マイケル・ハドソン:石油強奪ドクトリン
https://michael-hudson.com/2026/04/the-oil-grab-doctrine/
The Oil Grab Doctrine
By Michael Monday, April 13, 2026
2026年4月13日
グレン・ディーセン: ほな、また来てもろてありがとうございます。今日はマイケル・ハドソン教授に、イランへの戦争が世界経済にどんな影響を与えとるかについて話してもらいますわ。
マイケル・ハドソン: また呼んでもろてよかったわ、グレン。
グレン・ディーセン: 米国経済と世界経済の悪化については、もうずっと話してきましたけど、その土台はもはや持続不可能やいうのは明らかでっしゃろ。米国もそれはわかっとる。新しい現実に適応しようとする国もあれば、引き延ばそうとする国、逆戻りさせようとする国もある。でもこのイランへの戦争は、そういう危険な症状をいっそう悪化させとるように見えますわ。
この戦争の後、世界はもう元には戻れへんと思うんですわ。どう見てはりますか?エネルギー、肥料、そういうものへの影響、波及効果をどう考えてはります?
マイケル・ハドソン: 前にも話したことあるけど、わしはこれを第三次世界大戦やと思てますわ。石油産出国のエネルギーや肥料っていうのは、世界全体にとって死活問題やから。だから世界規模の影響が出てくるわけや。
ここ一二時間で米国の株式市場が千ポイントも上がったのは、「なんとかなるやろ」とか「トランプがイランと合意できそうや」とか思てるからやろけど、そんなわけあらへん。世界が元に戻るなんて無理な話で、それどころか18世紀か19世紀に逆戻りするような話でっせ。
これは単なるイランとの戦争やない。米国が世界経済の「急所」を握るために石油をコントロールしようとしとる戦争や。先月はベネズエラに戦争しかけて大統領を拉致し、ベネズエラの石油を米国の管理下に置いたやろ。誰がその石油を手に入れるか、誰がその収益を得るか、全部米国が決めるっちゅうわけや。
米国は、石油の供給を武器にして外交政策を維持するために、他の国が米国の管理外で石油を輸出するのを絶対に許さへん。だからイランに制裁、ベネズエラに制裁、ロシアに制裁。米国の同盟国がロシアから石油を買えへんようになったら、米国がコントロールしとる場所からしか買えへんようになるわけや。ホルムズ海峡の支配にこだわったんもそういうわけでっせ。
でもトランプは軍の参謀から「海峡の島を占拠しても守れへん、的になるだけや。それより石油を直接取ったらどうや」と言われたらしい。トランプ自身も「イランへの戦争の目的は核爆弾やない、石油や」と認めとる。イラクの石油を奪ったのと同じやり方でっせ。
これは関税政策と同じ発想や。「言うことを聞かんかったら経済を混乱させるぞ」っていう脅しでっしゃろ。イランの石油を手に入れれば、米国はOPEC全体の支配を完成させることになる。イラク、シリア、リビア…全部やられてきて、イランが最後の砦やったわけや。
ただ、イランはそう簡単には屈せーへん。「他の国がわれわれの安全を保障してくれるなら石油輸出を認める」と言うてるけど、その条件は中東からの米軍基地の完全撤退、イスラエルも含めてや。それに欧州や日本や韓国が課した制裁の全面解除も求めとる。
米国がそれを全部飲むなんて、奇跡でも起きへん限り無理な話や。そやから世界は元には戻れへん。ヘリウムの供給は止まった、肥料の輸出も止まった、世界はちょうど植え付けの季節に入ったとこやのに。何がどうなろうと、1930年代の大恐慌以来最悪の不況は避けられへん。株式市場がそれを理解してへんのが、ほんまに不思議でしゃーないわ。
グレン・ディーセン: エネルギーの話でいうと、米国の一貫性というのは何十年にもわたって見えてきますわ。でもトランプは歴代大統領より「正直」というか「露骨」で、シリアでも「石油が欲しい」、ベネズエラでも「石油が欲しい」、イランでも「石油が欲しい」と公言してますわな。他の大統領も同じことを考えとったやろけど、ここまで堂々と言うてる。金融システムへの影響はどう見てはります?
マイケル・ハドソン: まず言うとくと、トランプのやってることは歴代大統領と何も変わらへん。バイデンもオバマもブッシュも、誰一人トランプを批判してへんやろ。ドイツのリーダーでさえ拍手を送っとる、スペインやイタリア上空の通過を禁止しながらやけどな。
2008年のジャンクモーゲージ暴落以来、金融セクターは膨れ上がってきた。オバマが取った解決策はゼロ金利政策や。低金利で不動産や株式への貸付が増えて、担保の価値が上がって、銀行は負の自己資本から抜け出した。でもその恩恵を受けたのは金融セクターだけや。
2008年以降、米国の労働者の賃金はずっと横ばいや。今や米国人の40%は全く貯蓄がない。増えた富は全部、不動産・株式・債券という金融資産の値上がり分や。ブラックストーンとかの大企業が銀行から1%で借りて、会社を買いまくって、新しい言葉が生まれたわ――「エンシッティフィケーション(Enshittification)」や。買収して絞り取るだけ絞り取る。
そしてこれ全部、資産価格インフレの巨大な逆ピラミッドの上に立っとる。マネタリストは「お金を刷ったら物価が上がる」と言うけど、銀行が融資するのは資産を買うためやから、消費者物価やのうて資産価格が上がるんや。金利が低いほど、同じ収益でも大きなローンを組める。
せやから今、30年固定ローン金利が5%を超えて、10年国債が4.5%になったら、この仕組み全体が崩れ始める。そこにイランとの戦争で石油・ガス・アンモニア・肥料・硫黄・ヘリウムの供給チェーンが断ち切られた。支払いの連鎖が一つ切れたら、デフォルトが始まる。デフォルトが始まったら、指数関数的な成長が逆に走る。それが恐慌っちゅうもんや。
グレン・ディーセン: 変数が多すぎて、影響を受けへん国は世界に一国もないような気がしますわ。ロシアに対するエネルギー戦争も、中国の石油アクセスを狙う動きも、インドへの影響も。国際システムはどう対応すると見てはります?
マイケル・ハドソン: 対応してへん、というのが正直なとこや。ロシアはもうヨーロッパ向けの天然ガスと石油をすぐにでも止める構えや。ホルムズが閉まっとる今、ロシアが他の買い手を見つけるのは何の苦もない。
ヨーロッパは自分で自分の首を絞めとる。ドイツはどんどん落ちてきとるのに、他のヨーロッパ諸国はその轍を踏もうとしてる。NATOと欧州連合がこれで生き残れるとは思えへんわ。
「近東」が「中東」になって、今は「西アジア」と呼ばれるようになった。それだけアジアが世界の成長の中心になったっちゅうことや。米国とその同盟国が一方で、アジアを中心とした国々が反対側。これは「文明の衝突」やのうて、米国が文明への攻撃をしかけとる、っていう構図やと思うわ。
国際法?国家主権?民間人への攻撃禁止?宣戦布告なき戦争の禁止?全部米国が踏みにじってきた。そしてトランプは「もう国際法は要らへん」と言うてる。その国際法こそが、文明をつなぎとめてきた糸やったのに。
グレン・ディーセン: 覇権国が衰退するとどうなるか、という議論は70?80年代からずっとされてきましたわ。「衰退する覇権国は、慈悲深い覇権国であり続けることを止めるか、覇権国であることを止めるかのどちらかしかない」と。この積極的なアプローチは、その予測通りに見えます。なぜ衝撃として受け取られるんでしょう?
マイケル・ハドソン: まず「衰退」っていう言葉を使うのをやめた方がええと思うわ。衰退は上下があって、また回復するっちゅうイメージやけど、今起きてるのはそうやない。これは「クラッシュ」や。上昇があって、ピークがあって、そして崩落。景気循環みたいなもんやない。
しかも、この終わりは外部から来てへん。米国の覇権の終わりは、米国自身が招いたもんや。「中国が繁栄しとるのが憎い」「ロシアが中国を支持しとるのが憎い」「イランの石油をコントロールできへんのが憎い」という姿勢で、世界中を敵に回した結果やわ。
自国の利益のために全ての国と対立する姿勢を取り、その結果、全世界がイランの側につかざるを得ない状況を自ら作り出してしもた。米国が自分の帝国を終わらせたんや。
今わしらが見とるのは「システムの転換」や。過去のトレンドは全部終わった。新しい世界が自分自身を形作ろうとしとる。でも、誰もその設計図を考えてへん。IMF、世界銀行、国連、国際司法裁判所に代わる国際組織を、どうやって作るのか。国際法の新しい体系を、どうやって構築するのか。誰もその議論をしてへん。国連はもう、第二次大戦時の国際連盟と同じくらい時代遅れになっとるのに。
グレン・ディーセン: ほな最後に、エネルギーと肥料の不足から今後5年の波及効果をどう見てはります?
マイケル・ハドソン: 答えはみんな同じや。肥料がなければ収穫が落ちる。収穫が落ちれば値段が上がる。値段が上がれば、お金のある国だけが食料を買える。危機の時はそういうもんや。
米国は今でも農家にとうもろこしのガソリン添加剤を作る補助金を出しとる。狂っとるとしか言いようがない。食料を育てるべきとこで、燃料を育てとるわけや。
世界の多くの国は、輸出向けのプランテーション農業から自国民を養う食料生産へとシフトせざるを得なくなるやろ。食料の自給自足が、米国の貿易武器化から身を守る唯一の手段になる。
ブラジルやアルゼンチンなんかはまだましやけど、アフリカは深刻やわ。世界銀行が推進してきた輸出向け単一栽培農業のせいで、食料自給の力を失てしもてる。今がまさに戦時と同じ状況やのに、戻る道がない。これは長期的な変化につながるやろな。リカードの比較優位論に基づく国際分業の時代は終わりや。
グレン・ディーセン: 面白いのは、戦後ずっと米国の同盟国は自由貿易の恩恵を受けて、依存関係を深めることができた。でも今は、その構造が一気に崩れつつある。欧州の戦略的自律性のなさが露呈してますわ。最後に何かひとこと?
マイケル・ハドソン: イギリスを見てみいや。サッチャーとブレアが一緒になって脱工業化させてしもた。今更、世界に何を売れるんや?北海油田はもうほとんど枯れかけてる。ノルウェーも同じや。新自由主義経済学に従って脱工業化した国々は、これからどうやって生き残るんやろな。
グレン・ディーセン: ほんまにすぐわかってくると思います。90年代から今日まで、これだけ急激に変わるとは。イランへの戦争がこういった脆弱な土台をさらに悪化させるって警告した人はおったけど、現実になってしもた。いつも貴重なお話、ありがとうございます。
マイケル・ハドソン: こういう大きな問題について話す機会をもろて、ありがたいわ。

