのがさきの選挙。BBCは選挙特集でいろんなコメンテーターを出したのですが、30歳以下はひとりも出さなかった、ということに象徴されるように、既存メディアはミレニアムの投票動向をまったく知らないし、知らないことは報道できない。なぜか?ミレニアムの動態を知ろうとすればネットしかないからです。
ミレニアムはローン動向においても銀行など既存ファイナンス組織に頼ることなく行動します。ヒラリーが負けたのも、イギリスで労働党支持が伸びているのもミレニアムの票が動いたからだそうです。

ベイビーブーマーが長髪・ジーンズで現れたとき、エスタブリッシュメントはしかめっ面をしました。そのベイビーブーマーが旺盛に消費し、資源を食い荒らし、借金依存制度をつくりあげ、自分たちの年金は若い世代に押し付けて退場しつつあります。ヒラリーのようになかなか退場しない人もいますが(ヒラリーはベイビーブーマーの最長老世代とのこと)、彼ら彼女らが退場したあと、ミレニアムはたとえばビットコインで儲けた利益を「社会のために」使おうというような、ベイビーブーマーとは異質の世代です。その動向を既存メディアがいっさい知ろうとしないし、知るための方法もご存知ないまま、政権の意向や古い世代の価値観やスキャンダルだけを取り上げています。

2017年6月15日木曜日

カイザーリポート 第1083回 すべてバブル

[KR1083] Keiser Report: Everything in Bubble
Posted on June 13, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/06/kr1083-keiser-report-everything-in-bubble/

テリサ・メイの発言が「メイボット」というロボットとしておちょくられている、という話からはじまります。何を尋ねられても "Strong and stable government!" (強く安定した政府)あるいは "Brexit means Brexit!" (ブレギジットというのはイギリスのEU離脱)としか答えないロボットなのだそうです。
さてドクター・ドゥーム(というニックネームの経済学者)はすべてがバブル、と言っているそうです。マックス・カイザーはそれを受けてこう言います。

「バブルを担保にできないのだろうか?中央銀行のゼロ金利政策で企業が超ローコストの金を調達してFAANG(フェイスブックやアップルやアマゾンなど買いが殺到する銘柄)に投資するか、あるいは自社株買いをする。株価が上がるし、財テクで企業の業績も上がる。含み資産が増えるので、それを担保にさらに金を借りる。説明責任なんてどこにあるんだろう?」

さらに、こう言います。
「経済原理、市場の価格決定メカニズムがまったく機能していない。市場がなくなってしまったも同然だ。 」

ステイシーがいいます。
「アルゴボット(投資会社で電脳のアルゴリズムが瞬時にトレードを完結させること:ゴールド萬作みたいな少数の会社が似たようなアルゴリズムを納入するのでトレードがみな同じようなパターンになる)やらマーケットボットの世界よね。」

マックス
「サウジの国営石油会社アラムコが上場を検討している、その価値が2兆ドルになると見積もられている。いまやスイスの中央銀行がアップルの株主になる時代だ。中央銀行は貨幣を印刷する立場なのに、民間企業の株のオーナーになるなんてどういうことだ?」

ステイシー
「小売業やら原油の世界では需要が減退している。EIA(国際エネルギー機関)のトム・クローザによると原油需要全体が19.34百万バレル/日だったうち、1.418百万バレル/日の需要が消滅した。これはカタストロフィーと呼んでいいレベルだ、と。」
そしてこう言います。

「いったい我々は存在しているのだろうか?」

・・・株価を決めるのはアルゴリズム。経済のうち大企業の活動を評価するインデックスのひとつにすぎない株価が高騰していることで「景気が拡大している」と言う政府とメディア。しかし株価と企業業績が伸びているように見えるのは、ゼロ金利で超ローコストの資金が市場に溢れているせい。企業は本業に精をださなくても資産価値を増やしつづけ、人を雇わずにロボットを導入する。主要国政府は赤字国債を発行し、日銀は世界最大の国債の買取り組織として、ゴールドやレアメタルの裏付けのない紙幣を印刷し続け、主要国の国債を買いまくる。いっぽうの人民は職がなく(あったとしてもアメリカではバーテンダーやウェイトレス。日本では非正規労働。)可処分所得は増えず、インフレが進み、貯金に金利がつかず目減りするばかり。「人間活動が織りなす経済活動が市場をつくってきた。それがまったく機能していない。サウジ王家にとって石油さえあればサウジ国民などいてもいなくてもいいのと同じで、いったいわれわれ人間は経済システムのどこに存在しているんだろう?」という深刻な問いかけです。

マックスはいささか極端にこういいます。
「日本にはセックスロボット(ダッチワイフ)があるわな?若い者はバーチャルリアリティーで精欲を解消するから女性を追いかけなくなった。そのうち人工卵子と人工精子でできるんだ。」

2017年6月13日火曜日

トランプ政権とスティーブ・バノンに対するアビー・マーチンのコメントが秀逸

https://www.youtube.com/watch?v=S_Bjmzs2d-c

RTがやっている番組のなかでリー・キャンプというコメディアンのREDACTEDというのがある。上のリンクの回はパレスチナの独自取材などユニークな活動で有名なアビー・マーチンさんへのインタビュー。その中でアビーさんはトランプ大統領についていわく、
「ブッシュと同じで頭の中も思想もからっぽ。だから(周囲が)なんでもかんでも商売になりそうな思想を詰め込んでしまう。」
「そのなかでスティーブ・バノンは、およそ白人男性以外のすべて(女性、アフリカ系、アジア系)を嫌っている」という意味で究極、というコメントをしている。
今まで聞いたなかでいちばん正鵠を得ていると思う。

2017年6月12日月曜日

カイザーリポート 第1082回 中東外交

[KR1082] Keiser Report: Middle East Diplomacy
June 11, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/06/kr1082-keiser-report-middle-east-diplomacy/

ステイシーが2008年のことを回顧します。サウジがテロリストを支援していることについてイギリス政府が調査を行おうとした時、サウジ王子のひとりが「調査をやめなければロンドンでテロが起こることになる」と恫喝した、という話です。
原油価格がなかなかあがらず、いっぽうで財政支出をやめられないサウジは国営石油会社アラムコの株の5%を上場する予定です。5%といっても2兆ドル。アメリカで9.11の被害者遺族がサウジを訴えることができるという法律が成立したので、サウジ王家はアメリカからの投資を引き揚げています。裁判を起こされて負けたら資産が差し押さえられるから。いっぽうロンドンはさいきん波状テロに晒されているという話ですが、マックスいわく「テロリズムとビジネスのコストパフォーマンスの問題」と指摘します。いわく、ロンドンは昔から金融スキャンダルの舞台だった。リーマン・ブラザーズ、バーナード・マードフ、AIG、MFグローバル・・・すべてロンドンが舞台だった。つまり一般市民としてはテロは避けたいのだけれど、政府としてはテロというコストを必要悪として、サウジのようなテロ支援国家であっても投資してほしい。要するにテロはビジネスのコスト項目のひとつ・・という意見です。

後半ではノース・キャロライナの民主党幹部が登場し、ヒラリー・クリントンの罵倒ツアーについてコメントしています。「ヒラリーは不細工な罵倒ツアー(自分の失敗を人のせいにする演説を各地で繰り広げていること)からそろそろ退場して、若くて有能な人材を支援する側にまわるべきじゃないのか・・という話です。そのなかで、彼はこういいます。
「9.11がただのビル倒壊だったらアメリカは戦争をやらなかったよな?単なる不動産事故なんだから。人死にがでたからこそ戦争を始めたんだよな?」
つまり戦争をやりたくてたまらなかったアメリカとしては、自国民を殺す必要があった・・・ということです。政治家なのでそこまでは言いませんが、含蓄のあるコメントです。


2017年6月7日水曜日

サウジと湾岸国がカタールを虐めるのは天然ガスが原因(ゼロヘッジ)

"Forget Terrorism": The Real Reason Behind The Qatar Crisis Is Natural Gas
http://www.zerohedge.com/news/2017-06-06/forget-terrorism-real-reason-behind-qatar-crisis-natural-gas

テロリスト支援云々とメディアが伝えるなか、ゼロヘッジがブルームバーグのいかにもという意見を紹介しています。要すれば、カタールとイランにまたがる天然ガス田のエネルギーをどういうルートで欧州に売るのか?それがすべての問題の発端である。そして原油価格が低迷するなかでカタールは湾岸諸国にガスをなんぼで売りつけるつもりなのか?そしてなんだかんだいってもカタールはイランとの関係(カタールの人口の2割がシーアであり、ガス田を共有している仲)を悪くしたくないのでユニークな存在である、ということです。さらにこれはシリアのごたごたとも関係していて;
カタールが欧州にガスを売る => ロシアの独占が崩される => ロシアはアサド政権を支持する。
いっぽうカタールは反アサド政権派に30億ドルを供与してきた。ま、サウジがテロリストたちを支援する金額に比べたら可愛いもんだけど、それでも地域の不安定化にじゅうぶん貢献しているのだけれど。
しかもやめときゃいいのにトルコの独裁者閣下がサウジの尻馬に乗ってカタールに派兵するなんて言い出しまました。そもそもカタールのがスルーとはサウジ->ヨルダン->トルコ->ブルガリア経由のはずなので、ここにきてトルコはカタールを乗っ取るつもりなのか?(サダムがクェートを乗っ取ろうとしたみたいに?)(思い出そう:トルコは鉄も石油もガスもない、褐炭しかないエネルギー二流国:なもに周囲と仲良くしようとしない。独裁者は似るのか?)

カイザーリポート 第1077回 ゼロ金利難民

[KR1077] Keiser Report: ‘NIRP Refugees’
May 30, 2017
http://www.maxkeiser.com/2017/05/kr1077-keiser-report-nirp-refugees/

主要国中央銀行がテーマです。カナダのハウジングをはじめ資産バブルに対し中央銀行が警鐘を鳴らしていますが、ユーロ圏の企業ジャンクボンドの利率が2.77%。ジャンクボンドが危険なのは自明のことですが、機関投資家(年金機構やらゆうちょ含め)は成長を運命付けられているのでそういうジャンクでも買わざるを得ない。ゼロ金利を主要国中銀が演出しているからです。驀進する機関車の先のレールの上の小銭をかき集めている状態、とマックスはウォール街の古い格言を紹介します。これがどれくらい狂った状況かといえば、アメリカが世界に売りつけている国債の利回りは0.7%。いっぽうでアメリカのインフレ率は2〜3%。(オバマケアで倍増した医療費ははいっていない。)それを機関投資家は買わざるを得ない。いっぽう連銀は国民に借金を勧めていて、いまやリーマンショック以来の借金率となりました。その内実は、住宅ローンが減って学資ローンと自動車ローンが増えましたとさ。
売る商品のなくなった銀行がサブプライムローンを売る。自動車ローン然り、学資ローン然り、という話です。
+++++
世界で発行される主要国の国債の7割を中銀が買っている。これがこれからどういう文脈につながるのでしょうか?

2017年6月2日金曜日

カイザーリポート 第1078回 グローバル時代の終わりの始まり

[KR1078] Keiser Report: Germany vs USA in era of deglobalization
Posted on June 2, 2017
 例によってふたりの掛け合いです。グローバル化時代が終わるきっかけとなるのはドイツじゃないかという話から始まります。
70%のエネルギーをロシアから輸入するドイツはロシア・中国・イラン陣営にいくのか、それとも英米陣営にとどまるのか。いずれにせよ両陣営は衝突するのでしょうか?そういう時代に自己防衛するにはビットコインだろうとマックスはいいます。
トランプは自動車をアメリカに売りつけてばかりいる「ドイツはバッドだ」と言いますが、ドイツ銀行はトランプの最大の債権者なので、金を貸してくれている人の悪口をトランプは言っていることになる、しかも返す当てがないのに・・とふたり(マックスとステイシー)は笑います。しかもBMWが世界最大の自動車工場をサウス・カロライナ州につくると発表したにもかかわらず・・です。この工場はすでに稼働20年、地元のアメリカ人を8000人雇用しています。
前半は以上。この回は後半もふたりの掛け合いがつづきます。
ステイシーは歴史を振り返ります。大英帝国の崩壊、戦争、そしてマーシャルプランで戦後は始まりました。欧州主要国がローンを返し終わったのはここ2〜3年のことです。ここで引用:
西欧はソフトパワー(イデオロギー)に傾注するが、中国はインフラ投資に傾注する。戦後はパナマ運河、スエズ運河などインフラ構築からはじまったというのに。
マックスはそれをうまくまとめます。
西欧のやり方は、まず金を貸します。借金は焦げ付くにきまっているので、貸し手は資産を接収します。苦労してインフラなんてつくらなくても、金を貸すだけでほぼ自動的に資産を接収できる。これが西欧のマーシャルプランだと断言します。中国は基軸通貨をもっていないので、インフラ建設をやるしかない。
ここで引用されているのはブランコ・ミラノヴィックという学者の意見です。いわく、80年代依頼、共産主義の崩壊を通じて西欧の開発思想がインフラからインスティテューションと政策構築にシフトしてきた。つまりグローバル経済に参加したければ民営化しろ、というわけです。
中国の関心は貿易です。むかし英米がそうだったように。中国はインフラ構築を進めます。イギリスがその昔世界中でやったように。しかしいまアメリカがアフガンでやっているのは学校建設だ、とマックスはいいます。その学校にはビデオしかなくって、ビデオは夢を持て、なんていう内容です。ステイシー曰く、結局のところ、アメリカが学校をつくるといっても世界をモンサント化したいのであって、遺伝子操作した種子を売りたいだけなのだ。モンサントは1世代しか生産しない種子を売りまくります。それはすでにアメリカ超越主義ですらなく、麻薬密売人のメンタリティーです。
世界の離れて暮らす人々をつなぐのはインフラであって、イデオロギー(人権、同精婚など)ではない。
インフラを作れば多くの人が仕事を得ることができる。インフラ構築経済における負け犬は給与水準的に競争力のないアメリカ人(訳注:日本人も!)であり、いわゆる発展途上国で仕事を見つけるしかない。
最後の引用です。経済や開発とイデオロギーを切り離すのはモンテスキューやデイビッド・フュームのしそうである。
イデオロギーを優先させ、民主主義が先だたら言うのはエマニュエル・カント派ということです。まずシステムを構築するという考え方がIMFみたいなどうしようもない化け物を産んだ、とマックスは言います。その昔モスレム世界は交易で栄えていた。そこにイデオロギーにこりかたまった十字軍が破壊にやってきた、とステイシーはいいます。